第6話 ナルシストとキザくさい
さて、現在俺と姫香は二人目の四天王とやらがいる部屋の前に立っている。
しかし、こんな事をしていると、ここの組長は一体何がしたいのだろうかと、疑問がわいてくる。
いや、ほんとに何がしたいんだろうかね・・・・・。
俺はため息をつく。ふと隣を見ると、また姫香が腕を組んで仁王立ちをしてやがる。
良く見るとあごでドアをさしてるな・・・俺にどうしろと?
「ドアを開けろ。」
なるほどな。まったく、ちぃとは動かないと太るぜお姫様・・・。
「まったく、使えない奴だなお前は。このくらいのことは私から言われなくても察して先に行動しろ」
そんな無茶苦茶な命令は受理できんな。俺はエスパーでもなければ、精神科でもないんだ。
しかし、命令されたのであれば動かなくてはいけない。
俺は二人目の四天王が待つ部屋のドアを開いた。
そこは前回の四天王、通称ハゲさんが居た部屋と変わらない構造になっていた。
だが、一つだけ大きく違うものがあった。
部屋中に鏡が置いてあるのだ。ドレッサーから、手鏡、なんとサイドミラーまで・・・。
部屋の奥には、前回と同じような椅子がおいてあって、男が座ってる。
この人は、明らかにおじさんじゃないな、それに、顔もまったく怖くない。
その辺を探せば、いくらでも見つかりそうな優男だ。
座っていた優男が立ち上がり、こっちに歩いてくる。
「やあ。ゲンを倒したらしいね。」
優男は俺と姫香の前で立ち止まり言った。
ゲン?・・・・俺はふと考えた。
ゲンなんて名前の奴いたっけ・・・?ああ、思い出した。ハゲさんの事か!
あの人も結構、変だったよなぁ・・・・。
しかし・・・こいつもまた変な奴なんだろうね。
内面的な事は分からないが、上から下までを見るとよく分かる。
一体何なんだ?こいつのファッションは。
なんだか、とてつもなくダサい。しかも、顔を見る限り微塵も『ダサい』とは思ってないんだろうよ。
「さっさと、私を先に進ませろ。」
姫香が目の前の優男を睨みながら言う。
すると、優男はフラっとよろめき、クルンと一回転し、地面に倒れこんだ。
なんだ、このオーバーアクションは?
「ああ・・・。そんな・・・お嬢様が・・・そんなお言葉遣いをなさるなんて・・。美しかった、あなたは一体どこへ?」
ハンカチを取り出し、涙を拭きながら、優男は言う。
あなたの言う姫香はきっと何年も前に消えてますよ。
数年でこんな性格になるわけないからな。
っていうか、姫香と優男は過去に会ったことがあるのか?
隣に立っている、姫香をチラッと見てみる、いつもと変わらん不機嫌顔だ。
多分、優男とあったことあるんだろうな。顔から察すると思い出したくない記憶なんだろうな。
じゃあ、俺はあまり詮索しないようにするぜ。触らぬ神に祟りなしだからな。
「ああ、どうして。美の象徴だったというのに!この美の化身の僕を超えているお方だったのに!!」
優男は本当にショックを受けたように言う。自分で自分を美の化身というとはね。あまりに話が進まないため、俺も少し口出しをさせてもらう。
「あの。で、俺達はどうやってあなたを倒せばいい・・・」
言いかけたとき優男がぐるんと変なひねりを入れて立ち上がった。
しかも、目がさっきと明らかに違う。
「お前か・・・?お前が、お嬢様をこんな、こんな風にしたのかぁ・・・?」
怖っ!!マジで怖いぞ!?この人は!!
俺はなんだか殺気を感じて後ろに飛んだ、俺が立っていた地面に優男の拳が叩きつけられる。
んなぁ!?地べたが砕けた?!!おいおいおい、どこの超能力者だよ!!
「ふふふふふ。第2の四天王“美のシュウ”です。どうぞ、よろしく。僕は美しい物が大好きなんだ、だから美しくない物は嫌いなんだよ。」
優男の声の怖さがだんだんと増していく・・・。
「だ・か・ら、まず最も美しくないお前は消え去れ!!」
叫びながら、優男は拳を振り上げて俺めがけて突き出す。
おいおいおい!!!なんで、いきなりマジバトルモードに入ってるんだ?!
