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義勇艦隊奮戦録
作:山口多聞



鋼鉄の宴 下


「主砲打ち方始め!!」

 再びソ連艦隊を有効射程に治めた「長門」と「陸奥」が砲撃を開始する。今回の目標は2艦とも被弾し速力の落ちている「ハバロフスク」だ。義勇艦隊は手負いの艦を先に片付けることにしたのである。

 結果、速力が15ノットに落ち、旋回力も落ちていた戦艦「ハバロフスク」は2艦からの集中射撃を浴びた。そして、第2射撃でついに3発の40cm砲弾を浴びた。その内の1発が、4番砲塔の天蓋を貫いて、弾薬庫内で爆発した。

 「ハバロフスク」は元がアメリカ製の「ペンシルヴァニア」級戦艦の「アリゾナ」で、武装は36cm砲12門であった。戦艦は自艦と同じ口径の砲に耐えられるだけの装甲しか持たない。結果砲弾の貫通を許してしまったのだ。

 40cm砲弾が爆発した数秒後には、弾薬庫内にあった数百発の36cm砲弾が誘爆した。その爆発が持つ破壊エネルギーに艦体が耐えられるはずがなく、次の瞬間には竜骨が折れ、「ハバロフスク」は真っ二つに折れて沈んでいった。

 轟沈である。

 旧式とはいえ、3万近くもある戦艦がまるで飴細工の様に折れ曲がり沈んでいく姿に、その他の艦艇の乗員達はただ呆然と見ているしかなかった。

 一方、撃沈した側である義勇艦隊各艦ではこの光景に多くの兵士たちが万歳した。

 そんな中で、白根は早川に命じる。

「目標を至急敵1番艦に変更!連中に反撃の隙を与えるな!それと巡洋艦ならびに水雷戦隊に突撃を命令!!」

「了解!!」

 ただちに「長門」と「陸奥」の2隻では目標を「ウラジオストク」に変更し、射撃指揮所では操作員が射撃管制板に新たな数値を打ち込む。

「目標との距離およそ3万!」

「敵速17ノット!!」

 兵士たちが再び慌しく動く。

 そんな2艦の横を、命令を受けた巡洋艦と駆逐艦が追い越し、敵艦隊へ向けて突入していく。これらの艦は残存するソ連軍中小艦艇に留めを刺すのだ。

 それらを見送りながら、白根は真っ暗な水平線の向こう側を凝視していた。すると、チカチカっと光が発せられるのが見えた。発砲炎である。
 
 直ぐに見張りの兵士もそれを発見し、早川が回避運動を命令する。

 そして1分後には、敵の砲弾が着弾する。当たりはしなかったが、先ほどの砲撃戦の時よりは近い位置に着弾していた。距離が近づいた分正確になっているようだ。

「早くケリをつけなければな。」

 白根がそう呟いた直後、主砲の装填作業終了の報告が来る。

「砲撃開始!目標敵1番艦!!」

 早川の命令の元、砲撃が再開された。先ほど「ハバロフスク」を撃った時は敵に対して正面を向けていたために、前部の2基しか砲塔が使えなかったが、今度は全砲門を敵艦に指向して撃つ。

 両艦から発射された16発の砲弾が、夜空を切り裂き飛んでいく。まだ周りは暗闇が覆っているため、白根の目では敵艦の姿を視認するのは難しい。

 だが、間もなく向こうの方でパッパッと閃光が数回光るのが見えた。

「観測機より報告、敵戦艦に命中弾2!!」

 通信室からの報告がスピーカー越しに、艦橋へ伝えられる。

「いいぞ!」

 確実に彼らはソ連艦隊を追い込んでいた。

 ところが、好事魔多し、まもなく彼らを大いに冷やりとさせる事態が発生した。「ウラジオストク」が発射した砲弾の一発が艦橋基部に命中したのである。

 グワーン!!

 凄まじい衝撃が艦橋を揺さぶった。しかし、その後の爆発は起きなかった。奇跡的に不発弾だったのである。もし爆発していたら大惨事になっているところであった。

 もっとも、これによって「長門」艦内の士気はさらに高まり、さらに数発の命中弾を「ウラジオストク」に叩き込んだ。

 しかし、「ウラジオストク」もロシア人らしい粘り強さを発揮し、果敢に反撃してきた。「長門」被弾の数分後には、「陸奥」がメインマストの先端を叩き折られた。これによって一時的に「陸奥」は無線がお釈迦となった。

 さらに、その1分後には「長門」の1番主砲に命中弾を出したが、これは天蓋の分厚い装甲版にはじき返された。

 しかし勇猛果敢に反撃を行なう「ウラジオストク」であったが、それもほんの僅かない間だった。砲口径が一回り上の砲を持ち、練度に勝る戦艦を、しかも倍の数相手するのはきつすぎた。

「ウラジオストク」が「長門」、「陸奥」に反撃し命中弾を出したのはこれが最後であった。その後は砲撃しても当たらなくなり、さらに2艦から40cm砲弾を数発受けると、砲の発射感覚自体が長くなり、終いにはその砲撃さえ止んだ。

 大量の命中弾を受けた「ウラジオストク」は、海上に浮かぶ松明となり、漂流し始めた。もはや「ウラジオストク」に戦闘能力はなかった。

 白根はそれを確認すると、新たなる命令を下した。

「敵戦艦への砲撃はもはや不必要だ。後は駆逐艦の魚雷に任せよう。」

「わかりました。砲撃中止!」

 こうして20世紀最後の戦艦同士の砲撃戦は終わりを告げた。最終的に「ウラジオストク」は14発の40cm砲弾を喰らい、その内の1発が機関室に深刻なダメージを与えた事によって、戦闘、航行能力を紛失した。

 数時間後、黎明の空のもと魚雷で処分される事となった同艦が沈む時、義勇海軍、そして救助されたソ連海軍両軍の兵士は敬礼で、奮戦した戦艦の最後を看取った。

 戦艦同士の砲撃戦は終わったが、巡洋艦と駆逐艦による砲撃戦は続いていた。しかし、この対決も戦艦同士の対決同様義勇海軍有利で進んだ。

 優秀な電探を持ち、さらに練度で勝る義勇海軍艦艇は次々とソ連軍艦艇を討ち取っていった。もっとも、こちらも一方的な戦いが行なわれたわけでなく、義勇海軍艦艇にも損害が出ている。

 一方的なワンサイドゲームなど滅多にないのだ。

 まず先陣を切って突入した重巡「妙高」が2番、3番砲塔に駆逐艦の砲弾を受けて一時火災を起こしている。幸いだったのは初期消火のおかげで弾薬庫への延焼を防げた事だ。

 その他に、駆逐艦「流星」がソ連駆逐艦の集中砲撃を受けて撃沈された。義勇艦隊創設以来活躍してきた同艦は、その活躍分の代償を一気に払わされたかのごとく、ボロボロとなり、最終的に曳航不可と判断され、乗員がキングストン弁を抜いて自沈処分された。


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