第8話 ホラーなものは見ないに限る
さて、鍵を探し始めて数分がたった頃だろうか・・・。
俺と姫香は現在、次の部屋へつながるドアの前で古箱の中を見つめながらうなっている。
「おい。どれが、次の部屋への鍵だ?」
「さぁな。俺には想像つかん」
「お前は役立たない」
そういって姫香はプイと顔を向ける向きを変える。
誰が役にたたんだ・・・。お前もわからんのだから、同じ穴のムジナって奴だろうが。
顔を背ける姫香から目を動かし、後ろを見る。
そこでは、優男と四天王の筋肉さん(名乗ってもらってないから名前がわからん)が人間離れした動きで戦ってる。
うん・・・・俺には踏み込めん領域だな。改めて実感するよ。
そのとき、俺の頬に冷たくて固い物質が思いっきりあたる。
「いてぇ!!」
あたった物体は地面に落ちて、カランカランと音を立てる。どうやら、姫香が俺に向かって箱の中にある鍵をぶん投げたようだ。
顔を上げると、姫香が仁王立ちしている。
「いい方法を思いついた。協力しろ」
命令口調で上から俺を見下ろしながら姫香は言う。
「んだよ・・・・。何を協力しろってんだ?」
「簡単な事だ。この箱に入っている、鍵をすべてこの鍵穴につっこみ開くかを調べる、あかなければ次の鍵をつっこむ。協力しろ」
「なんとなく、返事が予想できるが・・・一応聞こう。それをやるのは誰だ?」
「お前」
姫香は間をあけず、即答する。やっぱりか・・・。
ここに辞書があれば『協力』をひいて、その意味を暗記するまで覚えこませてやりたいくらいだ。
だがしかし、命令は聞いてないと俺の命が危ないし・・・・。
鍵が詰め込まれた古箱の前まで行き、座り込んで適当に鍵を引っ張り出し鍵穴に突っ込んでまわす。開かない・・・。
違うとわかった鍵は箱の外に放り投げていく・・・。
そんな時、目の前に姫香が座り込んだ。
「ん、どうした?」
俺の質問を無視し姫香も古箱に手を突っ込み、鍵を取り出し鍵穴に突っ込んでいる。
「暇・・・だから・・・。私も手伝うことにする・・・。別にお前のためじゃない・・・」
いつもと比べると小さな声で、姫香が言った。
なんだ、協力の意味・・・・わかってるじゃないか・・・。
さっきの言葉は訂正しなきゃいかんな・・・。
というわけで、鍵探しを二人で協力し開始する。
古箱の中の鍵も残りわずかになっていた・・・。
俺ふと優男&筋肉さんの方を見た。
相変わらず、人間離れした戦いを繰り返している・・・。
時折聞こえてくる変な趣味の会話が俺の集中力を奪っていく・・・。
「ははは!この美しい筋肉を目に焼き付けるがいい!!!」
「キミの筋肉が美しい?何寝言を言っているんだい!僕の方が美しいに決まっているだろ!そして、僕以上に美しいのがあの二人だ!!!」
俺は顔&意識を古箱に戻すことにする・・・。
あいつらの声がなるべく聞こえないようにするために。
顔を戻そうとしたとき、俺の頬に固くて冷たいものが勢いよくあたった・・・。
「いたっ!!?」
またしても、姫香が俺に向かって鍵を投げてきていた。
「余所見をするな・・・。早くする」
そういわれて箱の中を見ると、残っている鍵が二つになっていた。
俺が余所見をしている間に姫香が終わらせたようだ・・・。
「ああ、悪ぃ。じゃあ、残りは俺があける」
箱の中にさびしく残った二つの鍵を手にとって、俺は右手の鍵から鍵穴に差し込む。
開かない・・・。まあ、いい。こっちの鍵があたりってことだろ。
俺は左手の鍵も使ってみる・・・・しかし・・・。
「開かない!!」思わず叫んでしまった。
最後の鍵のはずなのに、左手に握られる鍵では開かなかった。
「なんだと?なぜ開かない?!」
俺の言葉を聞いて姫香も叫ぶ。
そのとき、戦っていた筋肉さんの動きが止まった。
そして、今更なことを言う・・・・。
「あ!鍵ならここにあったぞ!!」
俺、姫香、優男の口があんぐり広がって、閉じなくなる・・・・。
「はははは!すまなかった!隠したつもりだったんだが、俺が持っていた!!」
筋肉さんはそういって、ウィンク。そして頭にこつんと手をあて下をちらと出す。
俺の中には腹立たしいという感情よりも、気持ち悪いものを見た後の恐怖の感情のほうが強く浮かんでいた。
なぜなら、筋肉さんの行ったドジっこモーションがとてつもなくホラーな出来だったからだ。
あれは、どこぞの美術館に保存されてるホラー映画より怖いぞ?!
しかも、筋肉さんは何を思ったのかそのモーションのまま静止してる・・・やめてくれ・・。
俺はそのホラーな静止人物から目をそらし優男のほうを見る。
優男も静止していた、しかし、見ている方向は・・・・俺の隣。
俺はゆっくりとなりを見てみる、隣に立つお姫様を・・・・。
震えていた・・・。怒りでわなわなと震えていた・・・そうとしか考えられない。
なぜなら、背中から怒りのオーラが噴出していたからだ。
声をかけようとしたとき、姫香が走り出す・・・手には近くにあったサンドバックを持って。
あんなもん持った状態であそこまで早く走れることに俺は驚きを隠せない。
そのまま、高速で筋肉さんの前まで走った姫香はサンドバックをバットのように構える。
思わず見とれていた俺は、はっとする。
「筋肉さん逃げろ!!下手すりゃ死ぬぞ!?!」
叫んだときはとき遅く、姫香の持ったサンドバックが見事なテークバックの後筋肉さんの体に直撃していた。
「げばぁ?!」
筋肉さんが弱弱しい叫び声をあげて吹き飛んでいく。
俺と優男は筋肉さんの末路を無言のまま見守った・・・ご愁傷様です。
俺はすっかり忘れていたんだ、姫香の怪力を・・・・。
筋肉さんの持っていた鍵はいつの間にか姫香が持っていた。
そして・・・。
「よし。じゃあ、先に進む」
姫香は手を『おー』と突き出し珍しく自分でドアを開けて進んでいく。
その後を俺と優男が無言でついていく。
ドアが閉まる少しの間に俺は部屋の片隅に無残に転がる筋肉さんに手を合わせるのだった。
ちなみに、優男曰く、筋肉さんは“力のゲンザブロウ”というんだそうだ。
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