悪役令嬢ですが、チート能力(ガチャ、強奪、回復)持ってます。
短編です!
よろしくお願いします。
「マリア、君との婚約を破棄する」
目を開けた瞬間、そんな言葉を耳にしました。
昨日会社から帰ってきてベッドで寝たと思ったら、次の瞬間ここです。
目の前では、金髪碧眼の端正な男性、洋画で見るような貴族風の男が、ビシッと私に指を突きつけてドヤっています。その表情から自信が溢れ出ています。
その傍には、これまた見目麗しい女性。華奢な身体を小さく丸めながら男の陰に隠れており、僅かに首をかしげて私を見ています。かわいい見た目とは対照的に、その目は私を嘲笑うかのように緩んでいます。
なに?
なんでしょう?
何が起こったんでしょう?
動揺して視線を下げると、あれ?私、何やらひらひらしたドレスを着ています。
それに手が異様に白い。
あれ?私、こんなに色素が薄かったでしょうか。
不思議に思って自分の手?を見つめていると、
「マリア、手を見てもそこには何もないよ。君の手は汚れている。全くもって汚れている。その薄汚れた手で君に触られたと思うと虫唾がはしるよ。よくも今まで私を騙してくれたな。君と言う女はまさに毒だ、そう・・・・etc.」
胸に手を当て悲しそうな顔をし、その次には大げさに両手を広げて「あぁ~なんて悲しい事だ」っと、熱く何かを語っている目の前の男。
誰?
誰でしょう、このオペラ風の男は。
絶賛自分に陶酔中のこのイケメンは誰なんでしょうか?
それに私の事をマリアと呼んでいる。
私、マリア?
いや、そんな外国人みたいな名前じゃなくて、私は普通に亜美って名前なのですが。
それに、映画のセットの様な、まるでお城の一室の様な場所。
すっごい高級そうな家具やカーテン、へんてこな絵画まで壁に飾ってある。
ここどこ?
どこなのよ?
ねぇ、一体、どこなのよ?
首を回して辺りを確認すると、私達を大勢の人が囲んでいることに気づく。
男性も女性も皆着飾っており、まるで舞踏会のようですが、どこか様子がおかしい。
何か緊張感のようなものが漂っており、私と視線が合うと皆目線をそらす。
「マリア、その小さくて、華奢で、小人の様にチャーミングな顔を動かして、一体誰を探しているのかな?君の味方なら、皆、羽ばたく蝶の様に逃げ去ったよ。悪役令嬢のマリア」
謎の比喩を使い、甘い声を出して両手をひらひらと動かす男。
なんなんでしょう、この男は?
だんだんイライラしてきました。
私を馬鹿にしているような気がしてなりません。
「おっと、僕を睨んでももう怯えないよ。僕はこの国の第四王子だ。君の氷の様に冷たい瞳と、氷結薔薇のような鋭い表情は確かに怖い。あぁ、本当に怖い。ブルっとくる。まるで冥界の悪魔に睨まれたようだ。でも、今の僕の傍には天使の様なクロエがいてくれる。前までの僕と思ったら大間違いだよ」
どうやら、私の前にいるのは自称、第四王子様、そして隣の女性はクロエらしい。
彼はどうみても頭がおかしいので、この人に現状を聞くのは無理だろう。
どこかに真面目そうな人にいないかと思って頭を振ると、床に一人の女性が倒れているのを発見する。
ドレスがわさっと広がり、私のすぐ傍に倒れている。
動揺していて今まで気づかなかった。
彼女を見ると、
「マリア様、私が不甲斐無にばかりにすみません」っと呟き、涙を流す彼女。
何?
何でこの人泣いてるの?
ハンカチを噛みしめて現在進行形で泣いているのですが。
一体何故?
「おやおや、マリア、自分の仲間に当たってはいけないよ。いくら彼女の失態で君の悪事を露見してしまったとしても、君のために動いたんだから。その氷の瞳で・・・etc.」
第四王子は何やら長々と話しているが、この状況を整理するに、どうやら、私は悪役令嬢で、床に倒れている女性がきっかけで悪事が露見し、婚約者である第四王子に婚約破棄をされている所らしい。
というか、周りを人をどこかで見たことあると思ったら、私がプレイしたことある乙女ゲーの登場人物じゃん。
知ってるよ、このオペラ風第四王子も、彼の傍にいるサブキャラの癖にヒロインを妨害してくる清楚風ビッチ、クロエちゃんも。
このお城の様なセットも、背景画像でみたミルフォード城の大広間。
私、どうやらゲームの世界に来たようです。
◇
そう認識した瞬間・・・周りの風景が止まる。
周りの人間の動きが止まり、何も聞こえなくなる。
シーンと静まり返った世界。無音空間。
『パンパカパーン、おめでとう』
え?何?何?
