トイレを作ろう
「なぁ、昨日行ってみて思ったんだけど少し行った場所に川があるだろ?あの川は何かいるのか?魔物とか?」
今日の予定を決める為に朝食をとりながらジータたちに昨日見付けて川の情報収集をしてみる事にする。
「いないと思ったらそんなところまで行ってたのかよにいちゃん。あそこの川は魔物とかはいないって言ってたぞ。」
「お魚!お魚いるよ!」
集落について気付いたのだがジータは父親がいないから自分がしっかりしないとと必要以上に大人みたいになろうと努力しているのが伺える。本当ならメイと同じ7歳だしもっと子供で良いと思うのだがそこは同じ男だし矜持というものもあるのだろうと取り敢えずは放っておくことにする。
「あそこの川は魔物がいないからと2年前にこちらに移り住んできた時にここに集落を作ろうと決めたのですよ。安全な水場は生命線ですから。」
なるほどルルさんの話でこの集落が原始的で貧しい理由がだいたい見えてきた。とはいえ、原始的なのがここだけとは限らないが。日本とまではいかないだろうけど、真っ当なファンタジーRPGくらいの文化にはしたいな。当面の目標は木造家屋かレンガ、石材を使った家と何より許しがたいのがトイレだな。たまに森の中に消えていってるのはアレなのか?というかアレ何だろうな…深く考えてはいけない…しかし俺には用を足す為に森の中に入り続ける勇気も人がくるかもしれない場所でする勇気も無い。となれば第一目標は公共トイレの設置に決定だ。ここがファンタジーな世界ならきっとアレがいる!トイレといえばあの子をスカウトするのがやはり一番だろう!
「そういえばスライムって近くにいる?いたら場所とそのスライムの特性を教えて欲しいんだけど。」
その言葉に三人は揃ってビクッとして固まる。あれ?おかしい事聞いた?
「スライムをどうするんでしょうか?あの魔物は何でも溶かしてたまに子供たちを襲ったりするんです。大人だと力ずくで逃げれたりしますが子供だとそのまま捕まって食べられたりする事があります。すぐ近くにはいないとは思うのですが…。」
「いるにはいるぜ?半日くらい北に行った岩山の崖の下に。あいつらは崖から這い上がってはこれないらしいから崖の下に落ちた生き物を食べてるんだろうってハイトさんが言ってた。」
「ハイトさん?」
「一番の狩人で昨日もにいちゃん迎えに行った中にいたぜ?」
取り敢えずスライムはいると、特性も悪くないし崖から本当に上がってこれないなら尚更良いと言えるだろう。汚物や生ゴミや獲物の廃棄は衛生上ちゃんと処理しないといけないし村への説明も出来ない事はないだろう。後はその材料か…セメントは無理としても三和土くらいはやってみたいな。某アイドルグループがやってたのは確か砂利と消石灰とにごりか…海か…。
「海はこの辺りにある?」
再びの問いに三人の表情は固まる。
「海…あるよ。メイ達そっちの方から逃げてきたから…。」
要らん事を聞いてしまったらしい。重い沈黙が流れていく。
「南西の方角に私達の足で歩いて10日くらいです。多分今は私達を追い出した人族が集落を作っていると思います。」
再び沈黙。こういう空気を脱出するスキル無いの!?日本人には少し重すぎるよ!
「「「…………。」」」
誰か助けてぇ!
「おはよう、今日は誰も起きてこないからまだ寝てるかと思ったけど起きてたのね。」
救いのうさ耳天使現る!確かこの女性はお隣のスレンダー若妻のミミさん!ルルさんの幼馴染みだったはず。
「えっ?なにこの空気…何かあったの?」
「何でもないわ。ほら3人とも今日も元気に頑張りましょう!」
ぱんぱんと手を叩いて笑顔で行動を促すルルさんに、俺達は元気よく行ってきますの挨拶をし家を出るのだった。
「で、おにいちゃんは何をしようとしてるの?」
「大人達は何かするときは相談からだっていつも言ってるぞ」
ここまで色々聞いたら何か目的を持っているのは分かったのだろう。確かに何かの施設を集落に増設するなら長や大人達のリーダーに相談してから動いた方が良いだろう。
「じゃあ、長様のところに行ってみようか。二人にもその時に一緒に話すよ。」
トイレへの道は険しそうだ。