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プロローグには、多少の性的表現が含まれております。
紅挽歌〜怪魔園鬼文〜
作:VIOLET ZAX



プロローグ


プロローグ

 闇の中だった。そして、そこは静かだった。いや、静かというのは完全な無音を意味しない。ここで言う静かとは、必要最低限以外の音が無いということだった。
 その必要最低限の音とは、そこで行われている営みによって生じる音のことだ。それ以外で生じる音、これを雑音と呼ぶ。
 同じく、闇という表現もまた、当たらないものかもしれない。やはり、必要最低限以外の光が無いということだろうか。
 空間を染めるは、厳かな蝋燭の明かり。それ以外の光は無い。窓という窓は、黒い布できっちり覆われていたし、扉という扉は厳重に閉じられている。自然の光というものが入り込む余地が無いのだ。
 今、あたしはその静かな闇の中で、視ている。
 そこで行われている営みを視ている。
 周りにいる、数え切れない人間の一人として、視ている。
 呼吸することさえ忘れるように、見入っている。いや、ただ感覚が麻痺しているだけかもしれない。
 正常な感覚とは、何だろうか。
 不毛な問いだろう。
 あたしは現にそれを視ているのだから。
 あれは・・・・・なんという名前だろう。確か二つ隣のクラスに転入してきた子だ。
 その子が・・・・犯されているのを、あたしは視ている。
 犯される。と言うのは何となく知っている。よくないことだということも。強姦という言葉がある。それと同じことだろう。犯罪だ。でも、概して被害者の立場は弱いらしい。犯されたことを表明したら、むしろ、そのことで自分の立場が悪くなるということだ。
 おかしなことだと思う。でも、もし自分がそうなったら、きっと誰にも言えないだろう。そうやって、自分の中に抱え込んでしまうのかもしれない。
 所詮、あたしは傍観者だ。
 だからあたしは、ただ視ている。
 名も知らぬ転入生が複数の男に犯されているのをビデオでも見るみたいに視ていた。
 一人が仁王立ちになって自分の性器を彼女の口へ含ませている。彼女は顔を前後させながら、それを口唇全体で刺激している。どことなく慣れた動きにも見えた。彼女は四つん這いにさせられている。もう一人の男が後ろから、突き入れしている。三人目がいて、それは胸や背中をべろべろ舐めまわしている。三人とも、ガッシリした体格で、浅黒く日焼けをしている。
 転入生も、立派な体つきをしていた。立派というのは、おかしな言い方だけれども、あたしより胸は大きいし、腰もくっきり括れているし、お尻も張りがある。なんか、高校生じゃないみたいな身体付きだ。
 そして、彼女は感じてる。男性器で塞がれた口から漏れる喘ぎ声を押し殺すことができないのが何よりの証拠。この子もそうだ。その前の子も。さらに前の子も。誰だって、最初は抵抗して泣き叫んでも、段々、終いにはあんな声を出す。
 あたしも・・・・・・・あたしも、そうだった。
 覆面をしてるけど、あたしを犯したのも、きっとあいつ等だ。同じだ。
 やっぱり・・・・・気持ちよかった。認めたくないけど、気持ちよくなっていた。声も出した。こうやって視られていたのに、どんどん大胆になってた。視られてることさえ忘れてた。涙まで流したかもしれない。
 今は、覆面をして、視てる側だけど、視ている側は、視られていた側でもあったのだ。女子は皆、そう。覆面といっても、紙袋に眼の部分と、鼻の部分に穴を開けただけの粗末なものだ。そんなふざけた覆面をして、あたしたちは、視ている。
 口に入れていた男が、もっと深く、性器を転入生の喉奥へ入れたらしい。彼女はうっと呻いて噎せた。それでも男は髪の毛をしっかり押さえて、彼女が口を離すのを許さず、尚も深く屹立したそれを食道まで届かんばかりの勢いで突っ込む。
