第19話 声
「美衣子さんは体調が良くなってから教室に戻るって事、ちゃんと担任の先生に伝えておいてね」
保健の先生の言葉に、るぅちゃんたちが元気良く返事をする。
「はーい! わかってます!」
失礼しました〜、という声が聞こえて、ドアが閉まった。
私は、ベッドの上で天井を見上げていた。虚ろな瞳からは涙が流れ落ちて、シーツを濡らしていく。
その状態のまま5分ほどして、先生がカーテンを開けて私の顔を覗き込んだ。
「美衣子さん、どう? 落ち着いたかしら?」
私は涙を流しながら、黙って先生に目を向けた。私の瞳から流れる涙を見て、先生は困ったような顔をした。
「どうしたの、美衣子さん? どうして泣いているの……?」
先生……どうしよう。私、もうダメだよ。お願いだよ。気づいて、先生。
「美衣子さん?」
何も答えない私を、心配そうに見つめる先生。
私はベッドから勢い良く起き上がった。血が大量に流れたせいか、ちょっと頭がクラクラした。
先生の机に手を伸ばして、筆立てからシャープペンシルを取る。
机上にあったメモを一枚破って文字を書き込み、それをそのまま先生に手渡した。
『先生、助けて』
その文字を見た先生の表情が、少し曇ったのが分かった。私は、震える手で更に文字を書き込んだ。
『声が出なくなっちゃった』
「……え?」
メモを読んだ先生が、慌てて立ち上がる。先生の体がぶつかって、消毒薬の入った瓶が床に落ちて、音を立てて割れた。
「美衣子さん! それ、本当なの?」
何故だかたまらなく不安を覚えた私は、先生のその言葉に、何度も何度も頷いた。
これじゃあもう誰にも助けを求められない。叫び声を上げることもできない。
もしこれからるぅちゃんたちにもっと酷いことをされて、誰かに助けを求めたくても叫び声をあげたくてもそれが出来なかったら、私はどうなっちゃうんだろう。
殺されちゃうの?
先程の体育の時間に誰かに言われた、“殺されてぇのかよ”という言葉が、再び脳内に蘇る。
私は両手で両耳を強く塞ぎ、心の中で必死に叫び声をあげながら蹲った。
嫌! そんなの、絶対に……絶対に嫌!
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