第11話 半裸って、上半身裸のほうなのか下半身の方かどっちだろう
えー現在の俺は身動きが取れない。
理由は簡単だ。石の杭によって服を壁に貼り付けられているからだ。
どうやったかって?悪いがそれを説明するのは難しいんで省略させてもらう。
というわけで、こんな状況のため、俺は適当に解説をやらせてもらう。
そして、今。
ゴスロリ超能力少女と猪突猛進・自己中心少女の二人の戦いの火蓋が切っておろされる。
では、バトル解説開始。
向かい合っていた二人は、超ダッシュで一気に間合いを縮める。
リサの方は超能力だろうからあまり驚かんが。
姫香・・・・お前は生身のはずだろ・・・・?
何故、超能力者とほぼ同じ動きができるよ、おい。
っと、こんなことを言ってる間に二人は一気に縮めた間合いを開く。
何が起きた・・・・?
「あらあら。お嬢様、どうしたのかしら?」
「はっ! お前の方こそいきなり間合いを空けるのはどういうこと?」
二人はにらみ合ってなにやら言葉の応酬を繰り返してる。
俺は位置が悪いため声はよく聞こえない。
すると、リサがゆっくり手を上げる。
来る! リサの超能力が来る!!
姫香もわかったらしくすばやく右に飛ぶ。
姫香の立っていた場所が勢い良くへこむ。
そう。これがリサの超能力だ。
原理はわからないが、とにかく、こいつが手をかざした場所には何か特別な力が働くのだ。
「上手く逃げるじゃない。」
「しゃべっていたら、舌を噛む」
リサが姫香に何かをつぶやいたとき、姫香のアッパーがリサの顎へヒットする。
不意を突かれたのかリサは勢い良く空中に浮きあがる。
丸太を振り回すほどのバカ力を持つ女のアッパーを顎に喰らうのか・・・。
下手すりゃ死ぬんじゃねぇ・・・・・?
そして、宙を舞うリサだが、さすがは超能力者。
地面にはぶつからず、4〜5メートルの高さを保って浮き上がる。
「危ない。もう少しで、気を失うところだったわ」
「チッ!」
しかし・・・・。
こうやって、この二人の非現実バトルを見ていると
俺がつい数日前まで過ごしていた、あの平凡な日常が嘘のようだぜ・・・。
ああ・・・あの頃が懐かしい・・・。
目をつぶればあの平凡で平和な日々がよみがえって・・・・。
そうやって目をつぶった俺の顔の横に何かが突き刺さり、すごい音をたてる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「な・・・・なんだ?!」
ワンテンポ遅れて、大声を出す。
何が、起きた・・・?
恐る恐る、横を見てみると、俺の服を壁に貼り付けてる石の杭と同じようなものが突き刺さってる。
「おい! 大丈夫か?!」
姫香が走り寄ってくる。
「あ・・・あの・・。姫香さん・・・これはいったい何が・・・・?」
「私が避けたものがお前の隣にささった。すまん。」
おいおいおい。下手すれば俺の顔面に大きな穴が開いてたぞ?!
「お嬢様。背中がお留守ですよ?」
姫香の背後に、リサが現れ不気味な笑顔を浮かべて手をかざす。
「姫香!! よけろ!!!」
俺は目の前に立つ姫香に叫ぶ。しかし、姫香は動こうしない。
そして、姫香の体が右方向へ吹き飛んだ。
「ぐっ! がぁ?!」
姫香がうめき声を上げて転がっていく。
「あらあら。お嬢様だからよけれると思ったのに・・・・」
リサは不思議そうに首をかしげる。
「おい!! 姫香!! 大丈夫か?! っていうか、何でよけなかった?!」
俺は地面に転がる姫香へ叫ぶ。
姫香はゆっくり立ち上がって、一言言った。
「バカ・・・・。私がよけたら・・・健太に当たるだろ?」
確かに、あの状況で姫香が避けていれば俺にあの謎の衝撃波が直撃してた。
すると、リサが俺の前に降り立つ。
「その男がそんなに大切なんですね・・・。」
リサは少し呆れたような顔をして、また無表情に戻り、にやりと不気味に笑って。
「じゃあ、こんなことすればどうかしらぁ?」
え? ちょ! 待て!! 何するきだ?!俺のほうに手を向けて!
