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あたしは悪くないもん
作:猫満月



第6話 復讐


翌日、3日ぶりにあたしは登校した。
クラスメイトたちが次々に近寄ってきて、あたしの復帰を歓迎してくれた。

「るぅ〜! 元気になった?」
「大丈夫だったの?」
「もう具合悪くない……?」

あたしは軽く笑いながら、両手を小さく振って彼女たちの質問に、なるべく明るく答えた。

「もう、たった3日休んだだけなのに大袈裟だよ!」

瑠夏がこちらに歩み寄ってくるのに気がつき、あたしはクラスメイトたちを適当にあしらった。
そのまま瑠夏へと視線を移し、にっこりと微笑んでみせる。

「おはよう、瑠夏」

瑠夏は薄く笑みを浮かべておはようと返した後、口の端を微かに吊り上げて、ある方向を指差した。
そちらの方に視線を振ってみると、そこには憎き美衣子の姿があった。
美衣子は机で何かを必死で書いているようで、あたしが登校して来た事にすら気づいていないようだった。
瑠夏が少し声のボリュームを絞って、あたしに耳打ちする。

「それじゃあ作戦通りに、あいつのこと、いじめてやろ」
「……そうね、」

あたしは小さく頷いて、ふふ、と笑みをこぼした。
昨日、瑠夏に送ったメールの返信はこうだった。

【うん! いいよ。さすがにあいつ、許せないもんね。たくさんいじめてやろうよ。ちゃんと作戦練ってからやった方が上手くいくかもしれないから、作戦立てよう!】

……その後、2人で詳しく“作戦”の内容を練った。準備は万端だ。
さあ、美衣子! あんたに生き地獄を味わわせてあげるわ。
あたしは瑠夏と顔を見合わせて頷きあい、まっすぐに美衣子の方へ向かった。
美衣子は英語の課題をやっているようだ。すごく真剣になっているようで、これだけ近づいてもあたしたちに気づいた様子はない。
すぐ背後に回り、片手でその肩をポンポンと叩き、あたしは笑顔で美衣子に声をかけた。

「美衣子〜! おはよう!」

すると美衣子は一瞬驚いたような顔をして、慌ててこちらを振り返った。
そして、あたしたちの姿を見た瞬間、ほっとしたような、やわらかい笑みを浮かべた。

「おはよう、るぅちゃん、瑠夏ちゃん。良かった、今日はるぅちゃん、元気になったんだね」
「うん、心配してくれてありがとう! 美衣子に会いたくて、頑張って風邪治してきちゃった!」

勿論こんな台詞は口からでまかせだ。美衣子の顔なんて、もう二度と見たくない。
でも、美衣子には体験してもらわなくちゃいけないんだ。信じていた親友に裏切られることが、どれ程悔しくて辛いことなのかを……。

「あっ、あのね、るぅちゃん、瑠夏ちゃん……お願いがあるの」

美衣子は今にも泣きそうな顔をして、机に広げられているノートを手に取った。

「英語の課題出てたよね? 今日締め切りの……。私、間に合わなくて……。もし良かったら、見せてもらえないかなぁ?」
「ああ、うん。いいよ」

あたしはにっこりと笑顔を浮かべて頷いた。……瑠夏もまた、同じように。

「じゃあ、ちょっと待っててね!」

瑠夏と同時に美衣子の傍から離れ、それぞれ自分の机に向かう。
そして机の中から英語の課題を取り出して、瑠夏に目配せした。

「美衣子〜! ノート、投げるよ!」

あたし達は同時にそう叫び、ノートを思い切り力一杯、美衣子に向かって投げつけた。

「……えっ!」

美衣子は慌ててノートを受け取ろうと身構えたが、あたしと瑠夏が正反対の方向から投げたせいで、ノートは、美衣子の腹部と頭部に命中した。

「きゃあっ!」

小さく悲鳴を上げ、美衣子がその場に蹲った。……右手で腹部を、左手で頭部を押さえて涙目になっている。
一瞬だけ、周りのクラスメートがその声に驚いてこちらを見た。
あたしと瑠夏は、きゃっ! とわざとらしく叫んで 、慌てて美衣子の側へ駆け寄った。

「ご、ごめんね、美衣子!」
「大丈夫? 怪我しなかった?」
「うん……へ、平気だよっ! ちょっと痛かっただけ。ノート、ありがとう!」

美衣子はそう言って微笑み、あたしたちのノートを握り締めて首を軽く横に傾げた。
その笑顔と仕草を見たあたしは、一瞬にして作り笑顔を顔から消し去った。

何笑ってんのよ。幸せそうに……楽しそうに……。
あたしは、“平気”だなんて言えないくらいに傷ついたんだよ?
痛くて、痛くて、苦しくて、苦しくて…… この3日間、呼吸をすることすら必死だった。
それなのに、それなのに、どうしてあんたは笑うのよ? このあたしの、目の前で。

「瑠夏。トイレ行こ」

あたしは瑠夏の手を引き、廊下に向かって歩き出した。
慌てて美衣子がついてこようとしたけど、振り返って、大声で怒鳴るようにして

「美衣子は課題しなきゃでしょ? ……すぐ戻ってくるから、やってなよ」

そう言って、2人きりで廊下に出た。












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