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義勇艦隊奮戦録
作:山口多聞



出撃!!


 11月30日早朝。義勇艦隊各艦艇は故郷である旅順の港を後にして、戦地へと赴いていった。極秘行動のため、軍楽隊や留守隊員による派手な見送りもない寂しい出撃であった。

 総司令官の白根は、桟橋へ行き敬礼をしながら出撃していく艦艇を見送った。

「しっかり戦って来い。そして・・・・・・」

 彼の脳裏に航海士として乗り込んだ護と、晴れてその婚約者となった芳江の顔が浮かんだ。

 昨日の夜、正式に彼らの婚約を白根は認めた。だが、それとともに白根の心は重くなった。

 彼は艦隊を、つまりはそれを操る乗員を死地へ送り出す身なのだ。父として、義父として、そして司令官として彼らの幸福をただ祈るばかりの身であるにも関わらず、彼は逆のことをしていた。

 今の彼に出来ることは、艦隊の無事を願い、こう言うだけであった。

「ちゃんと戻って来い。」

 その言葉を聞いた者はいなかった。

 義勇艦隊は出撃後黄海を南下、一路台湾のポンフー諸島(日本名ホウコ諸島)を目指した。ポンフー諸島には、義勇海軍台湾訓練場と台湾海上警備隊ポンフー基地が設置されている。

 台湾海上警備隊は、植民地警備軍みたいな組織で、艦艇は海軍の物に引けをとらず、航空隊も持っている。そして大亜細亜造船台湾支社が設置の際に多大な協力を行っている。その時台湾総督府にその設置を強く訴えたのは、台湾にやってきていた白根とも言われている。

 そういうわけで、台湾海上警備隊は台湾版義勇海軍の側面も持っていた。

 12月3日、艦隊は予定通りポンフー諸島台湾海上警備隊基地に入港した。

 義勇艦隊各艦艇はここで燃料や物資を補給し、そしてさらに3日後今回護衛する日本陸軍の輸送船団と合流した。

 今回護衛する輸送船団は計8隻で、全船徴用貨物船である。大きさはどの船も7000t前後の中型船が集められているが、速力や運動性能はまちまちである。

 義勇艦隊ではこうした性能にばらつきのある船で組まれた船団の護衛も考慮されていた。

 早速、旗艦である軽巡「海龍」に船長や日本陸軍の輸送指揮官が集められ、会議が行われた。

 ここで通達されたのは、護衛艦の配置と非常時の運動についてであった。非常時には、対艦、対空、対潜の3つの状況が定められ、それぞれ独自の対応方法が説明された。

 例えば、対空の場合は陣形を極力維持しつつ速度を上げ、衝突の危険性を排除して間隔を詰め、対空砲の密度を上げるという物である。

 こうした船団の非常時対応は船団の規模や護衛戦力の規模ごとに違う。今回の場合は、空母2隻がつくから、比較的余裕のある護衛が出来る。

 航空機の威力は対潜、対空に対しては絶大である。特に今回は戦闘機60機、攻撃機24機、水上機2機の傘があるのだ。制空権の有無は天と地ほどの差がある。

 船長たちとの会議が終わった後、艦隊司令官の木村昌福中将は、司令官席に座って安堵の息をついた。

「なんとか無事に終わったな。」

 席につくなり彼がいったセリフである。

 木村中将は日本海軍からの流れ組で、元々の専門は水雷であった。そのため、船団護衛には全く造詣がないわけではないが、義勇艦隊に入ってから勉強しただけなので深い所まではいってはいない。

 もっとも、実際の所義勇艦隊内で船団護衛の経験があるのは、以前イギリスの要請によってマラッカ海峡へ海賊対策として貨物船警護の為に出動した駆逐艦部隊ぐらいである。

 そう、今回の戦いこそ始めての本格的船団護衛任務なのだ。

 しかし、木村中将の懸案はそれだけではなかった。今回、日本陸軍の指揮官や輸送船の船長が自分たちの指示にちゃんとついて来るかという心配もあった。

 しかし、これについては幸い顔をしかめる者はいたが、露骨に反対する者はいなかった。彼らにしてみれば、満州国の民間海軍とは言っても、今まで中国海軍との戦いで勝ちを収めたという実績を持つ義勇艦隊にある程度の信頼を置く気にはなっていたようだ。

 とにかく、こうして第一の不安材料は払拭することが出来た。だが、戦いの本番はこれからである。

 そして12月7日深夜。艦隊と船団は次々と錨を上げて出港した。

 今回の戦争は米国側からの参戦であるから、当然日本軍によるフィリピン上陸も考えているはずだ。もしかしたらアジア艦隊の待ち伏せがあるかもしれない。

 艦隊の将兵達の緊張は極限まで高まっていた。そして、運命の12月8日午前零時を迎えた。












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