「ぐがぁは!!」
おいおいおいおい。なんだ、この威力は・・・・俺は普通の高校生なんだ・・こんな痛みに耐えられるわけないじゃないか・・・。
「げほげほ・・・げぇえぇ」
咳き込み、胃からの逆流物で口の中には苦い味が広がる。
ゆっくり顔を上げる。そこには、まだリサがたっていて俺のほうへ手のひらを向けている。
ちょっと待て・・・。おい、やめろ・・・。
「やめろ!!」
俺は思わず泣きそうになり情けない叫び声をあげる。
しかし、リサは不気味に笑って。
「いやよ」
「うぐぅ・・・・。」
またしても体中にいろいろな衝撃と痛みが走る。
「ほらほら。お嬢様。あなたの大切な人が傷ついているけどいいのかしら?」
姫香はふらふらした足取りを元に戻し一気にリサとの間合いをつめる。
「や・め・ろぉぉおぉぉぉぉおぉぉ!!!!!」
飛びそうになる意識の中で姫香の叫び声が聞こえた。
姫香の叫び声を聞いて、飛びそうだった意識は正常になる。
そういえば、こいつも俺と同じ攻撃を受けてるんだ。
でも、あれだけ。あれだけ激しい蹴りをリサに繰り出すとは・・・・。
不意を突かれたらしく、見事に姫香の蹴りがリサの顔面にヒットする。
「きゃぁあ!」
叫び声をあげてリサは俺の前から横方向へ吹き飛ぶ。
「はぁ・・はぁ・・。大丈夫?」
姫香は息切れをしながら聞いてくる。
「お前こそ大丈夫か?」
俺から見れば姫香も十分大丈夫には見えないぞ・・・。
「私はいい。とにかく、お前はそこから動け。」
「無理だ。悪いがこれはずしてくれ」
そういって、俺は服を止めている石の杭をあごでさす。
「しょうがない。今回だけだ。」
姫香はそういって石の杭の取り外しに取り掛かってくれる。
ん・・・。そういえば、リサはどこへ行った?
周りを見てみる。前右方向に、空中に浮いて顔に手を当ててる・・・。
何かつぶやいてる?
「くそ・・・私の顔を蹴った・・・。許さない・・・顔蹴った」
やばい・・・確信はないが絶対にやばい!
「姫香急げ! リサの様子がおかしい!!」
必死に杭をはずそうとしている姫香をせかす。
「うるさい! これ異常に硬いんだ!!」
「許さない!」
リサが叫び声をあげた。
その瞬間。リサの周りにすごい風が起きる。
「な・・・?」
俺も姫香も目を丸くする。
「お前らは許さないわ・・・・。私の最強の技で死になさい!」
リサは両手を振り上げる。
すると、リサの上空になにやら黒い球体が表れる。
おいおいおい。何をする気だ・・・?
「私の最強の技“黒鉄球”。喰らったものは一瞬でぺちゃんこよ・・うふふふ」
リサがわざわざ説明してくれた。ご丁寧にどうも。
とか、言ってる場合じゃねぇ!!
「おい! 姫香どうする?!」
「うろたえるな! 私がどうにかする。お前はここで待ってろ!!」
姫香は俺に怒鳴りつけてリサに向かっていく。
やばい。早くあいつを止めないと!
だが、どうやって・・・・。ん?
そうだ! この手がある!!
俺は全身に力を入れて前に飛び出した。
数秒後、俺はリサに向かっていた姫香を止めることに成功した。
「やめろ! 俺は脱出できた!!」
「な? どうやって? ってお前!! なんて格好をしてる?!」
その言葉を聞いて、空中に居たリサもこっちを見る。
「何を言ってるのか・・・きゃああ!!」
おいおい。そんな悲鳴を上げるな。
それだと俺がまるで変態じゃないか。
「何を言ってる!? どこの世界にいきなり半裸になる男がいる?!?」
そう。姫香の言うとおり俺の今の格好は半裸である。
さっきまで着ていた服は俺が貼り付けられていた場所に張り付いたままである。
「しょうがないだろ! こうしないとお前を助けられなかったんだから!!」
この微妙な空気を打破するため俺は姫香に言った。
すると姫香の顔が赤くなる。
「え・・・私を助け・・」
ふと宙を見るとリサがふらふらと動いて落下した。
なにぃ?!!?
