義勇艦隊奮戦録(6/88)PDFで表示縦書き表示RDF


義勇艦隊奮戦録
作:山口多聞



敵艦発見!!


 


 この当時、張学良軍には小規模ながら艦艇を保有する部隊が存在した。その大部分は内陸部での使用を前提にされた河川用砲艦であったが、わずかではあるが外洋航行可能な艦艇も存在した。

 今回、2隻に下命されたのは、これら張学良軍の艦船が渤海から脱出し蒋介石軍と合流することの阻止であった。つまり、渤海の封鎖である。

 そんな中、臨時旗艦となった「流星」では、大貫司令が先任仕官の黄上尉と話し合っていた。

 ちなみに、黄は名前のとおり中国系で、日本領台湾の出身である。彼は志願兵として海軍に所属した経験があり、それを買われて今の役職についた。

 現在、大亜細亜造船では社内共通語として日本語を採用している。これは社員の割合が未だ日本人の方が多いからだ。

 ただし、中国語、朝鮮語の使用ももちろん認めているから同族同士の会話では普通にそういう言葉が使われている。また、社内では簡単な挨拶がお互い出来るよう、それぞれに簡単な会話を紹介する授業も行われている。

 一方で、今回出撃した2隻の艦艇の乗員の9割が日本人である。これは日本語で、しかも海上任務で必要な専門用語を喋れる人材が、外国人にはまだまだ少ないからだ。

「敵はいますかね?」

 黄が大貫に聞いてくる。

「わからんな。情報では渤海に何隻かいるのは間違いない。しかしだ、いくら渤海が狭いとはいえ、2隻で敵を探すには広すぎる。せめて航空索敵でもできればな。」

 レーダーもないこの時代、敵を探すには見張り員の視力のみが頼りであった。しかし、それで敵艦を発見するのは中々難しい。艦隊ならともかく、相手は独行の艦船である可能性が極めて高いからだ。

「まあ私としては敵を見つけられれば御の字と思っているがね。」

 大貫がそんな事を言った。

 彼は今回実は出撃するのには反対の立場であった。

 戦隊の練度は極めて低く、戦闘などまだ無理だと彼は思っていたからだ。また、不足しているのはそれだけではない、武装を大して装備していないのもそうだが、何よりも士官クラスの乗員や、戦闘に関しての造詣を持っている者が圧倒的に不足している。これはもちろん、その手の人間は海軍で士官教育を受けたような者でないと勤まらない。しかし、そうそう上手い具合に退役士官を雇えるわけがない。

 大貫にしても、少尉にまで任官したものの、士官学校の教育は受けていない叩き上げだ。
彼の歳が50という年齢を見てもわかる。

 また、黄にしても経験は水兵のみであるから、作戦立案等の幹部としての能力は、大貫や白根が教えた急ごしらえの物しか持ち合わせていない。

 だからこそ、大貫としては今回戦闘には乗り気ではなかった。

「せめて後3ヶ月は訓練が必要なのだ。」

 それが彼の正直な感想であった。

 それでも、彼は雇われ身分であるから行かねばならない。

 そして出撃後迎えた9月15日。無線室には次々と関東軍や清朝亡命政府軍の動きが伝わってきた。しかし案の定、張学良軍の動きに関する情報は陸上の物に限定された。

「情報はこないか。」

 それを知って、大貫はため息をついた。

 今回の出撃期間は6日間である。燃料はなんとか手配したが、食料等の物資が間に合わなく、それだけしか行動できない。19日には帰還せねばならない。

 もっとも大貫にはそれでも良いという考えがあったが。経験を積むだけでも彼にしてみれば万々歳だ。

 とにかく彼らはそれまで訓練を繰り返しつつ渤海で行動を続けた。

 状況が大きく動いたのは、18日であった。

 その日正午前、見張り員が船影を捉えた。

「船影発見。本艦前方。距離は18000から200000。数2。」












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう