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あたしは悪くないもん
作:猫満月



第41話 悪寒


雪山は、駅のアナウンスを聞きながらぼんやりと佇んでいた。自分の乗る汽車が来るまで、まだ少し時間がある。

「……はぁ」

白線の傍で溜息を吐き、小さく舌打ちをする。

「どうしてこんな事になっちまったんだよ……」

俺は、ただ美衣子を護ってやりたかっただけなのに。自分の正しいと思うことをした……それだけなのに。
転校しろだなんて、あまりにも酷すぎる仕打ちだと思った。
もう一度重々しく溜息を吐いた、その時だった。誰かの息遣いのようなものが聞こえた。

「はぁー……はぁー……はぁー……」
「?」

不審に思った雪山が咄嗟に後ろを振り向くと、雪山の後ろには、フードをかぶり、更にその上から帽子をかぶった怪しい男が居た。
……大きなリュックサックを背負っている。リュックの中からは美少女フィギュアのようなものが突き出していた。
男は息遣いを荒くしたまま、携帯電話を弄っていた。……メールだろうか? 男はボタンを押して携帯を閉じ、辺りをきょろきょろと見回した。
ふと、その男と目が会ったような気がした。しかし男は雪山から目を逸らすと、ゆっくりと売店の方へと歩いていった。

(気のせいか。それにしても変なおっさんだな)

雪山は腕時計と時刻表を交互に見ながら、一歩白線の外に出た。そろそろ汽車が来るはずだ。携帯電話を開き、美衣子にメールでも送ろうとボタンを押す。……悲劇が起こったのは、その直後だった。

「きゃああああ! 危ない! 逃げてー!」

大きな悲鳴が、後ろから聞こえた。何事かと雪山が振り返ると、先程見た息遣いの荒い男が、自分の方へ猛然と突進してくるのが見えた。

「うわ!」

男の手には長く刃を出したカッターナイフが握られている。すぐそこの売店で売られているものだった。
雪山は大慌てで男の傍から逃れ、悲鳴をあげながら走る。男は雪山の後を追って走ってきた。息遣いを、更に荒げながら。

「な、なにするんだよ!」

怒鳴り声を上げる雪山。……男の瞳が、ギラリと光った。

「お……お前だろ? 僕の美衣子ちゃんの、か、彼氏面……してるやつって」
「な、何でお前があいつの事知ってんだよ? 彼氏面って一体何の事だ? 俺はあいつの彼氏だぞ?」
「か、か、彼女がどれだけ、い、嫌がってるか知りもせずに、そ……そんな言葉を吐くな! 美衣子ちゃんは僕のものだ! お、お、お前みたいなやつには、絶対に渡さない!」

男が物凄い勢いで突進してくる。男の見た目からはとても考えられないようなスピードだった。

「お、おい! やめろ、危ねぇ!」

男が突き出したカッターナイフが、雪山の腕に深く突き刺さった。赤い血が溢れ出し、腕を伝って地面へ落ちて行く。

「うああああ!」

雪山は叫び声をあげ、腕を押さえて男から逃げる。周りの人たちも、それを見て悲鳴をあげ、逃げ惑う。

「美衣子は僕のものだああああああ!」
「っおい、待て、やめろっ……やめろおおおお!」

男が雪山の体を線路に押し出すのを、誰も止められなかった。

『白線の内側に下がってお待ちください。まもなく電車がまいります。白線の内側に下がって……』

雪山の耳に、自分が乗るはずだった電車の到着を知らせるアナウンスが聞こえた。必死に手足をばたつかせながら宙を舞う雪山と、何が起こったか理解できず、呆然とそれを見つめている人たち。

「ぎゃああああ!」

雪山の叫び声を掻き消すように、電車が大きな音を立てながらホームに到着した。
人々の目の前で、雪山の体は勢いよく電車に叩きつけられた。



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おかげさまで読者様80人突破しました(*・ω・*)
本当に有難う御座います!!感謝感謝です。
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