帰ったよ!
「ただいま帰りました!」
元気よく響くマサルの声に大人たちの表情はひきつり、子供たちの眼差しが輝く…グレイタスの部隊の面々は苦笑し、その全員の目線が1ヶ所に注がれていた。
「今度は何を拾ってきたのよ!…魔獣?なの?ちゃんと説明なさい!」
いきなりアデリナに怒鳴られる。
「………やっぱり怒られた。」
「怒られると思うなら………ってどうやったらこんな事が起こるのよ!何なのこのこは!?」
「…魔獣ピンファントって言うらしいけど、名前は募集中です。………詳しくは不明だね。」
「名前の募集ならこの街が先よ!このお馬鹿!取り敢えず安全なのね?それだけ確認出来たら仕方ないから街に入れてあげるわ。」
「………うん、多分多分安全だよ。凄く人懐っこいし、頭もかなり良いみたいだしね。」
「多分?」
「うん、多分。」
じっと、ピンファントを見つめるアデリナ。
「様子が分かるまでマサルとその子は街の外ね…。」
「俺もなのか!」
「他の誰が面倒見るのよ?貴方しかそんなのの相手出来ないでしょ?」
「危ないからせめてウズラや兎の飼ってる城壁の中で良い?」
「大丈夫ってなってもそこしか入れるところ無いんだけど…流石に街の中をウロウロされるのはねぇ…。」
「…だよな。じゃあ、暫くはそっちにいさせるから…あと、ポータリィムからクック小隊と大工さん達、あとグレイタス王国の部隊300人くらいいるから受け入れ宜しく!」
丸投げされた様々な手配にアデリナは頭を抱えるが、ピンファントの面倒を見れるのは自分だけだと言質を取っていた事を盾に逃げる。
「じゃあ、ウズラや兎の世話もしてよね!あと、手が空いている間に街の名前を付けておいて!」
「………俺が付けんの?」
「他に誰がつけんのよ!とにかく早めに決めてね!決めないと街に入れてあげないんだからね。」
「…マジか!?それ酷くね!?」
「酷いのはマサルの行動よ!自分の胸に手を当てて考えてみなさい。」
心当たりが多過ぎて反論出来ませんでした。
「で、バゼラールカの王都はどうなったの?生存者はいた?」
「………いや、いなかったかなぁ………。」
「生存者はいなかったが、王都は魔物ごとマサルが更地にした。」
「ちょっ!ザーグ!?」
「報告は正確にしろ。生き残りは間違いなくいなかったんだろう?なら胸をはれ!お前は正しい事をした!」
「詳しくはわからないけど、生存者がいなかったなら王都を丸々全滅させる程の魔物の群を倒したなら良いんじゃない?」
「………あ、あぁ……そうだな。」
その時、何故か何やら秘めているものに気付きつつも誰も何も言えなかった。
「じゃあ、俺はピンファントを連れていって街の名前でも考えておくよ。」
「そうね…よろしく。」
「子供たちもアデリナの了解がないとピンファントに近付いたら駄目だならな〜」
「「「「「「えっ〜!!」」」」」」
子供たちの不満の声を背にマサルはピンファントを連れていったのであった。