運よく、避けて俺は姫香を見た。
「っっおいぃぃ!!!」
姫香の行動を見て思わず、ツッコンでしまった。
なぜなら、俺の事をまったくみずに、壁の方へ向かって行っている。
もしかして、俺は見殺しか?!
そうこうしていると、優男がまた拳を振り上げてやがる。
とりあえず俺は後ろに飛んで距離をとる。
「くそっ!!どうやって、勝てば良いんだ?!」
思わず口から愚痴がこぼれた、その言葉を聞いて優男の眉間にさらにスジが浮かぶ。
「貴様!!この僕の前で、『糞』などという言葉を使いやがってぇぇぇえ!!」
って、ええぇぇ?!これって禁止ワードかよ!!
こういうのは先に言ってくれ、頼む!!
そのとき、ある考えが浮かぶ。優男は美しい物が大好きで、美しくない物は大嫌い。
俺の感が正しければ、こいつは自己愛者いわゆるナルシストって奴だ。
なら、自分が美しくないと気がすまないはずだ!!
「落ち着いて!!せっかくの顔が台無しになりますよ!!」
「なに?!」
優男は驚きの声を上げた。そして、急いで手鏡を取り出した。
「ホントだ・・。この僕が美しくなくなってる!!ダメだ、ダメだ!!急いで直さなければ!!」
どうやら俺の読みは当たった見たいだ。
優男は手鏡の前でセットを直し始めてやがる。
個人的にはセットの前に、ファッションセンスって奴を治すべきだと思うぜ。
さて、この隙に一旦逃げるねぇと今の俺らじゃ倒せない。
俺はとりあえず壁に寄りかかってる姫香の元へ走っていった。
距離的には、そこそこあったがどうにか優男が追ってくる前に追いついた。
「おい!姫香。大丈夫な・・・のか・?」
姫香を見ると、顔が青白い、しかも震えてる。
「どうしたんだ?」
心配になって聞いてみると、姫香は首を横に振ってる。
「おい!?どうしたってんだ。怖がることねぇって俺だ!お前の下僕だ!!」
そこまで言って、姫香が俺の顔を見る。
「け・・んた?」
「ああ。俺だ!!優男なら、今自分の顔をセットしなおしてる。今のうちに、一旦逃げるぞ!」
俺が叫ぶと、姫香は小さく頷いた。よし!じゃあ、今のうちに逃げるぞ!
俺は姫香の手を引いて、入ってきたドアへ向かっていこうとした。
急に腹部に激痛が走った。
そして、浮遊感。あれだ、柔道で技を食らって投げられた時のような感じだ・・・だが、これは柔道じゃない。
地面は硬い、俺は思いっきり地面に叩きつけられた。
「ぐはっ?!」
意識が飛びそうになる、だが、今回はまだ意識を暗闇に落とすわけにはいかない。
俺が前を見ると、あの優男が立っている。
「貴様。お嬢様の手に触れるとは一体どういうことだ?」
優男は俺を睨みながら言う。優男の後ろを見てみると、姫香がまた壁に寄りかかってる。
やっと、俺にも理解できた。どうやら、俺は優男に殴られ吹っ飛んだみたいだ。
しかし、こいつ優男のくせに能力が異常すぎる・・・。さすがは、四天王って事か・・・
「おい、答えろ。何故触った?」
そろそろ答えなきゃやばそうな気がして、俺は答える。
「簡単な話だ。あいつを連れてここから逃げるためだ」
「何を言っている、ここから逃げたければ僕を倒せ、そうしなければ逃げられないぞ」
「何言ってる。別にこの独房から脱出するわけじゃない、お前から逃げるだけだ。それなら、逃げられるだろ?」
俺は優男と話しながら、姫香に必死に逃げろとジェスチャーを送っていた。
だが、姫香は首を横に振るばかり・・・。
くそ!これじゃ、どっちも逃げられねーぞ!!
俺は前より大げさなジェスチャーを姫香に送った、しかし、姫香は動かない。
「まあ、そんなことはどうでもいいんだ。お嬢様を汚したことには変わりない、消え去れ。」
優男はそう言って拳を振り上げる。
やべぇ・・・体がうごかねー・・・はは・・・。
俺はあきらめて目をつぶった、ビュっと空を裂く音がしたが拳は俺に当たらなかった。
俺の前に、姫香が立ち下がったからだ。
「おい!!姫香!なんで、逃げなかった!!?」
目の前に立ちふさがる姫香に叫ぶ。すると姫香は俺のほうを向いて言う。
「主人を下僕が守るなら。主人も下僕を守らないといけない」
震えながら姫香は言う。
どこまでも、正直じゃない奴だ・・・・。
俺を守ってくれるって言ってるんだろう、回りくどい言い方しなくてもいいのにな。
そう思うと俺は何故だか笑ってしまった。決してバカにした笑いじゃない、なんとゆうか温かい何かを感じたんだ。こんな状況なんだがな・・・。
俺はその温かみのおかげでどうにか立ち上がろうと試みる。
「立たなくて良い!!!」
姫香はそれを止めようと叫ぶが、俺は聞かず立ち上がる。そして、姫香の肩を持って後ろに引き寄せる。
「女に守られるのは、悪いが俺のプライドが許さない。ってことで、お姫様は後ろに座ってろ」
そう言って、姫香を軽く押す。しかし、そのわずかな力でも姫香はしりもちをついた。
足が震えて力が入ってなかったんだろう。
「よし、俺も決めたよ。やれるところまでとことんやってやる!!」
そう言って優男に宣戦布告しようと、顔を上げたら・・・。
優男が泣いてる?!
「うう・・・・美しい・・・。互いが、互いを思いやる姿・・・ああ・・・なんて美しい・・・うう・・・・」
俺は空いた口がふさがらない・・・。
「うう。間違っていた、僕は間違っていたんだ!!美しくない物は消し去るんじゃない!!磨いても美しい物にすれば良いんだ!!そうだ!そうなんだぁぁあぁぁぁぁ!!!!」
勝手に納得して、勝手に絶叫を始める、優男。
そして、服のポッケからドアの鍵を取り出した。
「さぁ・・・君達にコレを授けるよ・・・」
そう言って優男はおれに鍵を渡す。そして、地面に崩れ落ちる。
「え?あの?え?えええ???!」
とりあえず、状況が分からない。誰か説明してくれ・・・・。
俺がうろたえていると、姫香は立ち上がり俺から鍵を奪い取る。
「儲け物。さあ、早く行くぞ。」
そう言って姫香は俺を置いて歩いていこうとする。
って、お前はさっきまでのあの会話は恥かしくないのか!?
ちょ!なんだよ!!俺だけかよ?恥かしいのは俺だけかよ!!ねぇ!!?
そのとき、姫香が何かをポツリと言った。
「ちょっと・・・かっこよかった・・・ゾ・・・」
うーん。全然聞こえない・・・・・・。
まあ、良いか。聞こえなくちゃいけないことなら、あいつは俺の目の前で言うだろう。
できることなら、そのときに少し音量を考えてほしいもんだね。
さて、俺もあいつの後を・・・・
「チョット待って下さい!!」優男が叫んだ。
「なんだ、今更鍵を返せなんて事は聞かないからな・・・」
俺は振り向きながら言った。
「僕に君達の手助けをさせてくれ!!!」
優男が土下座をしながら叫んでやがる。
「頼む。君達の美しき絆を守りたいんだ。頼む!!」
何度も、『頼む』と繰り返すシュウに俺は言った。
「じゃあ、一つ言う事を聞け。ちょっとこっちに来い」
俺は手招きをする。すると、シュウはすぐに俺の前に来る。
そして、シュウをしゃがませ、俺もしゃがみ、姫かに聞こえないように細心の注意を払って言った。
「あいつに謝れ」
シュウは「はい?」と聞き返す。
「だから、あいつはお前を見て、怯えていたんだ。酷い事をしたんじゃねーのか?だったら、あいつに謝れ。そうしたら仲間に入れてやる」
なんで、こんな事を言うかって?
さっき怯えていた姫香がなんだか可愛そうだったからってのは内緒だ。
それに、どっちにしろ姫香がこいつを怖がるのであれば仲間にしても意味がないしな。
シュウは少し考えるしぐさをして、すっと立ち上がった。
「分かったよ。彼女に謝ってくる」
シュウは優雅な動きで姫香のもとへ向かっていく。
そうそう。きちんと謝ってこいよ。
俺も立ち上がり、シュウがどうやって謝るか見ることにする。
まずは、地面に手をつきお決まりの謝罪のポーズ。
そして、頭を下げて、謝罪をする。
「お嬢様!!あなたの嫌いなおからを無理やり食べさせようとして、申し訳ございませんでした!!!!!!」
そうそう・・・・嫌いなおからを食べさせ・・・って・・・。
「もしかして、お前がした酷いことってそれだけ!!!?」
シュウは俺の叫びを聞いて、立ち上がり、『はい』と答えた。
「なんだよ!!そんなわけないだろ!!?なぁ!!姫香・・・・?」
姫香を見る・・・震えてる、顔も青白い・・・・。
さっきと同じ症状が出てる。あれ、もしかしてご名答なのか?
