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沸騰!!黄海
中華民国艦隊発見から数時間後、ついに両艦隊は接触した。

 「敵艦隊、先頭は巡洋艦「蘭州」。2番艦は同じく巡洋艦「福州」。そして残る5艦は平甲板型の駆逐艦です。単縦陣でやってきます。」

 艦橋上部に設置された櫓から、見張り員が報告してきた。単縦陣とは艦隊が1本の列の用に並んで進む陣形である。

 「参謀長、確か「蘭州」は「ペンサコラ」で、「福州」は「オマハ」だったな。」

 司令官席に座る大貫が長野に問う。ちなみに、既に総員戦闘配置が命令され、二人とも戦闘に備えてヘルメットを被っている。

 「はい、確かそうでした。」

 長野は艦形表をパラパラとめくりながら答える。

 「となると敵の口径はこちらより大きいな。」

 「ペンサコラ」は重巡であるから主砲が軽巡の「海龍」より4,5cm太い20cmである。主砲が大きいと威力や射程に格段の差が生じる。

 「艦長、敵が発砲しだい速力を上げて回避運動。距離を一気につめ、射程に入り次第攻撃開始。」

 「は!!」

 大貫の命令に対し、艦長の日向大佐が復唱する。

 しかし、予想した敵の射程に距離を詰めても発砲する気配は全くなかった。

 「撃ってこないな?」

 「撃ってきませんね。」

 大貫も長野も拍子抜けしてしまう。

 そんな折、信号所から連絡が入る。

 「司令、後続の駆逐戦隊が突撃許可を求めています。」

 今回引き連れてきた駆逐艦は計6隻だが、これらは3隻ずつで戦隊を組んでいる。そして第一戦隊司令の岡本庄治大佐、第二戦隊司令の対馬雄二大佐の二人とも、条約の煽りを受けて予備役に編入された元帝国海軍の軍人である。そして二人とも水雷畑の出身だった。

 「どうします?」

 そう言う長野も突撃したくてうずうずしているのが、大貫にはわかった。 

 彼は決断した。

 「いいだろう。これより各戦隊は個別に突撃、敵艦隊を各個撃破せよ!!」

 命令とともに一気に艦が慌しくなる。
 通信長の鄭中尉が命令を各艦に伝えると、戦隊は各個に突撃を開始した。

 各個に突撃することは、こちら側が各個撃破される可能性がある。しかし、大貫は部下の練度に自信があった。だから敢えて突撃命令を下した。特に今回は動きが優れている中小型艦が主力である。それも決断への要素となった。

 「機関黒一杯だ!!最大船速に増速せよ!!」

 黒とはプロペラの回転数上昇を意味する。ちなみにその逆は赤となる。

 機関の出力が上げられ、艦速も上昇する。

 「駆逐戦隊突撃します!!「天龍」本艦に追従します!!」

 「主砲戦用意!!目標敵一番艦、弾種徹甲弾!!」

  戦闘への動きが一気に加速する。各艦は突撃し、そしてその主砲では発砲の準備が進められる。

  そんな中、敵艦隊で複数の閃光がきらめいた。

 「敵艦発砲!!」

 「回避、いや、そのままだ。」

 日向艦長は大貫の命令である回避運動をやめ、艦を直進させた。これは一種の命令違反になりかねないが、大貫は何も言わなかった。初弾がめったに当たらない事と、こちらが増速中であり狙いにくいことがわかったからだ。

 案の定、敵の砲弾は明後日の方向に着弾した。

 「おいおい、敵はちゃんと狙っているのか?遥かかなただぞ!!」

 長野が呆れ返る。それほどまでに酷い砲撃だった。

 「まさかとは思うが、日清戦争中と同じで練度が不足しているのか?」

 実はそのまさかであった。中国は日清戦争以来まともな海軍を持ってはいない。艦こそ揃えたが、人間の方が追いついていなかった。アメリカ軍は少数の軍事顧問を派遣してはいたが、とても間に合わなかったのだ。これに対し、義勇艦隊は帝国海軍の退役軍人らによって乗員に対する積極的な教育を行っていた。

 その結果がどう出るか、ほどなく証明される。

 「どうやら連中は戦争を知らんようだな、我々が教育してやらんとな。」

 そう漏らしたのは、駆逐艦「流星」座乗の岡本大佐だった。

 「全艦砲雷撃戦用意!!」

 黄海に、鉄の暴風が吹き荒れようとしていた。
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