第44話 祈り
それから、時間は流れていった。既に数時間が経過している。先程から美衣子は何度も何度も時計を確認している。
「雪ちゃん……」
時折、ぽつりと美衣子は雪山の名前を口にした。その度に看護婦さんは気の毒そうな顔をして、
「美衣子ちゃん、手術、長引くから病室に戻る?」
と、気遣ってくれた。しかし、美衣子は首を横に振った。
「いえ。私、雪ちゃんの傍で雪ちゃんを応援したいんです。今まで何度も、そう数え切れないくらい雪ちゃんは私を助けてくれた。だから私も雪ちゃんの事を少しだけでも助けてあげたいんです。せめてここで力になれるように祈らせてください……お願いします」
「そうね……。美衣子ちゃんが祈ってくれたら、きっと雪山君は元気になるわ。美衣子ちゃんの祈りを、神様が聞いてくれないわけないものね」
「……はい、そう信じてます」
包帯で巻かれた美衣子の両手。美衣子はその手を力一杯合わせて、ぎゅっと握り締めていた。そのせいで包帯がところどころ捲れ、血が滲んでいる。
「美衣子ちゃん、包帯、取り替える?」
看護婦さんが心配そうにそう訊いてきたが、痛みに顔を歪めながらも美衣子はそれをきっぱりと断った。
「いいんです。雪ちゃんはこれよりもっと辛い思いをしてる。私は、ほんの少しだけでも雪ちゃんと同じ思いをしたいんです。一緒に苦しんで一緒に乗り越えられるように頑張りたいんです」
それから看護婦さんは何も言っては来なかった。きっと気を遣ってくれているのだろう。
そのまま時計の針は時を刻み続けていった。
病室内は消灯時間を過ぎ、ほとんど真っ暗になった。
それでも美衣子はただ両手を硬く握り締めるだけで
眠そうな顔を見せることも あくびをすることも無く
じっと【手術中】の3文字を見つめ続けていた。
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