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義勇艦隊奮戦録
作:山口多聞



竹島沖海戦


 陸上で戦闘が始まったころ、義勇海軍や日本海軍、朝鮮海上警備隊も臨戦態勢に入っていた。

 これは、日本から満州へ運ばれる軍需物資や資材をソ連潜水艦が攻撃する可能性があったからだ。

 案の定、事件発生翌日には対馬海峡で国籍不明潜水艦の発見報告があり、さらに、その後数日間の間に日本海や黄海で正体不明の潜水艦の発見報告が相次いだ。

 これに対し、帝国海軍は船団に護衛艦を付け、加えて対潜パトロールを強化した。

 そして事件が起きたのは、ノモンハン事件発生2週間後の日本海であった。

 その日、駆逐艦3隻に護衛された輸送船7隻の船団が敦賀から旅順へ向けて航行中であった。夜間、対潜警戒を厳重にし、各艦は臨戦態勢に入っていた。

 しかし、乗員には楽観的な空気があった。もともとソ連海軍はどちらかというと三流海軍であるし、また自分たちの乗っている艦の性能に自信もあった。加えて、潜水艦を見下していたようだ。

 この時の駆逐艦は「初雪」他2艦で、3艦はいずれも所謂特型駆逐艦であった。

 深夜、最初にそれを発見したのは駆逐艦「深雪」であった。

 艦橋左舷側の見張り員が突如叫んだ。

「雷跡見ユ!!数4、右舷近い!!」

 直ちに艦長は回避運動を命令した。

「取り舵一杯!!」

「ヨウソロウ!!取り舵一杯!!」

 操舵員が必死に舵輪を回した。

 マストに魚雷注意の旗が掲げられ、発光信号で他艦に報告がなされる。

 船団は一斉に舵を切る。しかし、徴用船ばかりであるため、輸送船の性能はマチマチであった。そのため、僚船の運動に追従出来ない船が一部あり、船団の陣形が一部乱れた。だが、幸いにもそれに敵潜水艦がつけ込む事はなかった。

 けれども、最初に魚雷を発見した「深雪」は船団程幸運ではなかった。

 4本中3本はなんとか避け切ったが、やはり発見が遅すぎたらしい。1本が命中してしまった。さらに悪いことに、これが艦尾に命中してスクリュー軸をまず吹き飛ばし、さらに両舷の機関室に大浸水をもたらした。これによって航行不能に加えて発電機もお釈迦になった。これらに加えて、艦尾に積んでいた爆雷が衝撃で誘爆。艦尾切断という大被害となってしまった。

 これが致命傷となり、「深雪」はこの後沈没している。

 「深雪がやられた!!」

 僚艦の惨状は輸送船団と、残る2隻の駆逐艦からも見て取れた。

 「深雪の敵討ちだ!!」

 2隻の駆逐艦が早速行動を起こした。

 輸送船の一隻に「深雪」の救援を要請(命令)すると直ちに魚雷が発射されたと思しき地点に全速で急行した。

 この時、両艦は敵が全速で遁走中と思っていた。ところが、なんと潜水艦は2艦に向けて再び雷撃を仕掛けてきた。

 この内発見の早かった「初雪」は回避できたが、後方を走っていた「綾波」は発見が遅れたため艦首近くに魚雷が命中した。

 悪い事に、全速力で走っていたため、自らの力で魚雷の命中箇所の傷を広げることとなった。幸い、沈没はしなかったが、前進での航行が不可能になった。

 世界最強を自負していた特型駆逐艦3隻の内2隻までもあっさりとやられてしまい、残る「初雪」乗員の怒りは頂点に達した。

 そしてこの時潜水艦は致命的なミスを犯した。戦果確認のため長い時間潜望鏡を海面に出していたのだ。

 この時期、帝国海軍の見張り員の視力は世界レベルの遥か上を行っていた。その内の一人がこの潜望鏡を発見した。

 「初雪」は潜望鏡めがけて、主砲の砲撃と爆雷攻撃を行った。

 「初雪」の主砲は榴弾を20発近く打ち込み、さらに搭載していた36発の爆雷を全て撃ち尽くした。結果、潜水艦は艦体に甚大な損傷を受けやむなく浮上。乗員が脱出を行った後日本海深く沈んでいった。

 その後、乗員を救助したことで、この艦の所属はソ連海軍と判明した。

 結局この戦闘でソ連軍は潜水艦1隻を損失した代わりに、駆逐艦1隻撃沈(深雪)、1隻大破(綾波)に加え、船団は護衛艦艇の再配置のため、門司に緊急入港する羽目になり、予定より到着が5日近く遅れた。

 この海戦(日本名竹島沖海戦)で日本海軍は特型駆逐艦の対潜性能の貧弱さを思い知らされ、以後の戦略に、多少なりとも影響することとなる。


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