 堪えきれぬ嗚咽と共に、何かが彼女から吐き出された。胃液だろう。長く糸を引いた白いそれがドロリと磨きこまれた床の上に垂れた。
 それでも、あの子は喜んでるみたいだった。あたしもそうされたから分かる。凄く苦しいのだ。でも、今の彼女は、無我夢中で、咥えて舐めてるんだろう。涙眼になって、胃液をだらだら垂らして、そんなところを視られてもうどうだっていいのかもしれない。きっと、もうあの子にはあたしたちの姿は眼に入ってないだろう。あたしもそうだった。だから、分かる。
 その姿を視ても、あたしは何も感じない。昔の自分に重ねるとか、情欲とか、そうでなければ哀れみとか、同情とか、そういうのも何も無い。無感覚で、無感動なのだ。視る側に立つことに慣れたのかもしれない。
 いや、ただあたしは無感覚なだけなのだ。感情とか、感覚は麻痺している。人間らしい感情を欠落させている。
 あたしだって、笑う。人並みの感情は一通り持っているし、日々、それを表に出したりもする。けれど、そうじゃないんだ。何か・・・・・もっと深い部分で、あたしは欠落してしまった。もっと大事な、芯みたいなものが抜けてしまった気がする。
 あの子は・・・・犯されているんだろうか。
 犯す、犯されるという言葉に付き物の暴力的な支配や、強制は、目の前の光景からは見られない。彼等は、彼等の意思で、それを行っているように思える。むろん、そんなのは詭弁だと思う。最初の最初は、確かに彼女は抵抗したのだ。激しく抵抗し、泣き喚いて助けを求めていた。けれど、その願いは聞き届けられることなく、数え切れぬ衆人監視の中で制服は引き裂かれ、下着は剥ぎ取られ、その裸身を晒してしまった。恥じて死ぬと思ってもおかしくなかっただろう。無数の眼が視ているのだ。男達は、暴れる彼女を殴りつけて大人しくさせるでもなく、怒鳴りつけて萎縮させるでもなく、暴れる端から巧みにその身体を操り、愛撫を続けた。淡々としていた。そのうちに、彼女は、痛みでなく、快楽に屈服させられていたのだ。
 口を攻めていた男が、性器を引き抜いた途端、転入生の口から、喘ぎ声があふれ出した。後ろから犯している男は、がっちりと両手で彼女の腰の部分を掴み、腰を激しく前後運動させている。抉るような動きで互いの性器が摩擦されているのが見える。代わって、三人目が、彼女の眼前に仁王立ちとなった。今度はあの男のものを口へ含むのだろう。
 男達は、果てることを知らぬようだった。そもそも、一体どれほどの時間が経過しているのだろう。この空間では、時間という概念さえ消失しているようだった。その中で、彼等は交互に、転校生を責めるポイントを変えて、若い肉同士の交わりを続けていた。それ自体が、聖なる儀式めいた様相を呈しているようにさえ思えてくる。当事者だけでなく、見ているものさえも、一種の法悦感を得られるのだからおかしなものだ。空間を満たす、雄と雌の匂いが、あらゆる感覚をショートさせるのかもしれない。
 後ろを犯していた男が、転入生の身体を抱えると、仰向けになった。そのまま下部から突き上げる。他の二人がそれぞれ、左右に立つ。今度彼女は、交互に彼等の男根を口へと含み始めた。彼女は下から突き上げられながらも器用に舌を動かして迎えた。舐めながらも、高校生とは思えない喘ぎ声を放ち続けている。無理もないと思った。あの男たちに掛かれば、どれほど頑なに殻に閉じこもっていようとも、無駄なのだ。我慢し続けられるものではない。
 あたしの位置からは、男と、彼女の性器が擦れあう様が、とりわけよく視えた。白濁の体液がベッタリこびり付いた男性器が出たり入ったりして、そこだけを視るなら、なんともグロテスクな光景だ。転入生は、どんどん大胆になりつつある。自分で腰を浮かしては、貪欲に動き出している。むろん、左右で屹立する男根を頬張ることも怠らない。
 突き上げていた男がまた体位を変えた。転入生を立たせ、結合したまま背後から突き出した。彼女は両手を突っ張って床に手をついた格好になっている。しかし、髪の毛を掴まれて強引に顔を上げさせられてすぐさま勃起しきった性器を口の中へ突っ込まれる。
