第88話 争いの終わり
棗は地面に叩きつけられた涙を見た瞬間すぐさま目を硬く閉じ、その場に尻餅をついた。
「あ……、あぁ……っっ」
棗の足がガクガクと震える。額に嫌な汗が滲み出た。
瑠夏も、そんな棗を助け起こしながら恐る恐る涙の状態を確認した。
・・・此処から見ると、まるで、赤い絨毯の上に涙が静かに横たわっている様に見える。
それほどまでに酷い出血だった。・・・きっと、即死だったのだろう。
そんな酷い状態になった涙を見下ろす瑠夏の頬に、一筋の涙が流れた。
ふと気がつくと、周りのクラスメイトたちの瞳にも、涙がうっすらと浮かんでいた。
棗はまだ震えながら、自分の両手を見つめている。
そんな棗の頬にもまた、先程までとは違う意味の涙が流れていた。
「・・・俺、俺は・・・こんな終わり方、・・・望んでた、わけじゃないのに・・・!
ほんとは、ほんとは誰も苦しまずに・・・普通に、・・・みんな普通に生きて欲しかったのに。
どうして・・・なんでこんなことに、なっちゃったんだろう・・・。どうして、俺は・・・っ」
自分には何も出来なかった、と自分を責め、咽び泣く棗。
奈々と京子はそんな棗を、ただ静かに見つめていた。
・・・自分達も、何も出来なかったのだ。何1つ、護る事ができなかったのだ。
全てを護ろうとして、全てをダメにしてしまった。
本当に大切なことを一瞬でも忘れてしまっていた自分達のせいで・・・。
そう、全ての始まりは涙の嫉妬心から始まった。
・・・自分達は涙を止めようとはせず、壊れかけていた涙に協力し続けた。
その結果、美衣子も涙もこの世から消えてしまった。
……いや、消してしまったという方が正しいかもしれない。
誰もが苦しみ悲しみ憎しみ、そして傷つけあった
史上最悪とも言える生徒同士の争いは、たった今終わりを迎えた。
|