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『モラトリアム』 ―僕達の戦争日記―
作:香音



Act.03 祖国を売った軍人


俺は自分のしている事が正しいと思ったことは一度も無い。
俺は自分のしている事が間違っていると思ったことは一度も無かった。

俺は軍の中でもそれなりの位置にいた。
だが望んで其処にいたわけではなかった。
生きる意味も無く、死ぬ意味も無く。
そうやってなんとなく生きていたら、いつの間にかそんな場所にいた。
都合よく操るには俺はちょうどいい人材だった。
俺は半端者だった。俺はいつも一人だった。
だが、俺は奴に出会った。
奴は俺の監視対象だった。奴もまた孤独だった。

必然的に俺は奴の、奴は俺の、唯一の話し相手になった。

奴は語った。
国の事、自らの子供達の事、そして呪われた計画の事を。
奴は今の日本国は憂うべき存在ですらないと言った。
もはや憂いたところで何とかなるものでもない。
だから、いっそのこと壊れてしまえばいい、と。

国の奴らは間違っていた。
明らかに人の道を外れていた。
呪われた計画。
あろうことか守るべき国民を、子供達を――。
俺は間違っていた。
そんな国を絶対だと信じていた。
そんなある日、奴の射殺命令が上から通達された。
俺は奴に逃げるように言った。
だが奴は其れを拒否した。
奴は気高かった。気高すぎた。
奴は俺の銃を奪い取った。

子供達を頼む――

それだけを言うと、泣き出しそうに微笑を浮かべたまま奴は自分の頭を撃ち抜いた。
俺はただ、其れを見ていることしかできなかった。

真っ赤に染まる部屋。
飛び散った『奴』だったもの。
こちらにむかって駆けて来る複数の足音に咄嗟に俺は自らの銃を回収した。

事は俺が奴を殺したと言うことで収拾がついた。


それから俺は考え始めた。
何が正しくて、何が間違っているのか。
俺が国のあり方に対して疑問を抱いている事に上層部が気付かないはずがなかった。
そして今度は俺を消そうとした。
だから俺は連邦に亡命した。
NeverLand作戦の計画書と、そのサンプルという手土産を持って。

贖罪の心算だったのかもしれない。
だがその結果はどうだ?
むしろ償うべき罪を増やしただけじゃないか。

嗚呼。この世に神がいるのならば。
仮初の救いなど必要ない。
ただ、この俺に相応しい罰を……。












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