義勇艦隊奮戦録(20/88)PDFで表示縦書き表示RDF


義勇艦隊奮戦録
作:山口多聞



突撃!!


 突撃を開始した駆逐戦隊は、一気に間合いを詰める。

 岡本大佐率いる第一駆逐戦隊は右に、対馬大佐率いる第二駆逐戦隊は左にそれぞれ展開する。

 それに対し、中国艦隊は特に回避運動もせず、少しばかり増速し、隊列を単縦陣から3列縦隊に変えただけで直進を続けている。

 「司令、主砲砲撃準備完了。」

 大貫のもとに報告が来る。

 「砲撃しばしまて、これより第一戦隊は左90度回頭せよ。砲撃開始は回頭終了後から始めよ。」

 「え!!司令、それは丁字戦法では?あれは既に使い古した戦法では?」

 長野が驚きの目で大貫を見る。

 丁字戦法とは、その昔。日本海海戦において東郷元帥がバルチック艦隊を破るのに使ったとされている戦法で、反航戦において、直進する敵に対し直前で回頭し、進路を塞ぐようにして展開。そして全火力を持って個艦撃破する戦法である。敵が正面の砲のみしか使えないのに対し、全砲門が使える利点があり、さらには敵の逃げ道も奪える。海軍軍人なら一度は使いたい戦法だ。

 ただし、回頭中は集中射撃を受けることとなり、さらには敵が逆に回頭すると逃げられるという欠点もある。現に、東郷元帥も一回目に使った黄海海戦で失敗している。

 それを大貫は使おうとしている。

「何、失敗しても敵の力量を確かめるいい機会になる。」

「了解しました。艦長!」

「ヨウソロウ。取り舵一杯!!「天龍」にも伝達!!」

 命令とともに、操舵室では操舵手が舵輪を左一杯に回す。

 しばらくして、艦が左に傾く。その間にも敵の発砲が続く。しかし、いずれも遠弾だ。

「敵2番艦の「福州」も発砲しているようですが、全く当たりませんね。狭叉にも程遠いぞ。あれでは弾を浪費しているのと同じだ。」

 長野がそう言った時、回頭が終わった。

「主砲打ち方始めよ!!」

 ついに大貫が砲撃許可を出した。

「了解。打ち方始め!!」

 十数秒後、三基の砲塔が一斉に雄たけびを上げた。

「海龍」から計6発の15,5cm砲弾が放たれた瞬間であった。









 一方、駆逐戦隊のうち、岡本の第一駆逐戦隊は敵に衝突せんばかりの勢いで突っ込んでいた。

「とにかく肉薄せよ。砲弾の回避運動をしながらでも良い!!とにかく距離を詰めよ!!」

 岡本大佐の叫びが旗艦「流星」の艦橋にこだます。

 艦は激しい操艦を行い、右に左に揺れる。そんな中でも乗員たちは必死に戦う。

 一方、それを見ている中国艦隊駆逐戦隊は、10,2cm砲で攻撃を開始するが、もともとが練度不足であるのに、さらに第一駆逐戦隊が異常なまでに激しい動きをするので全くその動きについていけない。

「距離5000!!」

「撃ち方始め!!」

 そこまで距離が詰まった所で、岡本は攻撃許可を出した。2門の12,7cm砲が火を噴く。

 そして、その砲弾は見事初弾から命中を果たした。奇跡である。

 砲撃を受けた中国駆逐艦「長治」は当たり所が悪かったのか、火災を起こし、盛大に煙を吐き出す。

 2,3番艦の「彗星」「蒼星」はさすがに初弾命中という幸運には恵まれなかったが、それぞれ2斉射以降続々と目標に命中弾を浴びせた。

 第一駆逐戦隊はさらに距離を詰め、40mm機銃まで使って敵を攻撃した。

 15分で、中国駆逐艦の半分(3列縦隊移行後左側を走っていた3隻)が浮かぶスクラップに変わってしまった。

 火災を起こし、もはや反撃も出来ず、速力も数ノットまで落ちていた。

 岡本はそれでも砲撃を続けさせたが、ついに敵艦のマストにシュルシュルと白い旗が上がった。

 「敵駆逐艦に白旗が上がりました!!あ、乗員がカッターを降ろしています!!」

 3隻はいずれももうもたないらしく、乗員が慌しく退艦を始めている。さすがにこれ以上砲撃する必要はない。

 「砲撃やめ!!カッター降ろしかた用意!!敵艦の乗員を救助する。」

 こうして、第一駆逐戦隊は勝利した。だが、戦闘の混乱によって他の隊から離れてしまっていた。

 もはや他艦の戦闘には間に合わないと判断した岡本は、敵乗員の救助に専念することにした。

 そのころ、巡洋艦同士と、第二駆逐戦隊と残存駆逐艦同士の戦いも佳境を迎えていた。



 御意見・御感想お待ちしています。











ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう