第3話 命令はなるべく簡単に
さて・・・現在俺はあの古風な石でできた独房から脱出し、良く分からないまま、壁から地面まですべてが石でできた通路を姫香と歩いている。
呼び方が変わっている事については、今から始める回想内で説明させていただく。
ってことで、回想開始。
「じゃあ、ついてこい。」
柊はそう言って、歩き始める。
ま、このときはまだ柊と呼んでいたんでそのまま言わせて貰う。
俺も『協力する』と言った以上、ついていかなくてはいけないので前を歩く柊の後をついていった。
石でできた壁の前まで歩くと柊が急に振り返った。
「のわ?!」
あまりに急だったもんだから俺は思わず声を出してしまう。
そして、柊は俺の顔を見ながら初めての命令を言った。
「この先は私の事を『姫香』と呼ぶようにしろ。」
どこのギャルゲだと、一瞬だけ俺は思った。
だって、あってすぐの人間に名前を呼ぶように言うのは、ギャルゲの中だけだろ?
しかも、好感度は高くないと起きないイベントだ。
まあ、こいつのことだから百歩譲ってもそんなことはないんだろうな・・・。
考え込んでる俺を無視して姫香は前を向きなおす。
そして、石の隙間に手を入れ込んだ。すると、石が簡単に、ブロックを外すかのように外れた。
「な?こんな簡単に開くもんなのか」
目の前でせっせと石を外す姫香を眺めながら俺は聞いてみる。
数秒経過・・・・。どうやら、俺のことは無視らしい。
石を外し終え、姫香がこっちを向いていった。
「じゃあ、行くぞ。」
「へいへい。ついていきますよー。」
俺は適当に返事して姫香の後をついて行った。
で、回想は終わりで冒頭に戻る。
さて、あの古風の独房を脱出してどのくらいがたったのやら・・・。
俺と姫香は冒頭で言った通路を二人並んで歩いている。
どうやら、姫香はこの場所について異常なまでに詳しいようだった。
この辺は、先の石をはずして見せたあたりで分かると思う。
沈黙に耐えられなくなって、俺は前をずんずんと進んでいく姫香に話しかける。
「おーい。で、今これはどこに向かってるわけ?」
「今は、ここを管理している組の組長の所に向かってる。」
今回は無視されなかったか・・・だが、おかしな言葉が聞こえたのは気のせいか?組長とか組とか組長のいる場所とか
「そして、その組長のいる場所まで行くためには、ちょっと私だけじゃ力不足だった。」
なるほどね。それで、俺を協力者兼奴隷か下僕で連れてきたわけか・・・。
そのとき、前の方から人の足音が聞こえた。
「ちっ」
姫香が立ち止まって舌打ちをする、大方俺達が脱獄したのがばれたんだろうな・・・。
「おい。どうするんだ?」
立ち止まった姫香に話しかける。
「おい?きいてんのか。」
反応を示さない姫香にもう一度話しかける。
ん?何か取り出したぞ・・・・。
「はい。じゃあ、二回目の命令。これで、あいつらを撃退しろ。」
そう言って、俺に渡すのは・・・・拳銃?え?
「って、ええぇぇぇぇえ?!ちょ?!これでどうやって撃退するってんだ!?」
俺は初めて渡された、この黒光りする拳銃を持ってあたふたする。
「簡単。それで、あいつらをパンパンって殺っちゃえ。」
あわてる俺に姫香は平坦に命令した。
おいおいおい、俺はこの歳で殺人犯か?そんなのは嫌だぜ・・・。
「大丈夫。正当防衛が成立するはず。」
俺の顔に言いたいことが書いていたのか姫香は説明する。
「いや、でもな・・。それはそれで・・な?」
俺はとにかく拳銃を使いたくなかったから、姫香を説得しようと話す。
すると、姫香は大きなため息を一つついていった。
「もういい。私が、やる。」
え?、と俺は思わず声に出した。
「お前がやるって、どういうことだ?!」
俺が言ってる言葉も聞かず前から走ってくる顔の怖いおじさん達に銃口を向けている。
「え・・・。もしかして・・・?」
止めようとした瞬間、パンパンと銃声が響き渡った。
その銃声の後に遅れて男性の叫び声が聞こえてくる・・・。
っていうか、こんな華奢な体の女の子に銃なんて撃てるのか?
肩が外れそうになるとか聞いたことあるぞ?
しかも、良く見たら・・・・持ち方がプロだ・・・。
こいつ・・・慣れてやがる・・・。
「殺しちゃったのか・・・?」
俺は目の前の状況に驚きながら、恐る恐る聞いてみる。
「ふん。私がそんなへまをするわけない。」
そう言って、さっき撃った奴らを指差す。
「あ、ほんとだ・・・・」
見てみると抑えているのは手足や肩だ。
『へま』とか言ってるあたりこいつは本当に慣れてやがると確信がもてた。
「ほんとに役に立たない下僕だ・・。まあ、良い。さっさと行く」
そう言って姫香は歩き出す、俺もその後を金魚の糞のようについて行く。
さっきの場所から少し走って、周りが静かになったところで聞いた。
「ところで、組長の居る所に向かってるって何でなんだ・・・?」
まあ、俺が聞くのも無理はないと思う。
そもそも、これだけ詳しくて組長の居場所まで知ってるんだから、そんな場所に行かなくても逃げ切れるはずだ。
にもかかわらず行くんだから、それなりに理由があると踏んだわけだ。
「一言。そいつに、一言、言いたい・・・・。」
さっきまでと比べるとかなり弱々しい声で言って姫香はうつむいた。
「そうなのか・・・。」
きっと、こいつは何か抱えてるんだろうな・・・。
そんな風に少しシリアスムードになっていたのに・・・。
「そして、手足を縛って・・・ふふふ・・ふふふふふふふふふふ」
なんて、空気が読めない奴だ・・・。
少しでも心配した俺が馬鹿だった。
「ま、いいか・・。」
俺はため息を交えて一言言った。
それから、少しだけ歩くと周りと雰囲気が少し違うドアの前に着いた。
「なんだ、ここは?」
「ここは組長の居場所まで繋がる通路の間にある、四天王の部屋。」
独り言のつもりで言ったのだが、姫香が様相外に答えてくれた。
しかし、四天王?どこぞのリーグかよ、ここは?
「四天王に勝てないと、組長のいる場所までたどり着けない。」
姫香が説明するが、俺はあほらしくて頭に手を当ててる・・・。
「こいつらに勝つのは私だけじゃ無理・・・じゃないけど、めんどくさいから協力者がほしかった。」
なるほど、まったくお前らしい言い方だな、どうせ本当は一人で挑むのが不安だったとかだろ?ははっ。
俺は普段偉そうな姫香の唯一の弱みを見つけた気がして、心の中でけなしたら・・・・顔面を思いっきり殴られた・・・。
「いてぇ!?なにしやがる!!?」
姫香を睨みつけながら言うと、姫香は「お前がまた変な事を考えていたからだ。」
どうしてそこまで俺が考えてることが分かる?、とのどまででかかったが
ここでそういうと変な事を考えていたと認めてしまうことになる。
そうなればさらに拳の連打をくらいそうだ。
「で・・・何故、お前はドアを開けて中に入らないんだ・・・?」
俺は起き上がりながら、話を変えるつもりで疑問に思った事を聞いてみた。
すると姫香は無言でドアノブを指差し、一言命令。
「お前があけろ。それくらいは、できるだろ?」
なるほどな・・・・。俺はなんか釈然としなかったが、ドアを開けた。
不本意だがその先に待っている四天王とやらと戦うために・・・・。
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