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パピヨンジャープロジェクト 作者:南兎カナル
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プロローグ

小紫美羽(こむらさきみう)は、只今人気絶頂の国民的美少女アイドルである。
百万年に一人と言われる、その愛くるしいキュートなルックス。
よく声優と勘違いされるプリティーで可愛らしいラブリーなボイス。
歌って良し、踊って良し、喋って良しの正に非の打ち所のないスーパーアイドルだ。

そんな彼女は今、都内某スタジオにて生放送の音楽番組《ベストミュージックステージ》に出演していた……

全ての出演ゲストが無事歌い終わり、番組はエンディングトークに入った。
「今日も豪華なアーティストさんたちで、本当に盛り上がりましたね!」
サブ司会の女子アナウンサーが話しをふると『うんうん、そうね』とメイン司会を勤めるベテランお笑いタレントが適当な相づちを打つ。
続いて女子アナウンサーは『そうですね! 小紫美羽さん、いかがでしたか?』と今、最も注目を集めているアイドル小紫美羽に話しをふった。
観客の約半数を占める美羽のファンたちから『うぉおおおおおおっ!』と野太い歓声が上がり、ディレクターの指示に従ってスイッチャーが映像をステージの全景から美羽の上半身へと切り替える。
そして番組を映す全国のテレビの映像が、一斉に美羽のアップになったその時だった。

「へっぶしっ!」

スーパーアイドル小紫美羽は思いっきり、そして豪快にクシャミをした。
それは、とてもアイドルのものとは思えない、完全にオヤジとしか言いようのないクシャミであった。

「エヘヘヘ、ゴメンなさい……花粉症で。そうそう今日、花粉多くないですか!?」

そして彼女は動揺するわけでも取り繕うわけでもなく、無邪気な笑顔でそう言った。
するとスタジオの客席側から一斉に『うぉおおおおおおっ!』だの『可愛いぃいいいいい!』だの『結婚してくれぇええええ!』だのという歓喜の声が上がった。
彼女が国民的アイドルと言われる所以は、まさにこの飾らない天真爛漫な性格にあると言えるだろう。
その常に自然体で気さくなキャラクターは、老若男女、幅広い世代から人気を得ていた。
まあ単に見た目がもの凄く可愛いので、何をやっても許されているだけかもしれないのだが……
それに関しては偉い人の格言にも『全てにおいて可愛さが優先される』『可愛いは正義』『可愛いければ全てよし』というありがたい言葉があるとかないとか……

それはさておき、スタジオでは……

「大丈夫?今日、花粉多いよねー」
司会のベテランお笑いタレントが美羽に向かってそう言うと、会場はドっと笑いに包まれた。
そして無事番組公録は終了。それと同時に美羽は客席にいるファンと周りにいるゲストやスタッフたちに『おつかれさまでしたー!』と笑顔で挨拶しながら小走りで楽屋へと駆け込んだ。
「ティッシュはどこ!? ティッシュティッシュ!」
楽屋の鏡台に置いてあったティッシュにしがみつき、素早く鼻をかむスーパーアイドル小紫美羽……
「ふーっ、ギリギリセーフ!」
するとそこへ美羽のマネージャーが、慌てた様子で飛び込んできた。
「ハケる時、急いでたみたいですけど大丈夫ですか!?」
いかにも出来るキャリアウーマンといった印象の女性マネージャーは、全力で走ってきたらしくゼーゼーと息切れしていた。
「ゴメンゴメン、心配いらないよ! でも後、三秒遅れたら私の顔は鼻水の海に沈んでたねー」
美羽があっけらかんとそう答えると、マネージャーは口をポカンと開けて言った。
「は……鼻水ですか?」
「うん、鼻水が出そうだったの。そうそう、私がスマホで花粉症になったって言ったら静莉(せり)がね『すっかり都会人ですね』って」
「鼻水……」
てっきり美羽がどこか具合でも悪くなり、急ぎ楽屋へと引き返したのだと思ったマネージ
ャーは『鼻水が出そうだった』という真の理由を聞いてかなりショクを受けたらしく、美羽
の話も上の空で聞いていた。
「そしたら瑠璃(るり)が『あたしも花粉症だよー。まあブタクサだから今は平気だけど』って言ってきて……」
「……急いでた理由が鼻水が出そうだったって……」
「でね、湯楽(ゆら)が『婆ちゃんが花粉症には竹酢液が効くって言ってるから、今度送るね!』って……アレ、話聞いてる?」
そう言われて、ようやく我に返るマネージャー。
「聞こえてますよ! また地元のお友達の話ですか!?」
「そ、そうだけど……」
どうやら『静莉(せり)』『瑠璃(るり)』『湯楽(ゆら)』とは、美羽の地元の友達の名前のようだ。
「もう、今とても大切な時期なんですよ! 里心がついてる場合じゃないんですからね!」
「分かってるけど、もう三年も帰ってないんだよ……」
「ご家族の皆さんもこっちでご一緒に暮らしているんですし、いいじゃないですか!」
「そうじゃなくて、私は友だちと会いたいの!」
「5thライブの次はアジア、その次はヨーロッパ、そしてアメリカツアーが控えているんですよ! 海外に行ったら地元どころか日本にだってしばらく帰れないんですからね!」
マネージャーが厳しい口調で言う。
「あー、一度でいいから久しぶりに蝶々町に帰って羽を伸ばしたいなー」
しかし今度は美羽の方が上の空で、話しをちゃんと聞いていなかった。
「今のうちにしっかりとメンタルを強く……って聞いていますか!?」
キっと美羽を睨むマネージャー。
その視線を美羽は華麗なターンでかわすと、軽いステップを踏みながら自分のヒットソングを口ずさんだ。
「You Can Fly! I Can Fly! 羽を広げて! You Can Fly! I Can Fly!」
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