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義勇艦隊奮戦録
作:山口多聞



海戦の終焉


 




 旗艦である巡洋艦「海龍」の砲撃は初弾から近弾、第二斉射では狭叉を出している。

 「いいぞ!!」

 長野がその様子を褒め、その直後に発射された第三斉射は見事命中弾を2発得た。

 「命中だ!!」

 乗員達が小躍りする。

 砲弾が命中したのは重巡「蘭州」の水上機用カタパルトと、その後方の機銃座だった。もっとも、この時水上機は乗せていなかったため、被害は小規模な火災が起きたに留まった。

 一方、この一分後にようやく「蘭州」も近弾を出したが、さらに5発の15,5cm砲弾を受け、後部3番砲塔が使用不能になった。

 圧倒的に「海龍」が有利であった。そして「天龍」と「福州」の戦闘も似たような物であった。

「福州」も15,2cm砲で「天龍」を撃ちまくったが、命中弾は中々得られず、逆に4発の命中弾を受け、悪いことにこれが砲弾弾薬の一部に引火し、盛大な爆発を起こし機関室に被害が生じたため、速力が半減していた。

 最終的に、「福州」は一発の命中弾も得られぬまま、戦闘開始後20分で、12発の砲弾と、「天龍」から発射された魚雷2本を受け、沈没した。

 しかし、戦闘開始後30分。粘り強く戦う中国艦隊もようやく戦果らしい戦果を上げた。

 巡洋艦「蘭州」の20cm砲弾1発が「海龍」に直撃した。

命中箇所は後部の3番砲塔で、幸い弾薬への誘爆は起こらなかったが、3番砲塔の砲塔要員は全員戦死した。砲塔天蓋の装甲は日本時代(25mm)より厚くなっていたとはいえ、それでも45mmしかなく、20cm砲弾を防ぎきれなかったのだ。

 さらに一発が直撃こそしなかったものの、かすったことにより後部マストがへし折られた。

 この被害は乗員達を憤慨させた。

「やりやがったな!!」

 この命中弾は、「海龍」乗員の戦意を皮肉にも高揚させた。

 続く斉射ではなんと「海龍」は4発全弾を命中させた。この命中弾によって、1番を除く全ての砲塔、ならびに甲板上の武器が使用不能となった。さらに速力が12ノットまで下がった。

 そしてそこへ、駆逐戦隊が突っ込んできた。

 それは対馬大佐率いる第二駆逐戦隊で、その時まで敵駆逐艦2隻と戦闘を行っていたが、ようやく片付け終えて、「海龍」の支援に入った。

 その光景を見て、恐怖したのは巡洋艦「蘭州」の乗員たちである。

 既に自分たちはまともな反撃手段を持っていない。つまり駆逐艦の接近を止めることは出来ない。このままでは魚雷を撃たれてしまう。しかし、逃げようにもすでに艦速は12ノットしか出せない。つまり、自分たちはもはやただの的でしかないと悟ったのだ。

 結局、「蘭州」艦長はこれ以上の戦闘は無意味として降伏を決断し、ただちにそれを発光信号で義勇海軍に知らせ、くわえてマストに白旗が揚げられた。その30分後、巡洋艦「海龍」から長野参謀長が移乗し、正式な降伏手続きが取られた。

 こうして、黄海海戦は義勇海軍側の勝利で幕を閉じた。

 中華民国海軍側は7隻の艦隊の内巡洋艦2隻、駆逐艦4隻を失う(巡洋艦1隻は捕獲、駆逐艦1隻は遁走)というほぼ全滅に近い損害を受けた。

 一方の義勇海軍は巡洋艦「海龍」と第二駆逐戦隊の駆逐艦「麗星」がそれぞれ一発ずつの直撃弾で小破し、「海龍」の水上機が砲弾の破片で全損したのみであった。戦死者を出すという痛ましいことはあったが、数のみで言えば勝利であった。

 この海戦によって、蒋介石率いる中華民国海軍は保有艦艇の殆どを失い、黄海の制海権を完全に失った。

 さらに、衝撃はそれ以外にもあった。特に、各国海軍は、義勇海軍がたんなる海賊退治・密輸摘発業者ではなく、一級の戦闘力を備えた組織であることを、改めて認める事となった。そしてそれが、大きく義勇海軍に影響していく事となる。



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