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あたしは悪くないもん
作:猫満月



第31話 炎


私は、激しい息苦しさを感じて薄目を開けた。
どうやら、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
目を擦りながら、はっと顔をあげる。何か、物音が聞こえたのだ。
一体何なんだろう。振り返った私は、あまりの驚きに両目を見開いた。
部屋の入り口付近にある本棚が、音を立てて燃えていたのだ。
一体、どうなってるの? パニックに陥り、慌ててベッドから立ちあがる。
良く見ると、燃えているのは本棚だけではなかった。大事にしていたぬいぐるみも、お気に入りのカーテンも、みんな燃えている。
これは、何? ……火事?
やっと思考がはっきりしてきて、ようやく私は、“逃げなければ”と考えた。
足に火傷を負いながら、窓に駆け寄って、網戸を開け放つ。
悲鳴をあげて助けを呼ぼうとした瞬間、気付いた。そうだ、声が出ないんだった。
自分でこの家から脱出するしかない。窓のそばに置いてあった花瓶に入っていた水を頭からかぶり、私は必死に扉をあけて、炎の道になっている階段を駆け下りた。
リビングは既に火の海だった。すぐに玄関に向かおうとした私の目に飛び込んできたのは、私の思い出が沢山詰まったアルバムだった。
るぅちゃんたちと撮った思い出の写真、雪ちゃんと撮った、幸せいっぱいの写真―――……。
そんな素敵な思い出がたくさん詰まったアルバムを、こんなことで失うわけにはいかない。
手がもう熱くて熱くて仕方が無かったけれど、私は歯を食いしばりながらアルバムを手に取った。
表紙が燃えて、火がついている。それを自分の服のすそで押さえて消しながら、玄関に向かって全力疾走する。
煙と火傷で、頭がくらくらする。目が痛い、喉が痛い、腕が、足が、ぜんぶ痛い……。
鍵をあけて、扉を強く押す。チェーンががしゃりと音を立てて、私の邪魔をした。
泣きそうになりながら、熱で少し溶けている熱いチェーンをつかんで外し、今度こそ外に出ることに成功した。
裸足で外に飛び出したけれど、足の裏の火傷の痛みで立っていられなくなり、私はその場に倒れこんだ。
咳き込みながら、燃えて行く自分の家を見上げる。
今まで、生まれてからずっと私を支えて、見守ってくれた大好きな家が、炭に変わっていく。
本当に、炎というものはすべてを燃やし尽くしてしまうんだ。

泣きながら、ポケットを探って携帯電話を取り出す。……助けを、呼ばなくちゃ。
奇跡的にも携帯電話は壊れておらず、私は火傷で爛れた指で、消防署に連絡をした。
電話を切った途端、火傷の痛みが急に襲い掛かってきて、私はそのまま気を失った。












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