突然聞こえる声、それにラッパの様な音。
無音空間に響いたため、反射的にビクッと震えてしまった。
「何?どういうこと?」
『おめでとう。君は適合者のようだね』
心の中に直接話しかけられるような感触。
声の主の姿は見えない。声だけが聞こえてくる。
「誰?どこにいるの?」
『それは今はいえないよ。それよりおめでとう。おめでとう。よかったね』
子供の様な声で心に語りかけてくる誰か。
一体、どうなってるのか?
ゲームの世界にいると思えば、いきなりその世界が止まって・・・
『君はここが、夢ではなくゲームの世界だと気づきました。しかも、ゲーム名も合ってる。キャラ名も思い浮かべた通りです。だからお祝いしましょう。よかったね。おめでとう』
さっきから、人の話を聞かない人ばかり。
どうなってるの、この世界・・
「ここ、どこなの?あなたは誰?何ここ?」
『時間がないから一気に説明するね。聞き逃さないでね」
え、何?
私の言葉するっと無視されました。
『両手を前に出して』
「?」
反射的に手を前に出すと、光り輝くカードが手元に現れる。
それを手に取り見ると、何やら書かれている。
―――――――――――――――
名前 : ルロワ・マリア
身長 : 161cm
体重 : 60kg
状態 : 十分過ぎるぐらい健康。寝過ぎ。
趣味 : メイド苛め、下級貴族への嫌がらせ
嗜好 : チョコ、抹茶、紅茶(無糖)
特徴 : 典型的な悪役令嬢、金髪縦ロール
レベル: 5
称号 : 見習い悪役令嬢LV3
ギルド: 無所属
スキル:「強奪」「ガチャ」「回復」
魔法 : 炎魔法LV10
特技 :「ざます!」「センスで叩く」「高笑い」「冷笑」「氷の瞳」
「百烈拳」「地獄突き」「フライングクロスチョップ」
加護 : 女神の祝福 竜神の加護 魔王の血筋
――――――――――――――――――
な、なにこれ・・・
きたばかりなのに、一杯ついてるんですけど・・・
しかも、どうみても乙女ゲーのスペックじゃないと思うんですけど。
これ、魔王とか勇者とかでてくるRPGゲームの方ステータスでしょ。
乙女ゲームは、ほらもっと、好感度パラメータとか、そっちだよ。うん、そっちだと思う。
しかも、地味に体重と身長が私と同じ・・・
もう少し痩せようと思ってたのに、こんな堂々と書かなくても。
試にカードをコスっても数字消えないし、こんな堂々と刻まなくても。
でも、確か公式設定は違ったはず・・・奇妙な考えが頭に浮かぶ。
『これが君のステータス。体重と身長は元と同じだから安心して』
そこ、強調しなくていいんですけどね。
全く安心する余地ないんですが。
逆にそこは公式設定にして下さい。お願いします。
『カードっと言えばいつでも確認できるから、普段は消えているよ。それに他の人には見えないから安心して』
「あの~、これ、間違ってませんか。私の知ってるこのゲームには、魔法とか特技とかなかったと思うんですけど。ただ恋愛するだけだったはずです」
『話は最後まで聞いてよ。質問は後だよ』
「あっ、はい。すみません」
ついつい社会人的な癖で、反射的に謝ってしまう。
ペコリと頭を下げてしまった。
『これだから最近の子は・・・。ええっとね、マリアにやってもらいたい事があるんだ。この世界には』
突然、「ブツン」っという音がしていきなり声が聞こえなくなる。
シーンと静まり返り、再び訪れる無音空間。
あれ、どうしたんだろう。
いきなり声が聞こえなくなった。
「あの~、あの~、聞こえてますか?」
「・・・」
「説明を続けてほしいんですが・・・」
「・・・」
「聞こえてますか~、もしも~し」
「・・・」
「もしもしカメよ~、カメさんよ~」
「・・・」
だめだ、全く反応がない。
ちょっとふざけて見たけどそれでも反応がないので、逆に悲しくなる。
っと次の瞬間、周りの景色が動きだし、音が元に戻る。
舞踏会のガヤガヤとした音が戻りだし、世界が動き出す。
◇
「前から思ってたんだ。君のそういう所は全くいけないよ。令嬢というものは、かくあるできで、高貴なる・・・etc.」
第四王子の私を断罪する演説?が続く中、私は周りを確認する。
他の者達には動揺がない。皆、何事もなかったように時間が止まる前と同じように私達を眺めている。
時間が止まったのは私だけだったのかもしれない。
その証拠に、右手の少し上の空間にステータスカードが浮かんでいるが、誰も気にしない。まるで見えていないかのようだ。
急に起こった出来事の連続、良く分からない世界に来てしまったためか、なんだかおかしくなって笑ってしまう。
すると、
