第27話 偽者
学校に着いた。今の時間は1限目らしい。
校舎内は、しんと静まり返っている。時折、どこかのクラスから笑い声が聞こえてくる。
それにつられる様にして、あたしも小さく笑みを浮かべた。
真っ直ぐパソコン室へ向かい、昨日帰りに職員室から借りパクしておいた鍵を使って、室内に侵入する。
この時間はどのクラスもパソコンは使わないということも、あらかじめちゃんと調べてきてある。
この1時間は思う存分作戦を実行することができるってわけよ。
室内に入り、内側から鍵を閉める。電気は点けないようにして、ゴム手袋をし、入り口から一番離れたPCを起動した。
万が一、今回の作戦によって何らかの問題が起こったとしても、学校のPCならあたしが割り出されることは無いだろう。
指紋を調べられないようにゴム手袋もしてきたし、この学校はセキュリティが甘いからアクセス制限もかかっていないし、準備は万全だ。
裏板のアドレスを打ち込んで、アクセスする。裏板では今日も色々な違反がされまくっていた。
マウスを操り、暫くスクロールして、昨日目をつけておいた記事をクリックする。
《東京都に住む、フリーターで未婚の44歳の男です。よく出没するところは秋葉原です。週に5日は居ます。誰かメールしませんか? 良ければ若い女の子が理想です。(僕は軽くオタクなので、それでも良い方のみメールお願いします)》
早速その男のメールアドレスに、登録しておいたフリーメールアドレスでメールを送る。……文面はこうだ。
《初めまして! 14歳、中2の女の子です! 同じく東京都に住んでます。美衣子っていいます。気軽にみぃこって呼んで下さい★ 良かったらお返事ください》
それを送って数分。なんと、もう返信がきた。
(うわ、何こいつ。ほんとに仕事ないわけ?)
顔を顰めながら、男からの返信メールを開く。
《初めまして。14歳かぁ、若いねぇ。こんなおじさんだけど、メル友になってくれるの? あ、もし良かったら美衣子ちゃんの顔をみてみたいな。ちょっと自信ないけど、僕も自分の顔写真添付しておくね》
「……うわっ」
添付ファイルを開いたあたしは、画面の前で吐きそうになった。
添付されてきたそいつの写真はかなり気持ち悪かったのだ。
脂でテカった額、出っ歯、ハゲ、牛乳瓶の底のようなレンズの眼鏡、鼻の穴が広く、ニキビが多い。そしてかなり太っている。
「こういうやつも生きてるだけで害よねー。ま、お似合いっちゃあ、お似合いか」
あたしは1人そう呟きながら、男に返信メールを作成した。
《かっこ良いじゃないですかぁ! え、私の顔ですか? ほんと自信ないんです……。おじさまみたいな素敵な方にこんな顔見せるの嫌なんですけど、勇気出しちゃいますね》
携帯に、以前美衣子と撮ったプリクラの画像を保存しておいたので、それを引き出して、添付して送った。
このプリクラは美衣子がすごく可愛く写っていたものだ。忌々しいこのプリクラがこんなかたちで役立つなんて、思いもしなかったわ。
あたしは喉の奥から笑い声をあげながら、男とメールのやり取りをした。
《み、美衣子ちゃんすごく可愛いね! 僕が今まで見た女の子の中でいちばんだよ!》
《ええっ! そんなあ、本当ですかぁ? そんなこと言ってくれるの、おじさまだけですよぉ! 今日、学校お休みだから暇なんですけどー……良かったら遊びませんかぁ?》
《い、いいの? 僕もぜひお願いしたいな! どこかで待ち合わせしようか。どこがいいかな?》
《私に決めさせてくれるんですか? おじさまってば優しい〜っ! ええっとぉ、●×公園なんてどうですか? 私の家のすぐ近くなんです》
《ほ、ほんとかい? うん、僕も電車ですぐ行けるよ。これからすぐ向かうね》
《はい! お願いしますー! あ、そうだ。今度からメールこっちに送ってもらえますか? こっちのアドレスは携帯のアドレスなので、返事早いですよー! ⇒haru.mi-ko@bocomo.ne.jp》
……最後に書いたのは、本当の美衣子のメルアドだ。いきなりメールが来たら、びっくりするだろうな。
(さて、次は……)
あたしはポケットから携帯電話を取り出して電源をつけると、美衣子の自宅へ電話をかけた。
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