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終わりなき夢を君に捧ぐ─World of the doll─
作:有栖川 咲



11.波乱のお茶会



「「いらっしゃい」」

綺麗にハモる声。
そっくりな二人のドールがわたし達を迎えてくれる。

「こんにちは、雪苺、雪林檎」

初めてお茶会に参加して以来、二人はよくお茶会に招待してくれる。

今日もお茶会のお誘いを戴いたのだ。

「「どうぞ、入って」」

いつでも二人は息がピッタリ。
打ち合わせをしていたとしても、ここまでピッタリ合わせるのは至難の業。それを打ち合わせなしに、しかも無意識にやってのける雪苺と雪林檎はすごいと思う。



二人の後に続き、ティーテーブルが置いてある庭に入った。


「…どうしたの、これ」

テーブルの上を見て、唖然とした。

その上に並んでいるのはティーセットにナプキン、白いお皿にお茶菓子。

ここまではいい。
問題なのは量。ただでさえ、毎回たくさん出されるお茶菓子がいつもの三倍以上並んでいる。
大きなテーブルの上は大量のお茶菓子で埋め尽くされている。

「あっ、ごめん。言い忘れてた」

「今日はね、雛菊も来るの」

双子がそう言った瞬間、姫桜が顔を歪めた。それはもう、嫌そうに。

「凪も来るよ」

「今日は、いつ頃辿り着くかな?」

双子曰く、雛菊が来る時は必ず、凪も一緒に来るらしい。

なぜかって?
超絶方向音痴の雛菊がひとりで外を歩いたらどうなるか、想像つくよね?
いつまで経っても目的地に辿り着けない。
だから、凪が付き添わなきゃいけないってわけ。

でも、雛菊と凪が来るからって、そんなに大量のお茶菓子を用意する必要はないと思うんだけどなぁ……。


最早、定位置となった雪苺の隣の椅子に座り、雛菊と凪の到着を待つ。



「……」

……遅い。
二人はなかなか来ない。

姫桜はテーブルに肘を付き、片手で顎を支えながら、もう片方の手で長い桃色の髪を弄り出した。

双子はさっきから『遅いね』と『まだかな?』を何度も繰り返している。

わたしはというと、両肘をテーブルに付き、両手で顎支えながら、足を何度もぶらぶらさせている。

ここにいる全員が暇そうにしながら、まだ来ぬ二人の到着を待っている。

「先に始めてしまいましょうよ」

そう言ったのは、姫桜。
いい加減、痺れを切らしたようだ。

「いくらなんでも遅すぎるわ!」

姫桜はガタンと音をたて、立ち上がり、バンッと両手をテーブルに叩きつけた。

確かに遅い。もう約束の時間を一時間以上過ぎている。
姫桜が怒るのも無理ない。

雪苺と雪林檎は顔を見合わせ頷きあった。

「「先に始めちゃおっか」」

二人がそう言った直後だった。

「遅なって、ほんますんません!」

わたし達の耳に届いた、あの特徴的なイントネーション。

わたし達が待ちわびていた人物が勢いよく庭に飛び込んで来た。

「ほんまに、お待たせしました」

凪はとても疲れているように見える。
きっと雛菊に散々、振り回されたんだろう。

雛菊はそんな凪の横で満面の笑みを浮かべ、わたし達に手を振っている。
遅刻の一番の原因であるだろう彼女からは悪びれる様子は窺えない。


「あー、来た来た」

「座って。早く始めよう」

雛菊と凪も席に着き、ようやくお茶会は始まった。


「お菓子ー♪お菓子ー♪」

雛菊はお茶会が始まると、紅茶には見向きもせず、真っ先にお茶菓子に手を伸ばした。

大量に並べられたお茶菓子は、どんどん雛菊の口の中へ消えていく。

「雛菊、遠慮ってものを少しは知った方がええ。家出る前にケーキを1ホール食って来たんやから、そんな食わんでもええやろ」

「甘いものは別腹なのー」

雛菊の手は止まらない。
すごいスピードでお茶菓子が消えていく。

雛菊の別腹はどれだけ大きいんだ!


数十分後、テーブルの上のお茶菓子は全てなくなった。
もちろん、大半は雛菊のお腹の中に。

なるほど。よくわかったよ。

雛菊のブラックホール並の胃袋を満たすには、これくらい用意しないと足りないんだ。
これが、大量のお茶菓子の理由ってわけだ。

それにしても、あの小さな身体にあれだけの量が入るなんて、かなり驚きだ。



「ねぇ、遊ぼー」

お腹が満たされ、満足したらしい雛菊は、席を立ち、まだ紅茶を飲んでいる姫桜に遊ぼうとせがみだした。

「お茶会の最中に席を立つなんてマナー違反よ」

姫桜は綺麗な顔をあの時と同じように嫌そうに歪める。

「えー、遊ぼうよ」

「嫌よ。凪とでも遊んでもらいなさい」

「なんで俺やねん!」

姫桜は雛菊と目を合わせようとしない。
凪の突っ込みも完全に無視だ。

「姫桜がいいの。遊ぼー」

雛菊が姫桜のドレスを引っ張る。

それと同時に姫桜が持っていたカップから紅茶が零れ、彼女のドレスを派手に濡らした。


「……」

さすがに雛菊もこれには黙り込み、この場に嫌な沈黙が流れる。

プチッと何かが切れるような音が聞こえたのは、きっとわたしだけじゃなかっただろう。






 †


「これだから雛菊は嫌なのよ!」

「う、うん…」

帰り道、わたしは姫桜の愚痴をずっと聞かされ続けた。

姫桜の怒りはなかなか静まらなかったのだった。












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