第20話 空白
「美衣子、どうなったかな?」
瑠夏がニヤつきながらあたしの腕を突っついた。あたしはその問いに対して、肩をすくめて首を傾げて見せた。
「さぁ、どうなったかなあ? いっそのことこのまま自殺しちゃえば? って感じなんだけどー」
「それ思った! 死ねば良いのにね。保健室で首吊りとか、ウケるー!」
あたしたちはその様子を想像し、大きな笑い声を上げた。
「アイツならやりかねないって! 頭も精神も、めっちゃ弱いからあ」
「だよね。っていうかさぁ、死ぬんだったら自分の部屋とかにしてほしいかも」
「うんうん、そうだよね! 流石に学校で死なれちゃ大迷惑だもんねー」
「死ぬなら1人で死ねって感じ?」
「言えてるー!」
腹がよじれそうになるほど笑い声をあげながら、あたしは窓の外に目をやった。
そして、その目が捉えた人物を、思わず口に出してしまっていた。
「あ、美衣子だ」
あたしの声に気づいた瑠夏が、えぇ? とわざとらしく大声を上げた。
「うっそー! どこ?」
「あそこ」
あたしが指差した先には、先生に肩を抱かれるようにして、フラフラと歩く美衣子の姿があった。
先生が助手席の扉を開け、美衣子は車に乗り込んだ。ちらりと見えたその瞳には、全くと言って良いほど生気が感じられなかった。
車はエンジン音を響かせて学校から走り去っていく。それを見送ったあと、奈々がぽつりと呟いた。
「相当目が……、イッちゃってましたね……」
それに反応したように瑠夏が、ぷっと噴き出して
「ショックのあまりクスリとかに手ェ出したんじゃないの?」
と冗談っぽく言って、笑った。
***
美衣子はその日から学校を休んでいる。もう1週間くらい経つだろうか。
だけど、誰も心配なんてしていない。
何度も言うようだけれど、あたしたちのクラスはクラスメイトに関心がない。
誰が休んでても、誰がいなくても、誰も気にしない。誰も気づかない。
このクラスはそんな悲しいクラスだ。ただ、勝手に先生が決めたクラスだ。
こんなクラスにいる自分以外の人間なんて別にいらないし、どうでも良い。誰も、自分以外の人間なんかに興味を持ったりしないんだ。
あたしは椅子に腰掛けたまま、両手を上に突き上げて大声を上げた。
「あーあ! “おもちゃ”がいないと暇ぁ!」
瑠夏、京子、奈々も、頬を膨らませて頷いた。
「落書きするスペースももう無いし……」
「外靴、上履き、体操服、ジャージは全部切り刻んでゴミ箱に入れたし……」
「教科書類は……みんな、燃やしちゃいましたし……」
あたしたちは顔を見合わせて、どんよりと溜息を吐いた。
とにかく、本当に暇で暇で仕方が無い。
早く来ないかなぁ……、ストレス発散のための道具。
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