面接
部屋の中にはクックとその弟とその嫁、そしてクックの弟の大工仲間たちが集められ不安げにしていた。
「待たせてすまない。こちらも色々とやる事があってな…まぁ、楽にしてくれ。」
そう声をかけて部屋に入ってきたのは沿岸都市ポータリィムの司令ランスロットだ。
「おっ、そっちの彼が弟さんか。何かあまり似てないな…。」
マサルも続いて部屋に入ってきながら軽口をたたく。急に呼び出された彼らは何も説明されずに都市のトップと会談と聞かされ戦々恐々としていた。
「単刀直入に言おう、君たちには彼の造る街へ暫く行って貰いたい。そして彼らが持つ技術を学び習得してきて欲しい。」
「技術ですか?それは一体どのような…。」
「勿論、貴方たちは大工なのだから建設技術だ。彼の造る街は早いと4日程で家が建つらしいのだ、それもかなり美しい街並みをしているらしい。」
「4日で!?何をどうやったらそんな事が!」
「それを学ぶんだ。」
ランスロットとクックの弟の会話を皆が黙って聞いていたのだが、そこに割って入った男がいた。
「すまんが、それは命令か?それとも仕事か?その辺りをはっきりさせてくれ。」
「貴方は?」
「そこのジョーの義理の父でトナの父親。今は現場はジョーに任せているが棟梁は儂ナッシュだ。」
クックの弟がジョーで、嫁がトナというらしい。基本的に家族経営でしているらしい…となれば今回のキーとなるのはこの男だ。
「ここからは私がお話させて頂きましょう。はじめまして、マサルと申します。まず間違えてはいけないのはランスロットが無理な事を言っている訳ではないという事と、報酬は必ず出るという事です。
金額的には王国の雇用規定に乗っ取ったものにはなりますので、決して高いものではありません。しかし、給与を貰い新しい技術を習得出来る機会などなかなか無いのでは?王国で誰も持ってない技術というものは万金に値するとは思いませんでしょうか?」
最初こそ興味深そうに見ていた棟梁ナッシュだが、途中から少しずつ疑わしそうに表情が変わっていく。
「因みに、井戸のポンプを作り付けてくれたのも彼だ。そして最近新しい試みが多く試されているのも彼の発案が殆どだな。」
おっ?ちょっと信用が回復したか?にしても表情にモロに出てるなぁ…。
「期間はいつまでだ?」
「こちらの提示としては半年から1年くらいを見ている。進捗次第で応相談だ。」
「住む家はあるのか?」
「家か…取り敢えず神殿に一家族くらいなら預かれるし、最初は2〜3軒は皆さんに空けさせよう。あとは随時建てていけば問題ない。」
「4日で建つか…。」
「あぁ、そういう事だ。」
人数を増やして並列していけばもっといけるのではないだろうかと思うが余計な事は言わないでおく。
「ちょっと良いでしょうか…。」
申し訳なさそうにトナが発言する。
「私たちには子供がいるのですが、安全面や生活についてもお教え頂きたいのですが。」
「おっ、クックは叔父さんだったのか。」
「叔父さんはヤメロ………まだ22なんだから。」
「兄さん、そう思うなら早く結婚して下さい。うちみたいに2人くらい子供がいてもおかしくないんですからね。」
ここでの成人は13歳で20歳くらいには結婚している人が殆どとなる。つまりマサルは若返った後でさえ婚期を逃した状態なのだ。
「まぁ、道中の護衛はクック小隊と俺が行う事になるから余程の事がない限り危険は無いですよ。街には他の子供たちもいますし、遊びに適した広い広場もあるので安心して下さい。
また、食事は獣人の風習から皆で作って皆で食べる形になっていますし、風切りウズラなんかは食べたり育て切れないので適度に逃がしているくらいなので食事に困るという事は無いでしょう。」
「皆で作って食べるんですか?」
「えぇ、人族の料理人もいますし小麦なんかもありますので味も悪くないと思います。当然、個人的に料理をしたいなら可能ですし、要望がございましたら遠慮なくおっしゃって下さい。」
「うわ…なんかマサルがマトモに話してると違和感があるな。」
「俺はいつもマトモだ。脳筋で残念なのはむしろお前らのほうだ。」
「…自分の事はわからんものなんだな。」
ランスロットとクックは何やら2人で解りあっているが放置である。
「とにかく、皆さん来て頂けますでしょうか?」
「良いだろう。問題はなさそうだし、司令殿から頼まれるなら行こうじゃないか。」
とにかく来てくれる様なので良しなのではないだろうか。その後、色々と準備についての話あいをして解散となった。
風邪引きが治る前に腰痛で更にダウンしました。
トイレと食事以外にベッドから動けない今年1番酷い状態となりました。
体調悪いのに本屋巡りなんてしてた罰なのでしょうね。