ファイル94:播磨紅子最初の事件『中編』
「おい、聞いたか?図書室で人が殺されたって!」
「3年F組の梶山だよ!」
「ああ、あの3ランク落ちの!」
蓮台寺陸也(15)『英秀大学中等部3年 特Sクラス』
「しかも遺体は本に埋まるようにして見つかったんやって!」
「まるでミステリーだな!それって『見立て』ってヤツ?」
陸也
「さあ・・・?梶山ってヤツけっこうな本の虫やけど・・・」
ダダッ!
「た・・・大変だ!」
「どうした?新島!」
「姫川が警察に!!」
「え!?」
室井和政『警視庁捜査1課 刑事』
「君のご両親は私もよく知ってるよ!あの正義感の塊みたいな2人の娘が・・・事もあろうに『殺人容疑者』とはね・・・!!」
姫川紅子(14)『英秀大学中等部3年 特Sクラス』
「室井刑事でしたっけ・・・私が今回の事件の重要参考人である事はよくわかっています。私は昨日、7時30分近くまで学校に残っていて・・・さらに夜7時頃には警備員が図書室を見回っていた・・・それ以降に校舎を出たのは、私ただ1人・・・」
室井
「そうだ。そして翌朝の9時30分頃に発見された遺体は死後10時間以上は経過していた。以上の事から考えて、犯行可能な人物は君1人しかいないんだよ。まぁ、今日はこれぐらいにしよう!君にはまた後日詳しく事情を聞かせてもらうよ。」
紅子
「室井さん?確かに私の父と死んだ母は、とても強い正義感を持っています。母の場合は『持っていた』の方が正しいかな・・・でも、私は2人とはちがう・・・仮に、梶山君に私が何らかの理由で殺意を持っていたとしても・・・こんな自分に真っ先に疑いがかかるような状況では、絶対彼を殺したりはしませんよ!では、失礼・・・」
室井
「あの小娘・・・!オマエが殺ったのはわかってるんだ!必ずとっちめてやるぞ!!」
陸也
「姫川君!」
「おい!大丈夫だったのかよ?」
紅子
「あんまり大丈夫じゃないみたいよ・・・」
「オマエなー!他人事みたいに言うなよ!」
「オレら、スッゲー心配してたんだぜ?」
陸也
「姫川君!ボク信じてるよ!君がこんな事するような人やないって!!」
紅子
「陸也・・・」
陸也
「だってそうやろ?君ならそんな疑われるようなやり方するワケないよ!姫川君なら、完全犯罪を狙うハズや!」
「同感!!」
「オマエなら、とっさに悪魔のようなアリバイトリックとか考えそうだもんな!とてつもなく卑怯なトリックを!!」
紅子
「・・・あなた達の深〜い友情を感じるわ・・・」
青沢四朗(15)『英秀大学中等部3年 特Sクラス 推理作家志望』
「まっ、冗談はこれぐらいにして・・・オマエ、マジでやべーぞ?警察はまだ、オマエが犯人だと決めつけてんだろ?このままじゃ、マジで殺人犯に・・・」
紅子
「もちろん、このままで済ますつもりはないわよ。この殺人事件はアタシに対する、言葉なき挑戦だわ!アタシをこんな目に遭わせた真犯人は、必ずこの手で捕まえてみせる!『英秀のジェーン・マープル』姫川紅子の名にかけて・・・ね!!」
新島保(15)『英秀大学中等部3年 特Sクラス 医者志望』
「そうこなくちゃ!よーし、とうとう来たぞ!マープルが本物の事件解決に乗り出す時が!助手を自任するこのオレとのコンビの事件簿の第1ページは、『本に埋もれた遺体の真実』ってトコか!!」
陸也
「ボクも協力するで!青沢はどうする?」
四朗
「陸也がするならね!んで、マープル先生!まずどこを調べる?」
紅子
「そうねぇ・・・じゃあとりあえず、事件の現場の図書室に行きますか・・・」
図書室
紅子
「まずはアタシが疑われる根拠になった『犯行時刻の真実』・・・それと『本に埋もれた遺体の真実』だわ!」
陸也
「そやね〜・・・やっぱりあの大量の本は何かの見立てやないのかな?」
紅子
「新島君!図書室の見取り図、できてる?」
保
「おう!バッチリだぜ!」
そう言うと、保は1枚の紙を見せた。
保
「死体が見つかった時の状況通りに書いたつもりだ。」
陸也