 突いている男の動きが激しさを増してきた。臨界点が近いとあたしは踏んだ。転入生と男が獣のような叫び声を同時に発しだす。呻いて男は男根を引き抜いて、彼女の尻の辺りに白濁の体液をぶちまけた。その様は直接あたしの位置からは見えなかったけれど。放った男はそのまま闇に紛れるようにして、その場から退場した。が、誰一人その姿を目で追う者はいない。
 手隙となっていた男が、空白の座を埋めるようにして背後から突き入れる。また違った異物の挿入に彼女の声音も少し異なっている。どこか上ずったような喘ぎ声を放ち、彼女は新しい肉の棒を歓迎するように腰を捏ね繰り回し始めた。まだまだ突き入れを始めたばかりの男の動きは初めからスパートがかかっている。そのまま子宮をぶち抜かんばかりだ。あたしの位置からは、太ももを滴る彼女の体液が薄っすらと見えている。卑猥な音が肉と肉を打つ音に重なる。ぶちゅぶちゅという湿った何かを掻き混ぜるような音。間違いなく、今、あの子の性器は熱泥のような様相を呈して男の性器を迎え撃っているに違いない。
 その時、口内奉仕をさせていた男が呻きだした。そろそろ彼にも限界が来たらしい。がっちりと彼女の髪の毛を鷲掴みにしたまま離さない。全身が強張りを強めていく。そして・・・・・。
 ビクっと一瞬痙攣を見せた後に、男の身体は硬直した。あらぶる白濁の雫は結実し、そのまま転入生の口内を洪水のようにして流れ込んでいったに違いない。余韻に浸るかのようにしばらくは男はそのまま、性器を彼女の口へ突っ込んだまま動かなかったが、やがてズルっという音さえ聞こえそうな、唾液と己の精液で濡れそぼったそれを引き抜いてやはり、闇の中へと静かに消えていった。あたかも、舞台の袖へと消える役者みたいに。
 思えば、あの男は入れていなかった。もしかすると、序列みたいなものがあり、下っ端はオーラルセックスしかさせてもらえないのかもしれない。あたしはぼんやりそんなことを考えながら、残された男と、転入生の一対一の肉の饗宴に見入った。
 一対一になるや、男は体位を変えて、そのまま正常位となって突き入れを再開した。覆いかぶさるようにして、大胆な腰使いを見せて、肉の大砲をぶち込んでいく。足を全開近くに広げたまま、転入生はその荒らしのような奔流に耐えるのみである。まるで何か獣に蹂躙されているか弱き小動物にさえ見えてしまう。けれど、あたしは同情などしていない。ただ、淡々と視ているだけだ。
 男はそれこそ、機械みたいに黙々と腰を動かし続けていた。疲れを知らないのだろうか。只管無言で、打ち込みを続けている。その腹の下で、転入生のあの子が、歓喜の叫びを続けている。
 誰もが感じ始めていた。そろそろだ、と。場の空気が、高まりを見せている。男と女の絶頂を演出するように、この闇の空間も、静かな高まりを見せているのだ。何かが盛り上がり、上昇し、高揚してくるような法悦感を、この場にいる者全員が共有していた。
 あたしは柄にもなく、緊張していた。心臓がバクバクと早鐘を打つ。どうしてだろう。見慣れたはずなのに、いつもそうだ。この宴がクライマックスに近づくたびに感じる胸の高鳴りは何だろう。ああ、凄くドキドキしてくる。全身の血の気が失われたように冷たくなる身体。ああ、落ち着かない。ドキドキする。ああ早く、早く・・・・・。
 もしかするとそれは、あの子の意識なのかもしれない。彼女は待っているのかもしれない。男が達するのを。自分が達するのを。達した後の世界を。だとしたら、彼女は達観していると言えるだろう。あたしは、この場の全員が恐らくは、シンクロしているのだ、あの子と。
 男の動きに乱れは無く、いつ果てるとも知れないのが歯痒かった。いつ、いつ終わりは来る?いつ、いつこの胸の高鳴りは静まる?ああ、早く。早くこの緊張を解して。あたしを、あたしを解放して!
