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あたしは悪くないもん
作:猫満月



第24話 罪悪感


それから、先輩は長いこと学校に来ることができなくなった。
後輩にわいせつな行為をした(ということになった)ため、学校側から1ヶ月の謹慎処分を受けたのだそうだ。
聞いた話によると先輩は、校長に、あたしたちが美衣子に嫌がらせをしていた、と必死に伝えようとしたらしい。
しかし先生に話を聞かれた美衣子は何も言わず、蒼ざめて首を横に振るばかり。駅の電話にも全く証拠は残っていなかった(念のために指紋を拭き取っておいたからね)。
あたしたちの学校生活はまた平和なものになった。美衣子もいなければ、雪山先輩もいない。
でも、あたしは実を言うとまだ満足していなかった。もっともっと、あいつらを苦しませなければ……。

「あーあ、また退屈になっちゃったね」
「え? 平和になったんだから、まぁいいんじゃん?」
「何言ってるのよ、瑠夏ってば。平和なんてつまんないだけじゃない」

あたしはイライラしながら、力一杯美衣子の机を蹴り飛ばした。

「こいつが学校に来なきゃ、嫌がらせもできないしさぁ!」

あたしは天井を睨みながら舌打ちをした。

「こうなったら、もう1回イタ電かけてやろうよ。来なきゃ殺すって言ってやろ」

椅子から立ち上がり、財布を握り締めて、瑠夏たちの手を引く。

「ほら、行こ」
「……え? ま、まだやるの?」

瑠夏が少し不安げな表情をしてあたしを見上げる。あたしは眉を吊り上げて、物凄い剣幕で怒鳴った。

「当たり前じゃん! もっともっともっと苦しませてやんなくちゃ、あたしの気はおさまらないわ!」

……その時だった。京子が、ゆっくりと立ち上がったのだ。
京子は拳を硬く握り締めて俯いている。体が小刻みに震えているのが分かった。

「……ど、どしたの、京子?」

瑠夏が話しかけても反応せず、京子は何かを我慢しているように唇を噛み締めている。

「……何よ、京子。あたしの命令が聞けないの?」

乱暴な口調でそう尋ねると、京子は震えながらあたしのほうに顔を向けた。その目には涙が溢れていた。顔が、何故か真っ赤に染まっている。

「きょ、京子?」

瑠夏が心配そうに京子の手を握る。しかし、京子はその手を振り払い、小さく呟いた。

「るぅ……。もう、やめようよ」
「……はぁ? 何言ってるのよ、今更」

京子は震えながら、あたしの方に1歩踏み出してきた。その決意の固まった瞳に気圧され、あたしは1歩後ろに後ずさる。

「もう、十分……でしょ……? これ以上何かしたら、ほんとに、……美衣子、死んじゃうかも……っ」
「……」

友達思いの京子のことだから、きっと今までずっと美衣子をいじめている事に深い罪悪感を感じていたのだろう。
でも、あたしはその涙ながらの説得に、全く耳を貸さなかった。

「ふーん、今更怖くなったんだ。怖気づいたんだ? ……この、臆病者!」

あたしは京子の肩を強く押して怒鳴った。京子は悲鳴を上げて、床に尻餅をつく。
床に座り込んだまま俯いている京子に向かって、あたしは冷たく吐き捨てた。

「抜けるんだったら抜ければいいわ。でも、美衣子の次に苦しむことになるのは、あんただからね」

スクールバッグを片手に、あたしはスタスタと教室の入り口に向かって歩き出した。
瑠夏が京子の手を引いて立たせながら、慌ててあたしの方に顔を向ける。

「ど、どこ行くの? るぅ……」
「気分悪いから早退する」

ぶっきらぼうにそう返して、乱暴に教室の引き戸を閉め、廊下を歩き出す。
苛立ちで顔が真っ赤になっていくのがわかる。……ああ、腹が立つ!
美衣子がこの世から消えちゃえば問題ないのに。そうすればみんな、あたしの仲間でいてくれるのに。
……今すぐ、美衣子の存在を消したい。それも、とびきり苦しませながら……。

よし。あいつらに裏切られるのも面白くないから、次の作戦はあたし1人で実行しよう。
ずっとあたしの中で温めてた、この最高の作戦を……。












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