あたしは悪くないもん(64/90)縦書き表示RDF


あたしは悪くないもん
作:猫満月



第63話 追いかけっこ


「無駄だよ、どんなに悲鳴を上げたって誰も来ない!」

男の声が追いかけてくる。美衣子はただひたすら前を見つめて走った。
足元は枯葉か何かなのだろう、足を下ろすたびにカサカサと不気味な音を立てた。
そしてその枯葉の音が更に美衣子の恐怖心を煽った。

「いや! 誰か……誰か助けてー!」

必死で叫ぶが、その大声は闇の中へ吸い込まれていった。
そして後ろからは、自分を追ってくる足音が確かに聞こえてくる。
気のせいか、その足音は少しずつ近づいているような気がした。

美衣子は半狂乱になりながら、とにかく全神経を足に集中させた。
とにかく逃げなければ。捕まれば何をされるか分からない。
もうとっくに美衣子の足は悲鳴を上げていた。
しかし、募っていく恐怖心が美衣子の体を動かした。

美衣子は首を横に振って、なんとか気を落ち着かせようと思った。
落ち着いて、森から抜け出すのだ。そして山をおりて、民家に助けを求めれば……。
……が、その時。余計なことを考えていたせいで、美衣子は何かに足をとられて転んだ。

「きゃあ!」

思わず大きな声で悲鳴を上げてしまった。
慌てて後ろを振り返り、足元を確認する。……躓いたものは 木の根だった。
土から飛び出している太い木の根に、靴が挟まってしまって抜けなくなってしまったのだ。
美衣子は全身の力を振り絞って、両手で足を引っ張った。
何度か強く引っ張ると、ボコッという音と共に足が根から抜けた。
片方の靴が脱げてしまったが気にも留めず、美衣子は再び駆け出した。

先ほどから目の前に出現する木の枝が邪魔をして、中々前へと進めない。
しかし、恐怖は足を止めることなく追いかけてくる。
靴が脱げてしまった足は擦りむけ、痛々しく血が滲んでいた。

暫く走っていると、広い空間に出た。その瞬間、美衣子はその場に崩れ落ちた。
目の前には、道が無かったのだ。……そう、行き止まりだったのだ。
右を見ても、左を見ても、そこは崖になっていて進めそうに無い。

(……ど、どこか別の道、探さなくちゃ)

美衣子はよろめきながら立ち上がり、崖からどうにか降りることが出来ないかと調べ始めた。
丁度その時、震える美衣子の腕を、後ろから誰かが掴んだ。

「つかまえた」












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう