第66話 殺人疑惑
手を洗い終わった後、美衣子は突然3人が寝ていた布団に倒れ込み、そのまま寝息を立て始めてしまった。
その美衣子を取り囲むようにして、3人は座り込んでいた。
瑠夏は美衣子の血まみれの服に一瞬だけ視線を振り、すぐさま何か見てはいけないものを見てしまったかのように慌てて目をそらした。
そして、震えている自分の手をもう片方の手で押さえながら、掠れた声で呟いた。
「美衣子、一体どうしたんだろう。この血、誰のなんだろう……」
奈々は暫く黙っていたが、沈黙に耐え切れなくなったようで、瑠夏の問いに小さな声でこう答えた。
「……わからないです。帰ってきたら血まみれで、放心状態で……」
それを聞いていた京子が、泣きそうな声で自分の考えを述べた。
「でも、普通に考えるなら、これ……あのストーカー男の血なんじゃないの? だって、美衣子はあいつに会うために出かけたんだから」
「うん、あたしもあいつの血だと思う。だけどこれ、すごい量だよ。これじゃあまるで、人を殺した時、みたいな……」
京子と奈々は、瑠夏のその言葉で黙り込んでしまった。……実は2人もそう考えていたのだ。もしかすると、美衣子はあの男を……殺してしまったのではないだろうか、と。
3人は美衣子から少し離れ、顔を近づけて声を落とした。
「でもさ、もしそうだったとして、どうして殺しちゃったんだろう。美衣子、けじめをつけるって言ってたけど、もしかして最初から殺すつもりで……?」
「違うんじゃないかな。計画的犯行だったら多分着替えとか用意していくと思うよ。こんな血まみれで帰ってきたら不自然じゃない」
「……もし美衣子さんがあの人を殺したんだとしたら……」
そこで一旦言葉を切り、奈々は美衣子をちらりと見て続けた。
「あの男の人と会って……耐えられないくらい恐ろしいことがあったのかも……」
「……」
「耐えられないような恐ろしいこと、ねぇ……」
「奈々には何もわかんないです。だから、話は美衣子さんが目を覚ましてから聞きましょう」
「……うん、そうね」
奈々の言葉に残りの2人も賛成し、美衣子の目が覚めるのを待つことにした。
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