俺は、落下してくるリサの真下へダッシュした。
やばい、間に合わない?!
くそ! 一か八か!! とりゃぁああぁぁあぁ!!!!!
俺は落下予想地点へヘッドスライディング!!
ナイスキャッチ。
俺はどうにか落下してくるリサのキャッチに成功した。
うわーこいつ・・・びっくりするくらい軽いなぁ・・・。
するとリサはゆっくりと目を開いた。
「あ・・・え・・・?」
「大丈夫か?」
どうやらまだ良くわかってない様子だ・・・。
「お前は、ほらさっきあの高さから・・・・」
言いながら上を見た。あれ・・・?なんだか、“黒鉄球”落下してきてないか?
「早く逃げないと、つぶれちゃうわよ・・・?」
っておおーーーいいい!!!!
それを早く言いやがれぇえぇ!
急いでその場から動こうとするが・・・動かない。
「あ・・・そういえば、私に触れたら大抵の人は動けなくなるんだった・・・。」
「なんだ、そのびっくり特殊能力は?!!? っていうのは、先に言え」
くそっ?!! 万事休すか?!!
「健太ぁぁあぁぁぁあぁぁ!!!」
姫香の叫び声がすごく遠くに聞こえる・・・ああ・・・なんだか走馬灯が見えてくるぜ。
いろんなことがあったよなぁ・・・。
「あはぁ〜〜。う・つ・く・すぃ〜〜〜!!!!!」
そうそうこんな風に気持ち悪い声を上げるナルシスト優男が・・・って。
「「シュウ?!」」
俺と姫香が同時に叫ぶ。
「美しいものは僕が守る。よって、あなた達はこの美しい僕が美しく守ってみせーーっる!」
声のするほうを見ると、シュウは空中をグルグルと回転しながら一気に“黒鉄球”に激突する。
すると、俺の眼前に迫っていた“黒鉄球”がどこか別の方向へ吹き飛んでいく。
そして勢い良く壁にぶつかり、“黒鉄球”は消滅する。
スタッと音を立ててシュウが俺の近くへ着地する。
そして、髪の毛を勢い良く、キザったらしくかきあげ、白い歯を光らせ一言。
「美しぃ・・・・」
うわ・・・気持ち悪い。
しかし、今回はこいつのおかげで助かったぜ・・・。
「大丈夫でしたか? あなた達に傷がついたとあれば僕はどんな後悔をしたらいいやら・・・。」
そういってクネクネ動く。
きもちわりぃ、勝手に後悔していてくれ。
おっと、忘れていた。
俺は抱きっぱなしだったリサを見てみた・・・ありゃ?
気を失ってる・・・?
「ふぅ・・・。どうやら、リサはまだまだみたいですねぇ。」
シュウはあきれたように言って、俺の腕からリサを抱き取る。
「あ、どうする気だ?」
「僕が裏切った今この子にも危険が及びかねません。ですので、少し隠れさせてもらいます。」
え?は?何言って?
「要するに、僕の美しい手助けはここまでしかできないんです。」
は?お前、俺たち守るって、ついさっき言わんかったか?!
「では、僕達は少し姿を隠させてもらいます。ではっ!」
格好良く手を上げて、シュと音を立ててシュウは俺の司会から消え去った。
え?ってことは、こっから俺たちだけで処理しろってこと?
おいおいおい・・・せっかくお助けキャラがでたってのに・・・。
まあ・・今更何言ってもだめ・・か。
しょうがねぇ・・・。
俺は諦めて姫香の座り込んでいる場所へ向かっていく。
「どうした?」
「腰が抜けた」
姫香は顔を真っ赤にして恥ずかしそうに言った。
俺はやれやれとため息を吐き、姫香に手を差し出す。
「しょうがねぇ・・・ほら、つかまれ」
「う・・・ああ。」
ばつが悪そうに姫香は言って俺の手をとるのだった。
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