第43話 手術
看護婦さんの足が、ある扉の前で止まった。美衣子もその場で足を止め、看護婦さんの隣へと移動して、目の前にある扉を見上げる。
そこは手術室だった。赤いランプが点いている、ということは……今、誰かがこの部屋の中で、生死の境を彷徨っているということなのだろう。
「か、看護婦さん……あの、どうして、こんなところに……?」
不安になり、小さな声でそう尋ねると、看護婦さんはそっと美衣子の肩に手を置いて、こう言った。
「雪山君ね……、さっき、ニュースで報じられたばかりなんだけど、すぐそこの駅で、電車と接触してしまったらしいの。なんとか一命は取り留めたんだけど、重態で意識も無いの。手術も……、極めて難しい手術だから、その……、もしかすると、成功しないかもしれない、って。本当は患者さんをこんな風に連れてきてはいけないんだけど、美衣子ちゃんと雪山君は恋人同士だったみたいだから、美衣子ちゃんが居てくれたら、雪山君も頑張れるんじゃないかと思って……」
……美衣子の耳には、もう看護婦さんの言葉はほとんど聞こえていなかった。
雪ちゃんが電車に? 嘘だよね? うん、絶対嘘だ。
だって雪ちゃんさっきまで私のところに居たよ?
抱き締めてくれたよ?犯人捜すって言ってくれたよ?
私のこと護るって……言ってくれたんだよ?
「雪ちゃん! 雪ちゃん……!」
美衣子は手術室の扉に駆け寄り、大声で雪山の名前を叫んだ。廊下中に美衣子の叫び声が木霊する。
「雪ちゃん、お願い、頑張って! これからもずっと私の傍に居て。お願い……いなくならないで……!」
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