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あたしは悪くないもん
作:猫満月



第58話 決断


美衣子の脇腹に包丁が突き刺さり、血が滴り落ちた。
それを見た瞬間、京子は大きな悲鳴をあげ、両手で顔を覆った。

「み、美衣子! 大丈夫?」

瑠夏が慌てて駆け寄り、美衣子の傷口を診る。……出血は大分酷い。だが、深く刺してはいないようだ。
少し安心した瑠夏はすぐさま美衣子の傷口を止血することにした。部屋の隅に置いてあった救急箱を取り、中から消毒薬とガーゼ、包帯を取り出す。
美衣子は泣いていた。脇腹を押さえ、血まみれになった自分の手を見つめて。

「痛いよ……ッ 痛い、」
「美衣子、落ち着いて。大丈夫だから」

瑠夏は優しくそう呼びかけながら手当てを続けた。
涙目になった京子は、奈々を強く睨み付けて叫んだ。

「……っ酷いよ、奈々! どうして美衣子を傷つけるような事言うの!」

すると奈々は俯いて、辛そうに美衣子達から目を背けた。

「……ごめんなさい」
「ごめんなさいで済む問題じゃないよ! 大体奈々はいつもそうやって……」
「ま……待って、京子ちゃん」

奈々を批判する京子の言葉を遮り、美衣子は大声をあげた。
それから、痛みに顔を歪めながらも何とか笑みを作り、奈々を見つめる。

「奈々ちゃん、ありがとう。私やっと、気づいたよ。甘えてるだけじゃ、何も出来ないよね。行動しなきゃ、ダメなんだよね。私、これからは自分の命を簡単に絶とうなんて絶対に思わないから……」

その言葉に、奈々の顔が綻んだ。はにかみ、瞳に涙を浮かべる。

「……ほんとにごめんなさい。奈々、不器用だから……、どうやって伝えれば良いのか分からなくて、……あんな酷いこと」
「ううん、むしろ強く言って貰えて良かった。本当にありがとう、奈々ちゃん」

美衣子の手当てが済んだ後、京子が、疑問に思っていたことを口にした。

「ねぇ、美衣子? あのさ、その、どうして急に自殺なんてしようとしたの? だって昨日は、元気だったよね? それなのに、……どうして……」

言葉を選びながら話しているのか、京子の視線は宙を泳いでいる。
美衣子は暗い顔をして俯いた。……昨夜の出来事が脳裏を掠めた。
話すべきだろうか? ……そんな疑問が、ふと頭の中に湧いた。

美衣子は顔を上げ、決意を固めたかのように3人の顔を見つめた。
そして……震えながら、昨日の出来事を包み隠さず話し始めた。
あの男が、初めて見る人物ではないことも話した。
3人は真剣な眼差しで美衣子を見つめ、話を聞いていた。

全ての話を聞き終わった時、京子がテーブルを強く叩いた。
バチンという大きな音。テーブルは衝撃を受けて大きく揺らいだ。
京子の瞳には涙が溜まっていた。ぶるぶると体を震わせながら、美衣子の両手を握り締める。

「美衣子、それは辛すぎるよね……あたしだって、死にたくなる。きっと、その男を恨んだよね。でも、大丈夫。ちゃんと解決できるわ。その男は放火犯であり、思い込みの激しいストーカーでもあり、殺人者でもある……。そいつは法的にも裁かなければならない男よ! 警察に相談しに行きましょう」

京子の提案を聞いた美衣子は、ぱっと顔を上げた。
警察……、どうして自分は今まで気がつかなかったのだろう。
そうか、警察に相談すればきっと、あの男を捕まえてくれる!

美衣子が頷くのを確認した京子は、すぐさま立ち上がり美衣子の手を引いた。

「行こう、美衣子! このマンションの直ぐ傍に、確か交番があったよね。そこでまずは相談してみよう。一緒に行ってあげるから、頑張って全部話そう!」












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