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あたしは悪くないもん
作:猫満月



第71話 秘密


美衣子は涙を頬に光らせたまま、床に座り込んでいた。
こんな事は、あの3人にも、まして親にも言えない。
言ってしまえば最後、美衣子の人生は今以上に多く狂ってしまうことだろう。

あの3人に相談すればきっと、堕ろす事を薦められるだろう。
勿論、お腹の子には悪いが美衣子だってあんな男の子供を生みたくはない。
しかし、親に相談すれば必然的に、誰の子供だと訊ねられるだろう。
雪山の子であればもうとっくにお腹が大きくなっている頃だし、雪山以外に特別親しい男性など、美衣子にはいなかった。
そうすれば、嫌でも美衣子はあの男の存在を話さなければいけなくなる。
いくら酷い事をされたからといって、美衣子があの男を殺したことには変わりがない。
あの男を殺めた事が知れ渡れば、美衣子は人間としての立場を失う。
それだけはどうしても嫌だった。美衣子は今までいろいろなことに耐えてきた。前向きに生きようとしてきた。
それなのに人間としての立場までも奪われたら、一体これからどう生きれば良いのだろう。

泣きながら顔を上げると、目の前に置いてある写真立てが目にはいった。
美衣子は涙を拭き、その写真立てをそっと手にとる。その写真には、幸せそうに微笑む美衣子と雪山が映っていた。

この頃は本当に幸せだった。誰よりも幸せだという自信があった。
……それなのに、一体どうしてこんなことになってしまったのだろう。
雪山の優しい微笑みは、いつも美衣子の心を楽にしてくれた。
この笑顔が大好きだった。いつか離れるなんて考えてもいなかった。

涙が頬を伝って落ち、雪山の微笑みの上に落ちた。
その瞬間、いつかの雪山との会話が脳裏に蘇った。


「―――なぁ、美衣子。もし子供ができるとしたら何人欲しい?」
「え? ……うーん、2人かなぁ」
「なんで?」
「だって、1人だと寂しいでしょ?」
「そっか。じゃあ、結婚したら親子4人で暮らすって事だな!」
「……えっ、雪ちゃん、それって……?」
「ははは」

あまりにもサラッとしたプロポーズだった。
美衣子はドラマや小説のような派手なプロポーズを好きな人からしてもらうのが密かな夢だったが、あのプロポーズも十分心に響き、とても嬉しくて顔が熱くなったのを今でも覚えている。

「雪ちゃん……」

写真を暫く見つめた美衣子は、その写真を写真立てから取り出した。
そしてその写真をポケットへ大事そうにしまい、それから携帯電話を手にとった。












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