【100話記念】嵐のような静かな夜
ついに100話です!
ここまで読んで下さった皆さまありがとうございます。いやぁ、あっという間の100話でした。皆さんはこの物語を読んでみて、長かったと感じたでしょうか?もう100話?と短く感じたでしょうか?どちらの人も楽しんで下さっていると嬉しいですね。
「ちょっと姉様!出てきて下さいませ!」
バゼラールカ王都の壊滅後ビクティニアスは自室にこもっていた。
「もう貴方達のせいですからね!子供みたいな事を言って姉様を怒らせて!だいたい貴方達はっ………。」
事の次第はこうだ。ゼラフィティス達男神たちもマサルがバゼラールカで行っていた一部始終を見ていて「ビクティニアスにあんな顔させたんだ」というマサルの言葉を拾い、ビクティニアスを弄ったのだ。
「もう姉様、そろそろ機嫌を直して下さいませ。」
「…………………………。」
やはり返事はない。
「………最近頼りきりであまり気が乗らないですが、やっぱりあの人じゃないと駄目なのでしょうか? 」
………バゼラールカ王都前マサル。
「ん?またメッセージか…?」
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《新着メッセージがあります》
アイラセフィラです。申し訳ないのですが本日マサルさんに姉様を夕飯に招待して頂きたいのですがお願い出来ないでしょうか。
姉様は少々ご気分が優れないようなので一緒に美味しいご飯を食べて元気を出して欲しいのでご協力お願い致します。
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「ビクティニアスが元気ないのか………よし、仕方ないな。アイラ!今夜の夕飯に招待するよ、何とか美味しいご飯用意しとくからビクティニアスを呼んでおいてくれ。」
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《新着メッセージ》
ありがとうございます。では夕飯の支度が終わった頃にまたお呼び下さいませ。あとお互いの為にあの騎士のお2人には別の席を用意して頂ける様にお願いします。
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「了解っと…さっそく2人も神様と会う機会が出来たか。……それよりもここは流石に瓦礫の前だし、何があるか分からんから2人に少し落ち着いた場所を聞いて準備を始めないと時間がないな。」
こうしてマサルは王都の話も何もかもを置いといて、合流したスレイとナックルに雰囲気の良い花畑の近くを教えて貰い、料理とテーブルの準備を始めるのであった。
「なんで…僕らがこんな時に草刈りなんて…。」
スレイとナックルは場をすっきりさせる為に鎌を持って草刈りに駆り出されていた。
「文句言わずにやれ!理由は後で分かるし手を抜いて後悔するのはお前かも知れないぞ?
スープは時間がないから煮込んであるのをアイテムボックスから出して…。
………風切りウズラの手羽を骨に沿って開いてっと、塩と胡椒をして自家製のマヨネーズとこのポン酢もどきを揉みこんだものを釜で焼いていくっと…。
ステーキは後にするとして………フライパンでキノコをオリーブオイルで炒めて………塩胡椒した兎のスライスした肉にさっきのキノコとマヨネーズを和えて乗っけてグリル……。
肉ばっかだな…ハーブのサラダでも加えるか………適当に野菜はちぎってっと、ドレッシングは作りおきしてた玉ねぎのヤツで良いよな。蟹好きだし蟹をほぐしたのも入れとくかな。
ステーキは筋を切って、よく叩いて柔らかくしてからまずは胡椒をして肉の臭みをとって、焼く時には直前に改めて塩胡椒をするっと…。」
ふと顔を上げると良い匂いにつられて覗きにきた2人が涎を今にも垂らしそうにしている。
「…草刈りは?」
「だいたい終わったよ。なんで塩と胡椒は別々にするんだ?」
「だいたいなら早く終わらせてしまえ…まぁ、良いか…肉を焼く時には焼く少し前に胡椒をして臭みをとるんだ。で、焼く直前にまた塩と胡椒をする。何故かというと塩を先にすると水気と一緒に旨味や旨い油が逃げるし、焼く前の胡椒は肉を焼く時に胡椒の薫りを出す為のものだ。ステーキと言ってもただ肉を焼いただけなんて、つまらんし旨くないからな。」
「へぇ、色々あるんだな。」
「感心してないで早く終わらせてしまえよ、あと少しで肉を焼くから夕飯が出来るからな、終わったら服装を整えて手を洗って向こうの席に座ってろ。」
「なんで席が2つ?僕らの席にはテーブルクロスがないんだが…ん?席が5つ?どういう事なんだ?」
「良いから急げ!客が来るぞ!」
客?と首を傾げながら急いで言われた事を消化していき、剥き出しの木のテーブルと簡素な椅子につく2人。
「おい、夕飯出来たぞ〜そろそろ来いよ!…ん?あぁ、お前たちじゃないからな。」
マサルが急に誰かに話かけて、お前たちじゃないと釘をさす。その様子に負担を掛けすぎておかしくなったのかと心配になる2人。
「良いか、2人共これから来る客には来たら挨拶だけしてそっちの席で2人でゆっくり飯を食ってるんだぞ?それがお互いの為らしいからな?」
「客ってこんな場所に…。」
スレイの話を遮りマサルの後ろに美女が2人現れる。
「来たわよ。お腹空いたから早く食べましょ。」
「姉様っ、まずはご挨拶でしょ?すいません、マサルさん。ご招待ありがとうございます。」
「ふふっ、思ったよりも元気そうで安心したよ。ゆっくり食べていってくれ。あ、ついでに紹介するよ。こっちがスレイで、こっちがナックル。で、こっちがビクティニアスで、こっちがアイラセフィラだ。まぁ、取り敢えず席に座ってくれ。」
そう言ってビクティニアス、アイラセフィラの順に席を引いて座らせてから料理の準備に取り掛かるマサル。どんどんテーブルに料理が並んでいく。
「えっと、今夜はウズラのマヨネーズポン酢焼きと兎のきのこマヨ焼き、こっちのステーキはキングボアってデカい猪のらしい。スープはありあわせだけどビクティニアスの好きな蟹が入ってる蟹玉のスープだ。ハーブのサラダにも蟹の身を使ってるからな。ビクティニアスは色んなのをちょっとずつ食べるのが好きだろ?好きなのを好きな様に食べてくれ。」
「むぐっ…美味しい!マサル、蟹よ蟹が足りない!」
「仕方ないな………そっちのスレイとナックルの蟹を進呈しようじゃないか!ほら食え。」
目の前から蟹の身が強奪されていくが2人はそれどころではない。
「ほら、まだ欲しいんだろ?俺の蟹も取れよ。」
「姉様っ!わたくしの蟹もどうぞ。」
こうして慌ただしく賑やかな食事が終わり、2人は帰っていった。しかし、スレイとナックルの料理には強奪された蟹の身以外に手をつけられた形跡がなかった。
「お前たち………いい加減食べてくれないか?片付けが終わらないんだけど。」
こうしてバゼラールカ王都崩壊の日も静かに夜は更けていくのだった。
これからも頑張って書いていきたいと思いますので応援宜しくお願いします!
…書いてたらお腹空いた。