15.双子の絆
「あれっ?」
街を歩いていると銀髪の少女を見かけた。
アクセサリーショップの入り口付近で落ち着きなくきょろきょろと周りを見ている。はっきり言って挙動不審だ。
わたしはそんな彼女に近づき、後ろから声をかけた。
「…雪苺?」
後ろ姿だけじゃ確証は持てないけど、桃色のドレスを着ているからきっと雪苺だ。
「わあっ!?」
驚いた様子で振り返った少女の瞳は思った通りに薄い桃色だった。
「やっぱり雪苺だ」
「なんだ、舞かぁ。ビックリしちゃった」
声をかけたのがわたしだとわかると雪苺はホッと安心したような顔をした。
「あれっ?今日は雪林檎は一緒じゃないの?」
すごく仲が良く、どこへ行くのも何をするのも一緒な雪苺と雪林檎。
だけど、今は雪苺ひとりだ。一緒にいないなんてかなり珍しい。
「あー、実はね……」
そう言って雪苺が取り出したのは小さな箱。可愛らしいデザインの包装紙と真っ赤なリボンでラッピングされたそれは、言われなくてもプレゼントだとわかる。
「これ、雪林檎が欲しがってたブローチなの」
――あぁ、なるほど。雪苺の言いたいことがなんとなくわかった気がする。
「雪林檎にプレゼントするために内緒で買いに来たんだ?」
「うん、そうなの。秘密にしてビックリさせたいんだ」
雪苺はキラキラと効果音が付きそうなくらい輝いた笑みを浮かべた。
「雪林檎、きっと喜ぶよ」
「ふふっ、そうかな?」
わたしがそう言うと雪苺は嬉しそうな笑みを浮かべた。
強い絆で結ばれている二人。言われなくてもこの双子を見ていれば充分過ぎる程それがよくわかる。
嬉しそうに笑う雪苺を見ているとそんな二人の絆を羨ましく思った。
「双子っていいなぁ。わたしは一人っ子だから二人が羨ましいよ」
羨ましいなんて考えていたら無意識にこんな言葉が口から零れ落ちた。
「えっ?」
それを聞いた雪苺はきょとんとして、わたしのこと見上げた。
その反応は予想外のもので、わたしには雪苺がなぜそんな顔をするのか全くわからない。
「舞ったら何言ってるの?貴女だって──」
そこまで言うと雪苺は慌てて手で口を塞いだ。
「わたしだって?」
「な、何でもない、何でもないよ!!」
わたしが聞き返すと雪苺は首をぶんぶん振って、『何でもない』を繰り返した。先程以上に挙動不審だ。
「ね、ねぇ、舞。カ、カフェにでも行かない?こんな所でた、立ち話っていうのも、ね?」
わたしが訝しげに見ていると雪苺は何とか誤魔化そうと必死な様子でそう言った。
噛みまくりで全然誤魔化せてないけど。
――雪苺が言いかけたことを聞くべきか、聞かないべきか……。
「……………うん」
わたしはたっぷりと間をあけて、一言だけそう言った。
わたしが出した結論は『聞かない』。
雪苺が何と言おうとしたのかとても気になるけど、彼女があまりにも必死なのでそれ以上は聞かないことにしたのだ。
この後、わたし達はカフェで一時間程お喋りをし、各自の家に戻った。
†
次の日も街で雪苺に会った。
今日は昨日と違って雪林檎も一緒だ。
嬉しそうに笑う二人の胸元にはキラリと光るブローチ。
デザインは違えど、どちらも繊細なつくりでとても綺麗だ。
雪林檎のブローチはきっと昨日、雪苺がプレゼントすると話していたものだろう。じゃあ、雪苺のブローチは?
「ねぇ、聞いて。昨日、雪林檎にこのブローチ貰ったの。ビックリさせるつもりが逆にビックリさせられちゃった」
「あたしも雪苺からこれを貰った時はビックリしたよー」
「まさか同じこと考えてたなんてね」
「ねー」
二人は顔を見合わせ、笑い合った。
見ている方まで思わず笑みを零してしまいそうな微笑ましい光景。
そのはずなのに、わたしの中には生まれた気持ちは、何とも言えない複雑なものだった。
愛しさ、懐かしさ、悲しさ、そして苦しさが入り混じったような気持ちがわたしの中をぐるぐると駆け巡る。
どうしてこんな気持ちが生まれたのか、今のわたしにはわからなかった。
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