第18話 保健室
目が覚めたら、私はベッドの上に寝ていた。かすかな薬品のにおいで、此処が保健室だと分かった。
カーテン越しに、誰かの声が聞こえる。……保健室の先生と、るぅちゃん達の声だ。
私はそっと起き上がり、カーテンに耳を押し付けて、静かに目を閉じた。
「どうしてあんなことになったの? あなたたち、原因を知っているでしょう?」
先生の声は真剣だった。でも、るぅちゃんたちが正直に白状するはずが無い。
私はシーツをギュッと握り締めて唇を力一杯噛み締めた。
今すぐカーテンを開けて、言ってやりたかった。“先生、犯人はるぅちゃんたちだよ”……そう言ってやりたかった。
……だけど、出来なかった。私はまだ心の片隅でるぅちゃん達の事を大切な親友だと思っているから……。
沈黙が続いたかと思うと、突然、るぅちゃんの妙に明るい声が聞こえてきた。
「美衣子、なんか変だったんですよー! 危ないって言ってるのに、跳び箱をどんどん積み上げて……」
るぅちゃんの嘘に、瑠夏ちゃんの嘘が重なった。
「そうなんです! 10段超えたときは流石に焦りましたよ〜。勿論、あたしたち、止めたんですよ?」
瑠夏ちゃんの次には京子ちゃんが、真実味を帯びた嘘を吐く。
「なのに美衣子、『練習のためだもん』とか言って、勢いよく跳び箱に突っ込んでいって……」
そこで京子ちゃんの言葉は途切れた。それから一息置いて、奈々ちゃんが言った。
「止める暇も、なく……。ああいうことに……なっちゃったんです」
視界が涙でくもった。怒りのせいで、体が小刻みに震えだした。
危ないなんて言ってない。止めたなんて、嘘ばっかり。
みんながそうさせた。みんなが突っ込ませた。みんなが私をいじめた。
「他の子にも聞いてみてください。あたしたちの言ったことは本当ですから!」
るぅちゃんの、自信たっぷりのこの言葉。それを聞いた私の口元には、いつの間にか力の無い笑みが浮かんでいた。
……そりゃあ、そうだよね。だってクラスの女子は全員私の敵だもん。るぅちゃんの命令を聞かない人は居ないもん。
「……っ」
私は枕に顔を押し付けて、声を押し殺して泣いた。
悔しいよ。苦しいよ。辛すぎるよ……。
シーツに吸い込まれていく涙と一緒に、この世から消えてしまいたかった。
ふと、枕から顔を上げたその時、私は自分の異変に気づいた。
「……?」
あれ? どうなってるの? ……何か、変だ。
……嘘だよね。こんなの……夢、だよね?
これが勘違いではないと気づき、私は目を見開いて首を横に振る。こんなことって、現実に起こるの?
ねぇ神様、どうして? こんなに私を苦しめて何が楽しいの?
|