最終話? お姫様との大脱出 完了!
数々のアホくさい四天王達との死闘のすえ、俺たちは最後の部屋へたどり着いていた。
目の前には今までとはまったく違う、馬鹿でかい、豪勢なドアがある。
うわーぉ。ドアノブまでなんだか金ぴかなんですけどっ?!
「もしかして、というか確実にここが組長の部屋だよな?」
「そう、早く入るぞ。開けろ」
姫香は腕を組んで偉そうに、鼻を鳴らしてあごでドアノブを指す。
ここまで付き合っていると、さすがに命令形にも慣れてくるわけで・・・。
ああ、なれって恐ろしい・・・。
俺は言われたとおりにドアを開けた。
そこには、広い通路があって、その奥に偉そうなおじさんが座っていた。
あ、ご丁寧に三角ポットみたいなのに『組長』って書いて立ててるよ・・。
そんな中を姫香はまったくの躊躇もなしに歩いていく。
手は出されないだろうなー、とかびくびくしながら俺も後をついて行く。
そして、姫香は組長の前まで言って・・・・
思いっきり、胸倉を掴み上げた。
「ええ?! ちょ! 姫香!! やめろ!! おい?!!」
急いで、やめさせようとするが、姫香はやめない。
少しして、姫香が口を開いた。
「あんたのせいで・・・・お母さんが苦労してるのが分からないの? お父さん!!」
え? 今、なんて? え? オトウサン? お父さん?? 緒等さん?!
あ、そうか。組長の名前は緒等さんかぁー
って・・・・・・・。
「ええぇぇぇ?! マジで?!」
とりあえず、叫んでみることにした。
まあ、これですべて辻褄が合う、こいつがこの施設に詳しかったのも、『お嬢様』と呼ばれていたことも・・・。
すると胸倉を掴まれていた、組長さんが口を開いた。
「ふん。あいつが苦しもうが知ったことか・・・。」
その言葉を聞いて、姫香の顔が引きつる。
「あんたねぇ!! お母さんの事をなんとも思ってないわけ?!!」
姫香が必死に叫んでいる、っていうか、こいつは普段こんなしゃべり方なのか・・・・。
まあ、しかし。この二人を見てみる限り、あいつは自分でこの場所に忍び込んだんだろうね・・・・。
そして、あの組長さんに文句を良いに来たわけか・・・まったく、家族思いの良い奴だよ・・・。
そのとき、胸倉を掴んでいたはずの姫香の体が飛んだ。
「んな?!」
俺は思わず、手を出してその体を受け止める。その体は見た目どおりとても軽かった。
「おい! 大丈夫か?!」
とりあえず受け止めた姫香に目をやった。
泣いていた、わずかな時間でも分かるほどの、高飛車で偉そうで、絶対に人前じゃ泣きそうにない姫香が泣いていた。
そのとき、俺は何故か少し頭が熱くなるのを感じた。
そして、姫香を投げた奴を睨んだ、そいつは平然と言い放った。
「私に娘なんて居ない。私がほしかったのは娘なんかじゃない、息子だ。」
目の前で泣きじゃくる娘に『いらない』と言い放った。
その瞬間俺は我を忘れて、目の前の馬鹿な親に殴りかかろうとしていた。
しかし、その手は届かず馬鹿な親に止められた。
「私に殴りかかろうとするとは良い度胸じゃないか・・・。」
そう言って、俺を殴り飛ばした。
やっぱり普通の高校生と組長じゃ踏んだ場数が違うか・・
だけど、コレだけは言わないと気がすまない!!
「今から言うことをよく聞け! この馬鹿野郎!!」
そう言って、目の前に居る組長を指差す。
「娘が良いとか、息子が良いとか。そんなくだらねぇ事をいってんじゃねぇぞ!! 自分の子供だろうが!! 貰った命を大切にしやがれ!!」
「ふん。偉そうに言ったところでお前は売られたんだぞ?」
「ああ。そうかもしれねぇな! でもな、俺は今でもまだあの馬鹿両親を信じてる!!」
宣言した。ああ、俺は確かにあの馬鹿両親を一度怨んだが、まだ信じている。
きっと、すぐ来てくれるとな。まあ、でも今回は先に逃げさせてもらうけど
「だからなぁ・・・こんなくだらねぇ事で、娘を泣かすんじゃねーよ!!」
俺は目の前の馬鹿野郎に言い放った。
「私の啖呵を切るとは…。私とやりあおうってことか?」
な?! なんで、そうなるんだ?!
「私にあれだけ言ったんだ。その覚悟を見せてもらう・・!」
「え!? あ、いや! その!!」
俺はパニくって口がうまくまわらない。
「ほら、これを使え。」
そういって組長が投げ渡し、地面に突き刺さるのは……日本刀。
わっつ?!!?
「それを使って、私と殺り合おうじゃないか……」
ええ??!! ちょ! その『殺り』は『戦り』の間違いじゃないですかぁーーー!!?
それに、組長と普通の高校生が戦ってどっちが勝つかわかるじゃん。
分かりきってるじゃん!!!
一瞬俺の頭の中に逃げるという考えが浮かぶ…。
しかし、それと同時に姫香の泣き顔が浮かぶ……。
まあ・・俺の脱出には組長倒さなきゃいけないんだよな・・・。
しゃあねぇ! やってやるぜ!!
俺は心の中で意気込み、目の前に突き刺さっている日本刀を引き抜いた。
「よし。ルールは簡単だ、私かお前どっちかが倒れるまでやり続ける、いいな?」
「やってやろうじゃねぇか……。」
俺は組長をにらみながらカッコをつけて言うが・・実際はガクブルニャーニャー状態だ。
しかし、隣で泣きじゃくっている姫香を見ると、不思議とその気持ちも消えていった・・。
そのとき、視界の端にたはずの組長の姿が消える。
「なっ・・・?!?!」
どこ行った?! 俺はすばやく周りを見渡す。
すると俺の死角から声がする。
「この程度で私を見失ったか・・・?」
声のした方を見る、いない。
「やはり、口だけの男だったか・・・・。」
くっ・・・。どこだ? どこにいやがる!!
