第一話:外れた歯車
いつだったか。
私が生まれる、ずっとずっと昔のこと。
ある二人の人間が、人間の人形を創りました。
一人が人間そっくりな人形を、一人が人工の頭脳を。そうして、人形が自分で考えて動けるようにしたのです。
しかし、人間は彼らの事を道具の様に扱いました。
人間よりも様々な事をこなし、体も丈夫な彼らを、人間はなく人形としか見なかったのです。
人間と同じように、感情を持つ彼らを道具として扱うことは、自分自身を道具として扱うに等しいということに気付かずに。
『人対機戦争』
私達がそう呼ぶ戦争は、読んで字のごとく、人と機械、人と人形の戦争を表しています。
創った者と創られた者。
その二つの間に起こった戦争はたった一年で、それだけの期間で終わりを告げました。結果は人形の全滅。
しかし、本当は人形が負けた訳ではないことを、誰もが知っています。
この戦争で負けたのは、人間でも人形でもなく、双方が住む、土地そのものでした。
水は干上がり、木々は焼け、大地には大きな穴があき、山は崩れ、谷は埋まり、村や町もことごとく壊れ、全てが消えたようでした。ですが、これだけならば、人形が敗北した理由にはなりません。
なぜならば、人形は食料が無くても生きていくことが出来るからです。
人形が敗北したのは、その後に起きた災厄のせいでした。
人間達が後退していくなか、無益な争いに嫌気がさしはじめた人形達が駐屯していた、まさにその場所に、落雷があったのです。
とても大きな落雷で、それは紫に輝く冥界の剣のようだったそうです。
自然が人間の味方をしたことを証明した瞬間に、人形は全滅していました。
落雷の衝撃、いえ雷撃のせいで、人工の頭脳が再起不能なほど、ダメージを受けてしまったのです。
人工の頭脳を取り替えることが出来れば、何も問題はなかったのですが、それを行なえる人形も、敵を助けるような事をする技師もいませんでした。
それでも。
それでも、生きているのです。存在しているのです。私達、人形は。
……必死に。 |