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義勇艦隊奮戦録
作:山口多聞



迎撃開始!


 船団護衛の航空機は、既に6機が上がっていた。

 義勇艦隊の艦載機は、三機種で、うち一機種は満州国空軍の制式戦闘機である40式戦闘機「飛龍」である。

 この機体は元々奉天にある、奉天航空機製造公司の親会社である中島飛行機が、次期日本陸軍主力戦闘機として開発していた機体である。

 しかし、陸海軍の航空機一本化の煽りを受けて、結局不採用となった。だが、その時点で設計は既に澄み、試作機の開発に入っていた。

 そこで、零戦を輸出できない代わりとして満州国やタイ等への輸出用戦闘機として転用された。

 そして、エンジンや機体の強化などの改修の上、満州国では満州国空軍40式戦闘機「飛龍」として制式採用された。

 義勇艦隊が使用しているのはその艦載版で、空軍機との違いがいくつかあった。

 まず、翼はフロート構造となり、また外付け式の機銃ポットが装備可能となっていた。

 この機銃ポットは、空気抵抗を増やすが、正規の武装が12,7mm機銃2基のみの「飛龍」にとってはまさに必殺兵器となった。

 また、海上飛行に必要な計器も搭載された。

 しかし、こうした改修に時間を喰い、製造は今年の4月からで、結局全部隊に行き渡る分の生産は間に合わなかった。

 そのため、今回飛龍」を搭載できたのは「白虎」のみで、同型艦の「蒼虎」には日本海軍から急遽購入した96式艦上戦闘機が搭載されていた。

 すでに発艦していたのは「白虎」の「飛龍」で、木村中将の命令によりさらに「白虎」から9機の「飛龍」、「蒼虎」から12機の96艦戦が発艦した。

 船団護衛機は計27機となった。

 一方で、各艦艇に加えて輸送船でも対空戦闘用意の命令が出された。

「いよいよアメリカ軍との初陣だ。」

「白虎」艦長の八島が嬉しそうに言う。

 そんな中で、航海士の護はじっと発艦していく戦闘機を見つめていた。

「どうした航海士?そんなに戦闘機隊が心配か?」

「え!いえ、その。」

 艦長からの質問に、しどろもどろになってしまう護に代わって、同僚の一人が言った。

「そいつの恋人は戦闘機隊のパイロットなんです。」

 そう言われた途端、顔が真っ赤になる護。

「ハハハ、そうか。確かにそれなら心配になるわな。しかし、白根中尉!!」

「は!はい!!」

「他人の心配ではなく、自分の心配をしろ。彼らがも敵を止められなかったら、我々も戦うんだぞ。しっかりしてもらわんと困る!!」

「もうしわけありません!!」

 艦長に叱責され、シュンと萎んでしまう護。

「まあ心配するな。彼らは絶対に帰ってくるよ。」

 特に根拠は無かったが、八島はそう言った。

「しかし、世の中上手くはいかんな。」

 この八島のセリフの意味とは?

 実は義勇艦隊の艦載機は、当初フィリピンキャビテ軍港への爆撃任務を割り当てられていた。かつて、八島が最初にする任務が攻撃任務とぼやいたのはこのためである。(第40話参照。)

 ところが、陸軍の参加により充分な機数が揃ったため、結局この計画は幻となった。まあもともとが予想外の任務であったから、これはこれで良かったと言えよう。

 閑話休題。

 さて、八島と護がそんな会話をしていたころ、先発した6機の戦闘機は敵と接触していた。

「敵機発見!!真正面、同高度!!」

 編隊内でもっとも目が良い、孫恵貴准尉が無線で知らせてくる。

 編隊長の佐伯氷室少尉にも、確認できた。

「こちらも視認した。全機へ、高度もう500上げるぞ、付いて来い!!」

「「「「「了解」」」」」

 空戦の常識として、敵より上位を確保することというものがある。彼はそれを実践した。

 そして、上昇を終えたころには、敵機の機首まで確認できる所となった。戦闘機は見えない。全て爆撃機のようだ。彼は敵と識別表の記憶とを照らし合わせる。

 しかし、その機首を確認して、佐伯は吹き出しそうになった。

 (B10だと!!あいつら何考えているんだ!?)

 B10は、マーチン社が開発した双発爆撃機で、開発された当初はイギリスのブレニムやドイツのハインケルHe111爆撃機と同じく戦闘機より速い高速爆撃機として脚光を浴びたが、今となっては旧式の二線級機である。

 そのB10がおよそ15機。つまり半分だ。残り半分は。

(B18だ!!)

 B18ボロ爆撃機だった。この飛行機はDC2型旅客機の部品を流用した格安爆撃機であった。

 予算が削られる平時に数を揃えられる爆撃機である。しかし、旅客機改造に近いため防弾性能は低く、おまけと来て防御火器は7,7mm機銃3挺のみであった。これは1式陸攻よりも貧弱である。つまり、戦時に使うには性能が心許ない機体だった。

(アメさんやる気あるのかな?だが、これはこれで好都合だ。)

 相手が旧式や低性能で、しかも護衛なしならこれほどやりやすい相手は無い。なにより、義勇艦隊のパイロットも今回が初陣だから、良い訓練となる。

「ようし!全機へ、敵は旧式爆撃機の鴨だ!一機たりとも船団に近づけるな!!」

「「「「「了解!!」」」」」

「かかれ!!」


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