第85話 手紙
涙が自分の気持ちに気づいてから、1週間経った。
しかしあれから涙は屋上に訪れていない。
棗の所に行きたいが、気まずくて行けなかった。
あんな酷い事を言ったのに、どんな顔をして会えば良いのか分からなかったのだ。
この1週間ずっとクラスメイトからの嫌がらせは続いていたが、
今は棗の事で頭がいっぱいで、正直言ってそれどころじゃなかった。
この日も涙はいつも通り登校し、下駄箱に足を運んだ。
・・・今日は、上履きは無事なようだ。
と思ったのも束の間、よく見ると中にいくつか画鋲が入っていた。
上履きを逆さにして、中に入っていた画鋲を床に落とす。
その時、靴の中から画鋲と一緒に小さな紙切れが落ちてきた。
いつもの嫌がらせ文書かと思ったが、一応開いて確認してみる。
・・・なんと、それは棗からの手紙だった。
【葉山先輩へ。 今日の放課後、下校時刻が過ぎてから
屋上に来てください。話したいことがあります。岸本棗】
心臓が破裂しそうになるほど速く脈打つ。
顔が真っ赤になっているのが自分でも分かった。
これは、もしかして。
いや、もしかしなくても……告白?
涙は天にも昇る気分で、天井に向かって大きく拳を突き上げた。
それから満面の笑みを浮かべて、手紙を制服の胸ポケットに大切にしまった。
その日は1日中何度も何度も時計を確認した。
こんな時に限って、時間が遅く流れるような錯覚に陥ってしまう。
瑠夏や奈々や京子に暴言を吐かれても、何をされても
この日ばかりは全く気にならなかった。・・・気にも留めなかった。
何故なら自分には放課後、とても嬉しくて幸せな事が起こるのだから。
こんな気持ちになったのは、美衣子と雪山先輩が死んだ日以来だった。
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