 「うっ・・・・・」
 不意にそれは来た。うめき声を残し、男は彼女の胸辺りに精液を大量にぶちまけたのだ。が、余韻に浸るでもなく、やはり闇の中へ姿を消した。
 白濁液に塗れた、転入生だけが、蝋燭の明かりの中に取り残されて横たわっていた。さながらそれは、作りかけの蝋人形みたいだった。激しい呼吸をして、ぼんやりと焦点を失っている部分を除いては人形みたいに、どこか現実感を失った姿だ。
 でも、あたしは知っている。
 終わりでなく、むしろこれからが始まりなのだと。
 その証拠に、あたしの胸の高鳴りはちっとも収まっていない。むしろ、もっと高まっている。
 ああ、来て。早く、「出て」来て。
 ぶるりと、あたしは身を振るわせた。緊張感めいた胸の高鳴りと平行して一瞬、寒気が全身を貫いたのだ。それはたぶん、この場の全員がそうだったかもしれない。でも、すぐにそれは消えて、叫びたいほどの緊張感が全身を塗りつぶした。
 ぐるるるる。
 聞こえた。声が、いや、うなり声が。
 ぐるるるる。
 ああ、来た。あたしは、これを待っていた。
 ああそうよ、来て。出てきてあたしを、あたしを満たして。
 ぐるるるる。
 その声は、床に横たわっていたあの子にも確かに聞こえたようだ。声の方向へ顔を向ける。だが、彼女にはただの闇しか見えないに違いない。無理も無い、あれは、闇と同じ色をしているのだから。
 ぐるるるる。
 あの子は凝視してる。声の方向を。でも、まだ何も見えないらしい。そう、もっと目を凝らして。でも無理。まだ見えないわ。
 ぐるるるる。
 不意に、別の方向からうなり声を感じて振り向いたところに、不意に、それは姿を現していた。ずっと視ていたはずのあたしにも、いつ、と思わせる現れ方。
 漆黒の犬みたいな生き物だった。ぐるるると唸って、ピンク色の舌を垂らして、生臭い息をハッ、ハッと漏らして唾液を垂らして立つ四足の獣。
 硬直しはしたけれど、転入生は恐れていないようだった。むしろ、歓迎さえしているみたいだ。獣のほうもそれを敏感に察知したらしく。すぐさま長い、異様に長い舌で彼女の全身を舐めまわし始めた。
 「あああ・・・」っと、あたしが聞いても悩ましげな声で、彼女は呻いた。
 分かる。
 あたしも経験があるから。あの唾液には、催淫の効能があるのだ。塗りつけられると全身が燃えるみたいに熱くなって疼いてしまう。汗は量を増して、肢体の秘部は必要以上に分泌液を放つようになる。
 獣の舌は、でかいキャンディーでも舐めるみたいに隅々まで丹念によく動いた。彼女の性器へ至ったのは、やはり最後の最後で、そこだけは特別な法悦を得られるのか、こねくり回すようにベロベロと獣は舐めた。
 転入生は、悲鳴に近い喘ぎ声を上げて身を捩った。長い舌はそのまま、中まで進入したのだ。そして、グリグリと動いた。ひいっと、断末魔のような叫び声を残して、ついには、彼女は失神してしまった。
 ズルリと音を立てて獣は舌を引き抜くとゆっくりと彼女の身体に覆いかぶさった。ビクっと痙攣して、転入生は覚醒した。獣が、性器を突き入れたのだ。漆黒の身体のどの部分にそれがあるかは正確には分からない。だが、あたしは知っている。その形と、大きさを。
 鎌首のように湾曲しているそれは、ホースみたいな長さをしているのだ。
 到底、人間が受け入れられるような代物ではない。
なのに・・・・・・。
あたしは思い出していた。絶対に、入るはずのないそれが、入ってきた瞬間を。あの、感触を。
異物には違いないのに、極限の違和感の中、しかしすぐにそれは馴染んだ。不思議なほどにすんなりと馴染んで違和感はどこにもなくなっていた。そして、それは、当然のようにあたしの中を蹂躙した。意思を持っているかのように動き、肉の襞を撫で回した。快楽のせいであたしの意識は何度も飛んでいた。生臭い体にしがみ付いて狂ったように求めていた。自分じゃないみたいだった。よがり狂っている自分を、傍観してる自分が生まれたみたいだった。
 そして今も・・・・・、あの子は。
 強引に覚醒させられた後の彼女は、狂い出してしまっていた。
 ありえない角度から、位置から、体の内側を貫いていく奇怪な感触に、まずは慣れが必要だ。でも、それはそんなに長くは要らない。すぐに、こみ上げてくるような感覚を得るだろう。既に、彼女はその段階へ入り始めたようだった。
 表情が違う。
 狂いだしている顔。
 すっかり歪んでおかしくなってしまった顔。
 箍の外れた惚けた顔。
 異常な状況か、はたまた異常な快楽によるものか、あるいはその両方か。どんな種類であれ、あの子は、狂ってしまったのだろう。迸る絶叫は、喘ぎ声とは呼べないだろう。声だけを聞いているのなら、まるで成仏できない亡者のうめき声にも近く、人の声じゃないみたいだ。どこか痛ましくすらあった。
