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気がついたら妖怪の主になっていたんだが 作者:インコ法師
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はじまり




揺れている。激しく揺さぶられているような感覚で起こされた。不愉快だ。


―――何をする……!!主様を返せ……!!―――
―――やかましい!!手に入れたもの勝ちだ!!―――
―――返せ!!主様は我らの主様だ!!―――


しかも、何やら言い争う声もする。なんだ、いったい。朝は目覚ましがなるまでじっくり寝る派だ。一分一秒でも多く寝ていたいのだ。そんな俺の睡眠を邪魔するとは何奴か。
目を開けようとした。目は開いた、と思う。かなりぼやけて何かが見えるような気がする。………おかしい。今のは瞼が開く感覚じゃなかった。中心の点から視界がゆっくり広がった。しかもかなりぼやけているし何が何だか分からない。俺の視力はそこまで悪くなかったはず。

待て。少し状況を整理したい。まず、俺は誰だ。
……いけない、自分の名前を思い出せない。記憶がまるで霞のかかったように、遠くにあって、分からない。なんとなく、自分が社会人だったような、気がするくらいで。

グルンッ!

突然、宙を舞ったような、ジェットコースターで落ちるような、あの浮遊感に襲われた。


―――あああ!!!主様ぁあああ!!―――
―――なっテメェのせいで……!!せっかくの主が…!!―――


あるじだのぬしだのとうるさい奴らだな。こいつら俺の思考中もずっと騒いでいてうるさいことこの上ない。というか、俺はこいつらのせいで今落ちてるんじゃないか?

ぼちゃん!

今のは水音、だろうか。なんだか冷たい気がするし、ぐるぐると回転しているような気もする。悲痛な響きを持って「ぬしさま」と呼ぶ声と、悔しさをにじませた怒声がどんどん遠ざかっていく。
俺は揺られている。揺られながら、どこかに向かっているということは分かる。
あぁ、これはあれだ。日本人なら誰でも、その擬音を聞いた瞬間状況が分かるという伝説の状況だ。今の俺は、そう。「どんぶらこ、どんぶらこ」と流されている。俺が居るこの場所が“桃”である気はしないが。

おそらくここは川。川に流されて俺が向かう場所は、きっと最終地点の海なのだろう。今の俺はなぜだか手も足もなく、耳はないが音が聞こえ、目はないけれどぼやけて辺りが見える。不思議な状態だ。動こうと思っても動けないので、このままだと海まで一直線。はて、どうしたものか。

……色々試したが、出来るのは視界を360度回転させることと、何やら自分のうちに揺らめく熱いものを弄り回すことだけだった。視界は動かしてもぼやけているので意味はないとして。自分の中にある、これは何だろうか。伸ばそうと思えば伸び、縮めようとすれば縮み、膨らませようとすれば膨らむ不思議なもの。そして、扱っていると何故か量が増えていく。他にすることもないし暇なので、その妙な何かをいじり倒すことにした。






見切り発車でございます。がんばりまする。
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