Act.06 自ら首を絞めた女
私は二人の母でした。
私は一人の母でした。
私は子を愛したかったのです。
私は子を愛せなかったのです。
私は酷い親でした。
運命は少しずつ私の首を絞める。
壊された平穏。
破られた約束。
最初の間違い。
貴方に出会ったこと?
私は三つの間違いを犯しました。
一つ目は子を渡してしまった事。
どうしても愛することができなかったのです。
どうしても憎むことしかできなかったのです。
二つ目は子のそばを離れてしまった事。
私は足手まといだったのです。
守るためには仕方が無かったのです。
三つ目は子を守り抜くことができなかった事。
私には託すことしかできなかったのです。
嗚呼、私にもっと力があれば。
運命は少しずつ逃げ場を消していく。
逃げ出した場所は地獄、逃げ延びた先も地獄。
その足場は本当に其処に?
この咎、償えるものなら償いたいのです。
私には償うことすら許されないのです。
こんな私を母と呼んでくれた子達。
こんな私を信じて託した貴方。
どうか許してください。
私には成し遂げることができなかったのです。
ならば完全に絞まってしまう前に。
響く爆音、眠る赤子。
終わっていく命、壊れていくヒト。
消えていくのは、奪っていくのは。
私は二人の母でした。
私は一人の母でした。
私は一人の母になることはできませんでした。
それでも私は最後まで一人の母でありたかったのです。
そうして私は自ら首を絞めた。 |