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あたしは悪くないもん
作:猫満月



第17話 偽りの友情


みんな、私が飛ぶのを待っているみたいだ。1歩後ろに下がって私を睨み付けてくる。
……でも、ちょっと待ってよ。みんな、私が運動音痴なの知ってるでしょう?
嫌な汗がじっとりと体操服に滲んでいく。みんなの顔が般若に見えてきた。
助けを求めるようにみんなの顔を見るが、誰も私と視線を合わせてはくれなかった。

「早く飛びなよ、美衣子」

るぅちゃんが列の1番後ろで、怒鳴ってる。
そんなの……無理だよ、るぅちゃん。だって、跳び箱、14段もあるんだよ?

「や、やだよ……っ無理だよぉ!」

瞳に涙を浮かべながら後ずさる私。しかし、るぅちゃんたちからの罵声は止まらない。

「いいから飛べよ」
「殺されてぇのかよ!」

“殺されてぇのかよ”……その一言が、私の胸に深く突き刺さった。

「……っ」

酷いよ。みんな、酷すぎるよ。
私は目を硬く瞑り、震える足を奮い立たせて、叫び声をあげながら跳び箱へ向かっていった。
わけのわからないまま、すごい衝撃が体を襲って、何かが崩れる音がした。
気がついた時にはいつの間にか、私は頭から血を流して倒れていた。

「……っ痛い……痛いよお……っ」

瞳から涙が溢れ、頭から流れる血が白いマットを染めていっても誰も助けてくれなかった。
みんな冷たい目で私を見て、それどころか数人、笑ってる人さえいた。
やっとその時、私は理解することができたんだ。……私は、1人ぼっちなんだ。
声を押し殺して、頭の痛みと胸の痛みに苦しみながら泣いていると、誰かがこちらに駆け寄ってくる足音が聞こえた。

「春風さん、どうしたの!」

視線を動かすと、体育の先生が血相を変えて此方の方へ走ってくるのが見えた。
どうしてだろう。すごく嬉しかったのに、私はその時少し先生を恨んでしまった。
先生がもっと早く来てくれていれば、私はこんな事にならなかったかもしれないのに、って。

「せんせ……い……」

声を絞り出して、泣きながら先生に手を伸ばす。先生は慌てて私の体を抱き起こした。

「どうしたの……! 大丈夫?」

舌が回らなくて、言葉を紡ぐことができなかった。
お願い、助けて先生。このままじゃ私、殺されちゃうよ……。

「とにかく、何があったのかは後で聞くわね。急いで保健室に行きましょう。……歩ける?」

言われるがまま、先生に支えられてのろのろと立ち上がる。
足がふらふらして、眩暈がする。立っていられない。
体操服に血が付いている。血が点々と床に落ちている。
目の前が霞み、体が痙攣する。倒れ込みそうになったまさにその瞬間……、体育館内に大きな声が響いた。

「先生、あたしたちも手伝います!」

その声に驚いて、思わず振り返る。……そう言ったのはなんと、るぅちゃんだった。
るぅちゃんたちは心配そうな顔をして、此方の方へと勢い良く駆けてきた。

「美衣子……大丈夫なの? まったく、あんな無茶するから……っ」

涙目のるぅちゃんがそう言って私の腕を掴む。他の皆も同じように私の体を支え始めた。
みんなに体を支えられた瞬間、全身に鳥肌が立った。
恐怖のあまり体が震えだす。脂汗が額に噴き出し、血の気が引いていく。

「いっ……いやぁ! 離してよお!」

私はは叫び声を上げ、その手を振り払った。るぅちゃん達は一瞬驚いたような顔をしたあと、悲しそうに目を伏せた。
やだ、やめてよ。その優しさも、その悲しそうな顔も、全部嘘なんでしょう? もう、惑わされるのは嫌だよ。
また勘違いしてしまう。また、友達になってもらえるのかもって、期待しちゃう……。
俯いてただ震えている私と、悲しげに俯いているるぅちゃん達。それを交互に見たあと、先生が私に尋ねた。

「どうしたの、春風さん。みんな心配してくれているのに……」

違う。そう言おうとしたけれど、舌がもつれて喉が渇いて声が出なかった。
口だけをぱくぱく動かして、また俯く。るぅちゃんが、私の腕を掴んでこう言った。

「先生。美衣子、ショックで混乱してるんだと思います。だから美衣子を早く保健室に連れていってあげてください!」

握られた手に、強く力がこもった。驚いてるぅちゃんの顔を見たら、るぅちゃんは恐ろしい笑みを浮かべて、唇だけをこう動かした。

「逃がさないわよ、美衣子」

……その直後、私の体から、フッと力が抜けた。












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