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『モラトリアム』 ―僕達の戦争日記―
作:香音



Act.04 贋者になった少年


さて。間違い探しです。
かしずく大人。微笑む子供。
豪奢な家具。豪華な暮らし。
間違いは何処にあるでしょう?


大人は僕に対して敬語を使う。
僕は大人に対して威厳をもって接する。
大人は僕に従い、僕は大人を操る。
大人は僕を操り、僕は大人に従う。

媚を売る大人。何も知らない僕。
飛び交う陰謀。何も見ない僕。

僕が気付くはずはない。
知る術など無いのだから。
僕に気付かせてはいけない。
利用する事が出来なくなってしまうから。

僕の仕事は名前を書くこと。
細かい文字が書かれた紙に名前を書き、真っ赤な印を押す。
それだけで終わり。
僕の名前は人を殺す。
僕の名前は人を生かす。
けれど僕は其れを知ってはいけない。
知ってしまえば要らなくなるから。
だから僕は何も知らない。
僕は名前を書き続ける。

僕の周りには全てがある。
僕が周りには全てがない。
そして僕はその全てを知っている。

僕は紛れも無い本物で、僕は紛れも無く贋者。
ただ其れは知るか知らないかの差。
事実と真実は異なるもの。

誰も気付くはずはない。
もはや知る者などいないのだから。
誰も気付かせてはいけない。
もはや知る者は僕のみなのだから。


此処は絢爛豪華な檻。
飾られるのは大人の嘘。
飾りつけるのは僕の嘘。

さてさて。間違いはいくつあるでしょう?












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