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あたしは悪くないもん
作:猫満月



第12話 狂人達の論舞曲《ロンド》


「みんな、おっはよー!」

元気良く教室に入ったあたしの元に、瑠夏が笑顔で駆け寄ってくる。

「るぅ、おはよーっ! 今日も、やるんだよね?」
「ふふ、当たり前じゃん! とことんやってやるんだから!」

胸を張るあたしを見て、瑠夏は嬉しそうに笑って大きく頷いた。

「あのね、るぅ! 奈々ちゃんが、るぅのために作戦考えてくれたんだって」

瑠夏はそう言って、自分の後ろにいた女の子をあたしの前に押し出した。
その子は、無表情で、あたしの前に1枚の紙を差し出した。

「……奈々が書きました。良かったら参考にしてください」

……この子の名前は、前田奈々まえた なな
何を考えているのかわからない不思議なタイプの女の子。
今まで1度も話した事は無いけれど、どうやらこの子もあたしに協力してくれるらしい。

「ええと……これ、は?」
「……美衣子さんをいじめる、って聞きました。だから、作戦を考えたんです。お役に立てるかどうかは……あまり自身が無いのですが」
「ふーん……どうもありがと。ね、内容見てもいい?」
「はい……どうぞ」

その返事を聞いて、折り畳まれた紙をゆっくりと開いた。
その紙には、沢山の文字が細かく書き込まれている。それらすべてがいじめの計画だということに気がついて、あたしは思わず目を丸くした。

「……うーん、下駄箱に虫入れたり机隠したり落書きしたりするのは、確かに王道だけどありきたりだよね」
「……やっぱり、そうですか……。とりあえず、漫画やドラマを参考にしたものが多いので……」

すると瑠夏がその紙を覗き込んで、急にニヤニヤ笑いを浮かべた。

「いいじゃん、この際全部試してみようよ。結構こういう王道のほうがキツいかもしれないよ?」

あたしはそれを聞いて、小さく笑い声を上げた。それから顔を上げて、頷く。

「……うん、そうしよっか。確かにそのほうがあたしたちも楽しいしね。奈々ちゃんも、手伝ってくれる?」

奈々は少し驚いたような顔をした後、すぐに、少し恥ずかしそうに頷いた。

「はい、勿論です。……あ、奈々で結構ですよ」
「ありがとね、奈々。ええと、それじゃ、瑠夏。京子も呼んできてくれる?」
「わかったぁー」

瑠夏が京子を連れて戻ってきたら、まずはありきたりないじめ第1弾を開始することにしよう。
あたしは口の端を歪めて、黒く微笑んだ。

京子、奈々、瑠夏の3人がそろったところで、あたしは3人を従えて下足場へと移動した。
ありきたりないじめ……の王道といえば、やっぱりこれでしょ?
あたしは美衣子の外靴を、下駄箱から片一方だけ取り出した。そして、奈々がさっき中庭から取ってきた湿り気のある土を、たっぷりと靴の中に詰め込む。
京子と瑠夏が、楽しそうに笑った。その笑い声につられるようにして、あたしも笑う。
あたしはもう片一方の靴も取り出して、そっちの方は京子に手渡した。

「それじゃ、これ、よろしくね」

京子は親指と人差し指でマルを作って、元気良く返事を返してくれた。

「うん、任しといて!」

そしてそのまま、靴を握り締めて中庭に向かって駆け出していく。
……あの靴は、中庭にある小さな畑に埋めてもらう事にしたのだ。

「さて、それじゃあウチらは」
「しっかり書きますか」

あたしと瑠夏はお互いに笑い合って、ポケットの中から油性ペンを取り出し、美衣子の靴箱に中傷の文字を書いた。

『ば〜か。学校来てんじゃねーよ。死んじまえ』
『お前みたいなヤツ、生きてるだけで害なんだよ!』
『マジきもい。死んでくんない?』

……他にも色々書いたけど、言い出したらキリが無い。から、思い出したくない。ただ、思いつく限りの中傷の言葉は、一つ残さず書いた。
そうこうしている内に、京子が満面の笑みを浮かべて戻ってきた。

「言われたとおりの場所に埋めてきたよ!」
「あ、京子ありがと! ところで、アレは取ってきた?」

あたしが尋ねると、京子は満足げに頷いて見せた。

「うん、勿論。これでいいでしょ?」

京子が差し出してきたのは菊の花。中庭の後ろの墓地にあったものを、拝借したのだ。

「うん、これこれ!」

あたしたちは菊の花を美衣子の下駄箱に詰めた。ついでに、自販機の下で死んでいたトカゲの死体も入れておく。
美衣子はこれを見てどんな顔をするだろうか。想像しただけで、笑いが止まらなくなる。

「あとは美衣子が来るのを待つだけ!」
「教室戻ろっかぁ」
「美衣子、どんな反応するかな?」
「楽しみですね……」

あたしたちは教室に戻り、(悲劇の)ヒロインが来るのを待つことにした。












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