いくら周りを見ても組長の姿を捉えられない。
「この程度の男じゃ、姫香は守れんなぁ・・・」
くそ! くそ!! どこだ?! どこに居るんだ!!?
そのとき、泣きじゃくっていたはずの姫香が叫んだ。
「健太! 落ち着け! そうすれば、そうすれば・・きっと見えるはずだ!」
そういった後姫香はまた、顔をうつむける。
姫香・・・。自分は泣いていても、俺を心配するのか・・・。
あい、分かった。お前はそこでゆっくり泣いていろ! その間に俺がこの馬鹿野朗をぶっ潰す!
俺はゆっくり目を閉じるそして、周りの空気に全神経を向ける。
「・・・・何かが変わった・・・?」
組長の驚く声が聞こえる。
よし・・・もっとだ・・・もっと神経を研ぎ澄ませ。
「これ以上時間を与えると面倒なことになりそうだ……。けりをつけさせてもらう!」
組長が言った瞬間、ひゅっと空を裂くような音が聞こえる。
俺は目を開き、音がしたその場所へ刀を置いた。
ガキィン
金属と金属のぶつかる音が部屋中に響き渡る。
目の前には組長の姿がある。
「やっと捕まえたぜ? 馬鹿野朗。」
「捕らえたことは、評価するが……ここからどうする気だ?」
組長は俺の刀を吹き飛ばそうと全力をこめて刀を押し上げようとしている。
しかし、そこに意識を集中させすぎているのか、足元がおろそかだぜ?
俺はすばやくしゃがみ、足払いをかける。
「なっ!!?」
組長は、驚きの声を上げて、後ろに倒れていく。
俺はその瞬間を見逃さず。倒れていく組長の握る日本刀を狙って、フルスイングした。
またも金属同士のぶつかる音が響く。そして、組長の持っていた日本刀は俺の右方へ飛んでいく。
「はぁ…はぁ…チェックメイトだ……」
俺は尻餅をついている組長を見下ろしながら言った。
「ふん……どっちかが倒れるまでだぞ?」
「何言ってんだ・・・。もう既にあんたが倒れてるだろうが・・・。」
俺はちょっとあきれて組長に言った。
「何がだ・・・。私が言った『倒れる』はどちらかがおきなくなるまでだ。」
組長は尻をはたきながら、立ち上がる。しかし、どうみてもふらふらだ。
もう年なんじゃないんだろうか・・・?
「そうかい。でも、悪い。これ以上やると、お姫様に俺が殺されかけない。」
「お姫様だと? そんな奴の前に私がお前を殺すぞ?」
そういって組長は拳を握る。
「分かった分かった。じゃあ、おきなくなるまでな。」
俺は日本刀を投げ捨てる。そして、拳を握る。
「どういうつもりだ?」
「何、あんたに大怪我させないための配慮と俺の命のための配慮をしただけだ。」
そういって俺は姫香のほうを見る。
「で、お姫様。俺はこいつをどうすりゃいいんだ?」
うつむいていた姫香は顔を上げ、そして、涙をふき取り。
人差し指を立て、俺に命令した。
「下僕……いや……坂元健太。私の最後の命令だ!」
「なんなりと。」
「そいつをぶん殴れ!!!」
俺はその命令と同時に、拳を突き出した。
組長もあわてて拳を突き出すが、俺のほほを少しかすめ空を裂いた。
「ぐはっ!!!」
うめき声を上げて、組長は俺の体へ倒れ掛かる、そして、一言言った。
「私の娘を頼んだ・・ぞ」
そういって動かなくなった。
いやいや、本当にもう・・・。
その負けず嫌い、意地っ張り、あんたはまさしく姫香の親父だよ・・・。
俺は組長をゆっくり床に倒し、姫香の元へ歩いていく。
「さて。脱出するか?」
俺は姫香に笑いかける。
「ふん。当たり前だ、さっさと行く。」
あいよ・・じゃあ、行こうじゃないか・・・。
そのとき、この部屋のドアが勢い良く開かれる。
振り返ると・・・そこには顔の怖いおじさんたちが大勢・・・。
も………もしかして。
「貴様!! 逃がさんぞ!!」
「組長によくもぉ!!!!」
怒声が部屋中に響き渡る。
そして、顔の怖いおじさんたちが俺のほうへ向かってくるじゃないか!
「おいおいおい。最後の、最後までこれかよ・・・・?」
俺はあきれたような声を漏らす。
「ふん。いいじゃないか、ラストくらい派手に行こう」
いや、俺の記憶が正しければラストどころか最初から派手だったような・・・。
「はぁ・・・」
ため息をついて俺はうつむく。
そのとき、姫香の綺麗な黒髪がなびいて、俺の横を通り抜ける。
俺が顔を上げると姫香が笑顔で俺に手を差し伸べている。
「さぁ! 脱出しよっ!!」
俺は正直驚いた。今までずっと仏頂面で、笑った顔なんてほとんど見せてなかった姫香が笑顔になっていることに。
一瞬、見とれてしまった・・・。
「ああ!」
答えて姫香の手を握る。そして、その手を引いて走り出す。
間一髪のところでおじさんたちの手を避けて、俺達は走っていく。
そう、このドアを出れば脱出完了だ!
俺は勢い良くドアを開けて、外に飛び出したのだった。
これで、俺とお姫様の大脱出は終わりを告げた。
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