 獣は突き入れながら、ベロベロと、転校生の身体を舐めまわし続けている。舌が唇を這うたび、彼女はその太くて長い舌と、自らの舌を必死で絡ませていた。べっとりと付着した唾液が、容赦なく口内へと流れ込んでいるだろうか、時折、噎せ返っている。
 身悶えするような動きが、ビクっと大きな痙攣を伴って止まった。意識が飛んだとすぐに分かった。獣はそれでも突き入れを止めようとしない。強引な覚醒を促そうとするかのように。
 あの子は・・・・戻って来られるだろうか。
 快楽の彼岸から。
 そのまま、別の世界へ行ってしまってもいいとさえ思っているかもしれない。もしそうならば、あの子は自分の境遇を呪うだろうか。この、理不尽な状況、仕打ちを呪って朽ちていくだろうか。あたしには分からない。けど、たぶん、今の今ならば、喜ばしいことだと思うかもしれない。理性が壊れてしまっているからかもしれないけど、普通に生きていたんじゃ絶対に味わえない快楽の中で、何がなんだか分からないうちに消えていくのも、いいことかもしれない。あたしはただ、彼岸へは行けなかった。
 うっと呻いてから、転入生は激しく咳き込んで身体を捩った。意識が戻ったようだ。彼女は、彼岸から帰ってきた。いつの間にか、四つんばいの姿勢とされ、力なく尻を突き出したままで、彼女は頬を床へくっ付けて、口の端からだらしなく涎を垂れ流してヒクヒク全身を痙攣させている。
 獣の舌が、当然のように肛門を清め始めた。丹念に、しつこく尻の穴をベロベロと舐め回した後で、それは、ゆっくりと、内部へ入りだした。どうすれば、あの大きさの舌が、あんな小さな肛門から中へ入っていけるのだろうか。それを受け入れるあの子に苦痛は・・・・・・恐らくないだろう。入れられた直後、凄まじい悲鳴を上げて、彼女は失禁していた。それでも、獣は舌をずぶずぶと腸内へと逆流させていく。激しい放尿が大分続いた後で、またも彼女は意識を失ってしまった。
 それを確かめるようにして、獣はずるりと舌を引き抜くと、巧みに、四つん這いのまま気絶している彼女へ覆いかぶさった。
 尻を、支配するつもりだ。
 あたしがされたように。
 あんなものが、尻から入るのだ。入ってしまう。
 ああ・・・・入っていく。ゆっくりと、でも確実に入っていくのが見える。なんだかあたしまで、狂ってしまいそうだった。何回も見てきて見慣れたはずの光景なのに、慣れない。見るだけ、見ているだけという状況に慣れない。
 あたしも入れて欲しい。掻き回して欲しい。暗い欲望が、むくむく大きくなる。
 でも、それは叶わない。今、この場の主役はあの子。あたしは傍観者、観客。だからあたしは持ち上がってきた欲望を抑えつける。なんだかとっても落ち着かない。嫌な感じだ。出たり、入ったりしている。ああ、もうこれ以上見ていたくない。あの子が羨ましい。だからもう見たくない。
 そんな彼女はもう・・・・・抜け殻みたいだった。いつしか、喘ぎ声は、無様な真のうめき声に変わり果てていた。抜け殻だった。そこにいるのは、ただの抜け殻だった。獣は抜け殻に、凶棒を突き入れ続けていた。飽きもせずに。あんな無反応になってしまったモノ、どこがいいのだろう。まだ魅力を感じるのだろうか。己が果てずには済まぬのだろうか。
 全部そうだ。全部あたしは知っている。あれは、いつかのあたしだ。気味が悪いくらいに、あの場にいる子は、狂うほどに感じて、終いには壊れていくんだ。あたしも、壊れた。きっと壊れていた、丁度あんな感じに。何も考えられなかった。考えたくなかった。どう見えてるとか、今どんな気持ちとか、どうなるのかとか、何も。
 あんな状態になって、ちゃんと元に戻ったのが不思議だ。あの後、あたしはどうしたんだろう。あたしはどうなったんだろう。今、ここにいる自分は、本当のあたしなんだろうか。あたしという人間の本質は、あの時、本当に彼岸へ飛んでしまって、ここにこうしているのは、あたしという面、あたしの身体を持った別人かもしれないのに・・・・・・。
 けど、どうだっていいや。あたしは、あたしなんだ。こうして五感を使って世界を見ている存在こそあたし。他の誰でもない。今は・・・・あの子が、ちゃんとあたしたちと一緒に机を並べて、この学校でやっていけることを静かに願いましょう。そうよ、転入生だもん、この学校の。同級生になるんだもん、この学校の。そしてこれは、決して、あの子を苛めて、追い落とそうなんて陰湿な場じゃないもん。これは、歓迎会なんだもん。あの子に、そこの所は、ちゃんと伝わるかな。皆、歓迎しているんだよ。口に出さないだけだよ。皆とっても、あなたのことを歓迎してるんだよ。ねえ、分かってくれるよね。歓迎してるから、こんなことをするんだよ?こんな風にしてやってるんだよ?分かってくれるかな。分かってくれるよね?
