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あたしは悪くないもん
作:猫満月



第76話 決意


「では、第一発見者はあなたたちですね?」
「……はい、そうです」

瑠夏は、通報を受けて駆けつけた刑事の質問に淡々と答えていた。
勿論瑠夏も冷静ではなかったが、今の状況で唯一話が出来たのは瑠夏だけだった。
何故なら、京子は俯いてガタガタ震えているし、奈々は気絶してしまっているから。
京子の叫び声を耳にした野次馬たちが集まってきて、あっという間に人だかりが出来た。
誰が連絡したのかは知らないが海上保安官達も駆けつけ、瑠夏たちにタオルを渡し、美衣子を冷たい海の中から引き上げた。
そこで瑠夏と京子が目にしたものは、水分を含んで膨れ上がってしまった美衣子の体だった。
あまりの光景に、思わず目を背ける瑠夏。京子は叫びながら瑠夏の腕にしがみ付いた。
いつも優しい笑みを浮かべていたその顔は青白くなり、髪の毛は海水で固まってしまっていた。
本当にこれが美衣子なのかと疑いたくなるような、そんな凄まじい遺体だった。

「ええと、今回の事を事故ではなく美衣子さんの自殺だと考えるとしたら、何か心当たり等はありませんか? 例えば学校で酷いイジメを受けていたとか」
「……」
「あの、聞いてます?」
「……」

瑠夏は何も答えず、ひたすら俯いていた。そして暫く経った時、強く唇を噛み締めて顔をあげ、こう答えた。

「何も知りません」

……本当は、美衣子の精神が不安定だったことを知っている。
彼女はいじめられていた。自分達も一時期彼女を酷く追い詰めた。
クラスメイトからいじめられ、親友達からもいじめられ、
恋人を殺され、ストーカーに悩まされ、……殺人を犯した。
どうして今回、前進を続けていたはずの美衣子が自殺してしまったのか、その原因は自分達にもわからない。
全てを包み隠さず話せば、涙は捕まるかもしれない。だけど、今此処で全てを明るみに出すわけにはいかなかった。
何故なら、たとえ捕まっても、間違いなく死刑になることはないだろうから。中学生ということもあり、確実に極刑は免れるはずだ。
いじめなんて所詮子供の問題。真剣に考えるふりをしてはいるが、大人なんてみんなそう考えているだろう。そんな大人たちに、涙の裁きを任せるわけにはいかない。

「……涙」

瑠夏はぽつりと、涙の名前を呟いた。
突然出てきたその単語に、刑事は戸惑いの色を浮かべている。
そんな事は気にも留めず、瑠夏は薄く口元を吊り上げた。

(あなたに気づかせてあげる。自分の犯した罪がどんなに重いかって事を)

顔を上げた瑠夏の瞳の奥には、怒りの炎が煮えたぎっていた。












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