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あたしは悪くないもん
作:猫満月



第9話 快感と怒りと偽り


次はどうやっていじめてやろう?
あたしは1人でにやにやと笑みを浮かべていた。
あいつをいじめる事が、こんなにも楽しい事だったなんて、知らなかった。
もっと苦しめて、もっと痛めつけて、もっと傷つけてやりたい。
もっと楽しみたい。もっと優越感に浸りたい。
あいつはこれから先ずっと、あたしのおもちゃだ!

1限目が終わり、10分間の短い休憩時間になった。
すぐさま自分の席を離れ、片手で肩にかかった自分の髪の毛を払いながら、美衣子に声をかけた。

「美衣子」

美衣子は、大慌てで振り返った。……あたしを見つめる目が小刻みに震えている。
ふふ、いいわ。いいわね、その表情カオ

「ねぇ……数学の課題、できないって言ってたでしょ? 手伝ってあげようか」

なるべく優しげに微笑んだおかげで、美衣子はすぐに肩の力を抜いて、あたしに笑いかけてきた。

「え、ほ、ほんと? あ……ありがとうっ」
「いいって。まかせといてっ」

あたしは笑顔でノートを受け取り、並んだ問題をひとつずつ解いていった。
問題を笑顔で解いていたら、何故かふつふつと怒りがこみ上げてきた。
あたし、もしかしてこいつに、利用しやすい女だと思われてたのかな?
雪山先輩の恋バナを真剣に聞くフリをしたり、あたしの恋を応援するフリをしたり……。
今までずっと、『るぅちゃんなら何も分からない』……そう思われてたのかな?
そんなことを考えていたら頭に血がのぼって、問題を解き間違えてしまった。
苛立ったあたしは消しゴムを探すため、乱暴に自分の筆箱の中を漁った。

(あれ? ……無い)

あ、思い出した。あたしの消しゴムはさっきこいつに“支給”したんだった。

「美衣子。消しゴム貸してよ」

苛立ちを隠そうともしない声でそう言って、片手を美衣子の方に突き出した。
美衣子は一瞬どきりと肩を震わせ、慌てて頷いた。

「あ、う、うん! ええと……ど、どれ、だったっけ?」
「どれでもいいわよ! 早く貸して!」
「う、うん。じゃあ、これ……で、いい?」

美衣子が差し出してきた薄汚い消しゴムを受け取って、ノートをこする。
その消しゴムはとても消し難く、あたしの苛立ちを更に煽った。

「もう! なんで消えないのよ!」

あたしがそう叫んで力いっぱいノートをこすった途端、大きな音がした。
力を入れすぎてしまったせいでページが真っ二つに破れたのだ。
美衣子が、大きく目を見開いて、あたしの顔とノートを交互に見ている。
あたしはその顔を見て、薄く笑った。ああ、やった。作戦通り、美衣子を失望させることができた。

「るぅちゃん……」

美衣子の、悲しみに満ちた瞳。あたしが美衣子に裏切られた時の絶望的な瞳とそっくりだった。
あたしは噴出しそうになるのを堪えながら、あえて普段どおりに振る舞った。

「ごめん! ちょっと、手に力が入っちゃった。ほんと、ごめんね」

あたしはそのまま、席を立った。声は出さず、表情だけで笑いながら、瑠夏と京子に合図を送る。
瑠夏と京子は笑顔で小さく頷いて、ほうきとちりとりを美衣子に投げつけた。

「美衣子、そこ掃除しときなよね。あんたと同じで、すっごい汚いからさ」












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