 ああ、獣の動きが段々早くなってきた。そろそろだ。そろそろなんだ。緊張して来たよ。ああ、あの胸の高鳴りがまた来た。爆発してしまいそう。これを見ているだけ、見せ付けられているだけのあたしは、狂ってしまいそうです。壊れてしまいそうです。
 あの体液は熱かった。本当に熱かった。温かい、じゃなくて、熱かった。身体が覚えてる。あれは劇薬だ。この宴の、最後のとどめに相応しい。今度こそ、今度こそ、あの子は耐えられるだろうか。いや、耐える必要なんかない。あたしも・・・・・きっと死んだんだ。でも、今ちゃんとここにいられる。だから、あなたも大丈夫。何にも心配なんて要らない。
 一度、死になさい。この汚れた不潔な世界から抜け出しなさい。そうして戻ってくる時には、新しい自分になってるの。見るものすべてが、聞くものすべてが、触れるあらゆるすべてが、違って見える。低劣とか、高尚とか、そんな価値観さえくだらないほどに、それこそ全く違った世界が、あたしを出迎えたように、きっとあなたにも訪れるから。その時、本当の意味であたしたちと、あなたは対等になれる。本当の意味で肩を並べることができるようになるから。
 だから、一度死んで。お願いだから、一度死んで。あたしは見てみたい。あたしのところまで来た新しいあなたを。転入生の、インテリぶった、小奇麗な面の皮や表向きの仮面なんか、端からどうだっていいんだから。その下の素顔を堂々と晒して、あなたが戻ってくるのをあたしは見てみたい。あたしは楽しみにしてる。
 ああもうすぐ。もうすぐよ。あいつが・・・・・あいつが・・・・・・
 あなたに毒を撃つ。
 あなたは毒にやられて死ぬ。
 それまで、もうすぐだから。
 生まれ変わるまでもうすぐだから。
 この世のものではない雄たけびが、身体を痙攣させた獣から迸った。
 あたしは知っている。それが長く、大きく轟いたとき、それがこの歓迎会の終わりであることを知っている。
 あの、生命を失った抜け殻みたいになった彼女は、獣の射精を直に受けて蘇ったかのように、雄たけびに呼応する絶叫を長く放った後、意識を失った。これは、儀礼的な意味での、象徴的な意味での彼女の死だとあたしは思った。あたしも、一度、ああやって死んだ。
 宴はこうして終わった。虚しかった。祭りが終わったあとの虚しさと変わらない。ただ、参加できない祭りに意味がないように、この歓迎会は、あたしにとって大した意味こそなかった。もちろん、あの時の法悦感を再確認できたのは嬉しかった。でも、何かがやっぱり足りない。
 皆が動き出した。もう終わりかよ、凄かったなやっぱ、俺なんて五回もヌイちまったよ、あとで輪姦そうぜ・・・・・。男たちの諸々の感想と共にあたしも、波に混じった。遠くで声がした。十五分後に、二時限目が始まります、だって。あたしは、現実に戻された。あの子は・・・・・闇の中、もうその姿は見えなくなっていた。












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