第56話 繋がり
丁度その時、机の下で携帯電話が鳴り響いた。
戸惑いながらも携帯電話を拾って、誰からの電話か確認する。
画面には、【井上 瑠夏】と表示されていた。
少しだけ電話に出るのを躊躇った美衣子だったが、意を決して通話ボタンを押した。
「……もしもし」
『あ、もしもし! 瑠夏だよ。……美衣子、元気? 今日学校来るって言ってたのに来てないから、ちょっと心配になっちゃって』
「あ……ええと、」
一瞬、美衣子は考えた。昨夜の事を話すべきだろうか? 話せば少しは楽になれるだろうか?
……しかし瑠夏は、あのことを話したら、私のことを嫌いになるかもしれない。
―――……迷った末、美衣子の口から出た言葉はこれだった。
「―――ちょっとだけ、調子が悪いんだ。風邪かなぁ? だから今日は学校行けなくなっちゃった。ごめんね」
すらすらと自分の口から嘘が飛び出したことが何より驚きだった。
それと共に、自分の心の弱さにつくづく腹が立った。
その言葉を信じたらしい瑠夏は、いつもどおりの明るい声で会話を続けた。
『そうなの? 残念だけど、しかたないね。……お大事にね』
「うん。……あり、がと」
何故だか分からないけど、急に涙が溢れてきた。止めようと思っても止まらない。
結局美衣子は電話を持ったまま嗚咽を洩らしていた。
それに気づいたらしい瑠夏が、電話の向こうで慌てた声を上げる。
『美衣子! 大丈夫? 泣いてるの?』
瑠夏たちにそう判断した美衣子は慌てて更に嘘を重ねた。
「え、ち、違うよ! 泣いてなんて、ないよ? で、電波……悪いのかもしれないね。とり、あえず、切るね。……ば、ばいばい」
瑠夏の返事も聞かず、美衣子は一方的に電話を切った。
もう電話がかかってこないように、携帯電話の電源もオフにした。
その直ぐ後、美衣子はその場に膝から崩れ落ちた。
今の美衣子には、声にならない叫び声を上げながら泣き続けることしか出来なかった。
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