「おい、姫香・・・。まさか、本当に“おから”が嫌いって事はないよ・・な?」
そっと小さく、ささやくように、姫香の近くで聞いてみた・・・ら・・・。
「黙れぇぇぇえぇえぇぇぇぇ!!!!!」
絶叫とともに、顔面にパンチを食らった。
俺はお約束のように地面に叩きつけられる。
「げはっ・・・。」
するとシュウが姫香に歩み寄っていき、言う。
「ダメですよ!!お嬢さまがそんな言葉遣いをしては!!もっと上品に!!もっと華麗に!!もっと美しく!!!!」
「黙れぇえぇぇぇえぇぇぇ!!!!」
シュウも俺と同じように殴られ空中を舞う。
そして、俺の隣に叩きつけられる。
「ぐふぅ・・・。美しい・・・お嬢様のパンチの軌道いつ見ても美しい・・・・がはっ」
最後まで美しさについて語ってシュウは散った。
しかし、反応を見る限り・・・・本当に苦手なようだ・・・・。
「いやだ!おから、なんて!!!いやぁぁぁあぁぁぁぁ!!!あんなごわごわして、もふもふして、食感がなんだか変で!!何より味!!あの味が嫌!!!」
姫香は一心不乱に動き回り、絶叫する。広い部屋の中に姫香の絶叫がこだましていた。
そこで、俺はある事を思い出す。
それは今日の朝食。俺は確か何故だか冷蔵庫に入っていたおからを使って、ケーキを作った。だが、姫香は普通に喜んで(『まずい』と繰り返していたが)食べてたはずだが・・・?
俺は起き上がり、暴れまわる姫香の近くに行って、今日は朝おからを食べた事を教えた。
やっぱり・・・・・殴られた。
いや、実際はパンチではないかもしれん。ただ、コンボが早すぎて俺の目にはまったく映らなかったのだ。
また地面に叩きつけられる。
「いやああぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁあ!!!!!!!!!!」
姫香は絶叫しながら、次の部屋へ繋がるドアの鍵を開け、飛び出していった。
なんだ、鍵を使ったりはできるのか。何にもできないお姫様かと思っていたから安心したよ。
って、早くあいつを追いかけないと!
俺はすばやく起き上がり、先を走っていった姫香の後を追いかけていく。
ちなみに、シュウは・・・・復活して俺の隣をぴったり同じ速度で走ってやがる。
「てめぇはあそこでやられたんじゃないのかよ?」
隣を走るダサダサ優男に問いかける。
「ははは。美しい物はいつでも復活するのさぁ!そう、この僕のように!!!」
立ち止まって、クルンと回転して、決めポーズをするシュウ。
ちなみに、俺はこいつのきめポーズを見てすぐ走り出していた。
おいていこうがかまわん。こんな変な奴を何故仲間にしたのだろうか・・・・・・。
今更になってちょっと後悔だ。
最初は見えてなかった姫香の背中がだんだんと見えてきて、やっと追いついた。
そこで俺は姫香にある質問をする。
「ところで、姫香。何故お前はあいつが切れた時、あんなに怯えていたんだ?」
「だって、昔の事を思い出したから・・・・。」
「昔のこと?」
「あいつに“おから”を無理やり食べさせられた記憶。そのときもあいつはさっきみたいにキレてて、フラッシュバックみたいなのがおきたか・・ら。」
「そうかい・・・。」
「でも・・・ああ!!口にしてしまった!!口にしてしまった!!あの食べ物の事を!いや、あれはきっと食べ物じゃないんだ!呪いの道具なんだ!!」
俺はそう言って自分に自己暗示をかける姫香を見て、隣でやれやれと首を振った。
そういえば、なんで優男の部屋に鏡があんなにあったんだろうか?
まあ・・・・大方予想はつくがな・・・・・。
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