「き、ま、マリア。今、僕を笑ったな。この僕を嘲り笑ったな。なんたる侮辱。これだけ誠意をこめて君に言葉をかけているのに。まさか、この僕を笑うとは。衛兵、この女を拘束しろ」
どうやら、先程までの長ったらしい演説は私を慰めていたらしい。
気づかなかったよ。
命令を受けた兵士達も、一瞬戸惑い第四王子を見る。
「ほら、早くしろ。第四王子である僕が言ってるんだぞ」
一人の兵士が王子の前に出る。
周りの兵士とは違うその姿からして、兵士たちのリーダーかもしれない。
「で、ですが、拘束するような必要はないかと。か弱い令嬢ですし」
「うるさい。この女は毒だ。紛れもない猛毒だ。何やら武器を隠しているかもしれない。僕に逆上にして襲いかかってくる前に城の牢へ繋げ。王族にあだなすものを捉えるのが兵士の役目だろ」
「はぁ~」っと呟くと、私に寄ってくる兵士達。
申し訳なさそうな顔をしながら私を促す、兵士のリーダー。
「すみませんが、案内しますので」
ここにいても意味は無いか、とりあえず今すぐ自分の環境を知らないと。
兵士に従ってその場を後にしようとすると。
「マリア、君の様な女と知り合った事が僕の人生における悲劇だよ。実に嘆かわしい」
そう私の背中に言葉を投げかける第四王子。
マリアが何をしたか知らないが、その言葉にイラットして振り返る。
目の端に映るステータスカードの「フライングクロスチョップ」をタップしそうになったが、それは危なそうなのでやめて「氷の瞳」をタップする。
すると、目に冷たい水のようなものが流れ込む感触がし、瞳が張る。
その瞳で第四王子の瞳を見つめると、
「うっ、ぐっ、ぐっ、ぐはぁ!」
視線がぶつかった瞬間、第四王子が突然首を抑えだして地面に膝真づく。
苦しそうにのどを抑え、荒い息をしながら体をまるめこみ、小刻みに震えている。。
「だ、大丈夫ですか?」っと慌ててかけよる兵士達。
激しく体を震わせながらも、「う、うるさい。大丈夫だ。よるな、よるな」っと兵士を追い払う第四王子。額から冷や汗が流れており、体が震えている彼。しかし、王子としてのプライドがあるのか、それを必死に耐えているようだ。
私はその怯える姿を見て満足し、隣の兵士に告げる。
「早く、つれていってくれませんか。ここは空気が悪いですので」
王子に聞こえるように大きな声でそう呟くと、兵士達が私から身を引きつつも歩き出す。
兵士も、周りを囲んでいた着飾った人々も、私が歩くと身を引いて道を開けていく。
その目には明らかな怯えが見て取れる。皆、私が何かしたと思っているようだ。
王子が苦しんでいる声をBGMに歩き出すと、
先程まで傍に倒れていた女性が私の前に周り込み、ざーざーっとスライディング土下座する。ゆるりと茶色の髪の毛がウェーブになっている少女。まだ名も知らぬ少女。
「マリア様、私も、私もお供させて下さい。この失敗は必ず挽回致します。何卒、何卒よろしくお願い致します」
額を地面にこすりつけ懇願する彼女。
その行為から必死さが伝わってくる。
「いいでしょう。ついてきなさい」
左手に持っていたセンスで一振りし、口元を隠す。
そうして私は大広間を後にした。
◇
部屋をでた後思った。
あああああああああああああ。
いやあああああああああああああああ。
うわああああああああああああああああああ。
心の中で叫ぶ。
私、何やってるんだろ・・・
これじゃ、まるっきり悪役令嬢じゃん。
すっごい事をしてしまった気がする。
だって相手、オペラで第四とはいえ、れっきとした王子でしょ。
大丈夫なの、これ?
ツーンとした表情で優雅に歩いたけど、実は心臓バクバクでした。
センスで顔を隠さなければ大変な事になっていました。
今思い返すと頭に血が上って、顔から火が出そうなほど恥ずかしい。
急に体温が上がってきた。
だが、次の瞬間、
パンパカパーンという音が鳴り、
『おめでとう、悪役令嬢レベルが上がりました!』
という声が脳内で響く。
いきなりの声にビクッと驚いたが、どうやらレベルアップしたらしい。
なんで?
本当になんで?
この世界何?
誰か教えて・・・
というか、これから私、牢に繋がれてるってまずくない・・・
逃げ出そうかしら。チラっ、チラっ。
続き読みたいなどありましたら、感想欄に宜しくお願いします。
一応アイデア有ります。
【宣伝】
「悪役令嬢死す、太陽を盗んだのは誰? 【問題編】」
http://ncode.syosetu.com/n4237da/
の【回答編】を本日22時にUPします。
2000文字程度の短編で、難易度も高くないのでするっと嗜めるかと思います。