18.プレゼント大作戦
「月華、終わったよ!」
わたしはバイトをしに月華達のブティックに来ている。
つい先程、頼まれていた品出しを終えたところだ。
ここでのわたしの主な仕事はレジと品出し。人手が少ないから掃除などのその他の雑用もこなしているけどね。
人気店ということもあり客が多く、とても忙しい。でも、なかなかやりがいのある仕事だ。
「お疲れ様。貴女がいてくれると本当に助かるわ。まったく…茉莉花も舞を見習いなさい!」
「僕だって頑張っているじゃないですか〜」
椅子にだるそうに座りながら言われても説得力がない。
茉莉花はいつもこんな調子だ。そのせいで月華はいつも彼の倍以上動き回っている。
今までよく二人だけでやってこれたと思う。
「舞、今日はもう上がっていいわよ。それと、これ」
はい、と渡されたのは茶封筒。中には紙幣が入っている。
「お給料よ。受け取って」
初めて自分で働いて手に入れたお金。こんなに嬉しいものだとは思っていなかった。
「ありがとう!」
†
バイトを終えた後、いつもなら真っ直ぐ帰るのだが、今日はそうしなかった。
自分で稼いだお金で黎月達に何かしてあげたいと前々から思っていたので街に寄ってから帰ることにしたのだ。
でも、その『何か』はなかなか思い浮かばない。
いい案はないかと考えながら歩いているとある店が目についた。
それはこの前、雪苺を見かけたあのアクセサリーショップ。
わたしはそのアクセサリーショップへ歩を進めた。
「いらっしゃいませー」
小さい店ながらも店内にはたくさんのアクセサリーが並んでいた。
――これ、姫桜に似合いそうだなぁ。
手に取ったのは華やかなコサージュ。値札を見てみるとわたしでも手が出せる程度の値段だった。
――皆にアクセサリーをプレゼントするっていうのはどうかな?
この店はメンズのアクセサリーも豊富に取り揃えているようだし、いいアイディアかもしれない。
――そうと決まれば、どれにするか決めなくちゃ!
店内をぐるぐると何度も回る。姫桜へのプレゼントはすぐに先程のコサージュに決められたのだが、残りの二人のプレゼントが決まらない。
男にアクセサリーなんてあげたことがないから何がいいのかいまいちわからないのだ。
「…うーん……」
たっぷりと時間をかけ、悩みに悩み、やっとのことで決めることができた。
黎月にはシンプルなブレスレット、真白にはネクタイピンを買っていくことにした。
「ありがとうございましたー」
綺麗にラッピングしてもらったアクセサリーをバックの中にしまい、わたしは屋敷の方へ歩き出した。
仕事は早く終わったのに長いこと街をうろうろしていたせいで屋敷に着いたのはいつもより遅い時間だった。
屋敷へ戻った時、黎月達は庭のティーテーブルでお茶を飲んでいた。
「あら、お帰りなさい」
いち早くわたしに気付いた姫桜がカップを口から離し、わたしに微笑みかけた。
「お帰り」
「今日は遅かったですね。仕事が長引いたんですか?」
「ふふ、実はね」
わたしはバックの中からラッピングされた箱を取り出し、彼らにひとつずつそれを渡した。
「どうしたんだ、これ?」
黎月は箱を受け取ると中身を確認するように耳の側で振り出した。
割れ物だったらどうするんだ!……違うからいいけど。
彼が箱を動かすたびに中に入っているブレスレットがカタカタと音を立てる。
「お給料が入ったの。だから皆へ日頃の感謝を込めてプレゼント」
開けてみて、と言うと彼らは一斉に包み紙を開け始めた。
姫桜と真白が丁寧に開けていくのに対し、黎月の開け方は少々雑だ。
――うーん、こういうのって性格が出るのかな?
少しの間、紙の擦れる音だけがこの場を支配する。
わたしは彼らがプレゼントを開け終わるのをじっと待った。彼らがどんな反応を示すのか期待と不安が交差する。
それぞれが箱を開け、中に入っているものを取り出すと笑顔を見せてくれた。
「まぁ、素敵なコサージュ。ありがとう」
「ありがとうございます。大切にしますね」
「嬉しいぜ、舞。ありがとな」
彼らの口から出たお礼の言葉。自然と笑みが零れた。
プレゼント作戦は成功ってことだよね?
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