「7時の見回りの時、警備員が遺体を見逃してたとしたら?それなら犯行は7時以前でも可能になるから、姫川君以外にも犯行が可能な人が出てくるはずやで!」
四朗
「イヤ!それはありえないな!遺体があったのは、出入り口から真っ正面の本棚コーナーの奥だ・・・ぶちまけられていた本に埋まるようにして奥の本棚に寄りかかってた遺体を見逃すなんて、いくら暗かったとしても考えにくいよ。」
陸也
「そーかぁ・・・う〜っ!」
紅子
「・・・」
紅子が見た先には、物理全集をハンカチで拭き取っている生徒がいた。
紅子
「・・・ねぇ、あなた・・・その本は確か、そこの死体に寄りかかってた奥の本棚にあった本でしょ?何してるの?」
「はい・・・本の背に誰かがマジックでイタズラして、本のタイトルを黒く塗りつぶしてしまったので、シンナーで拭き取ってるんです・・・」
紅子
「本の背のタイトルをマジックで・・・?イタズラされてたのは、その黒い『物理全集』だけ?」
「はい、そうだと思います・・・」
紅子
「・・・そうか!」
保
「?姫川!何が『そうか』なんだ?」
紅子
「どうやらわかったわ・・・犯人の仕組んだ、アリバイトリックが!!」
四朗・陸也・保
「え!?」
紅子
「遺体の上に大量の本がぶちまけられていた理由は、『見立て』なんかじゃなかったのよ!犯人が、自らのアリバイを作り出すためだったんだわ!!」
保
「その背表紙を黒く塗りつぶした本を使って、犯人はアリバイトリックを・・・?」
紅子
「ええ!昨夜校舎を見回った2人の警備員は、夜7時頃の図書室には以上はなかったと証言した・・・だけど本当はこの時・・・すでに遺体はあの場所に転がっていた!犯人はこの『物理全集』を巧妙に使って、一時的に遺体を見えなくしていたのよ!!」
四朗
「そ、その物理全集で・・・遺体を一時的に見えなくしただって!?」
保
「い、いったいそりゃどういう事だよ?姫川・・・」
紅子
「このトリックを解き明かすヒントは3つ・・・1つ目は、現場にあった物理全集がすべて背表紙を黒くつぶされていた事・・・2つ目は、遺体が大量の本に埋もれていた事・・・3つ目は、遺体が三方を本棚に囲まれた奥にあった事よ。どう?新島君。『ヘイスティングス』としてどう推理する?」
保
「う、う〜ん・・・そんな事急に言われても・・・青沢!オマエはどうだ?」
四朗
「少しは考えてからオレにフレよ、新島・・・」
陸也
「姫川君、焦らさないで教えて!犯人はどうやって、遺体を隠したの?」
紅子
「フム・・・つまり、最大のヒントは『この図書室の本棚はすべて黒い』って事よ。あなた・・・ちょっと、マジック落としてない方の本貸してくれる?」
「はい・・・」
紅子
「この本は1冊バラバラでは何の意味も持たない。だけどこうして他の本と組み合わせて使う事で、初めてそう正体がわかるんだ。まず、黒い本を2冊並べて横にし、その上に両脇を黒い本ではさんだ普通の本を縦に載せる・・・そしてその上にさらに黒い本を横に並べる・・・これを繰り返しながら組み上げていくと、何に見える?」
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陸也
「本棚!!インスタントの本棚や!」
四朗
「そうか!わかったぜ、姫川!つまり、犯人は遺体を三方に囲まれた本棚の奥に置き、その前に偽の本棚を置いてカモフラージュしたんだ!!」
紅子
「その通り!図書室を警備員が見回る頃にはもう夜の7時・・・室内はかなり暗くなっていたハズだわ。ライトでサッと見渡したくらいでは、遠目には普段通りの本棚があるように見えた事でしょう。だけど、本棚のフリをした『本の壁』の裏には、すでに事切れた梶山君の遺体が横たわっていたのよ!彼を殺した犯人は、急いでニセ本棚を組み上げると、学生証で帰宅記録を残してアリバイを手に入れた。そして自動ロックが解かれた朝一番に図書室に来て、遺体を隠している『本の壁』を崩したのよ。遺体は発見状況から死後動かされた形跡はなく、死後10時間以上経っている事も検死ですぐにわかる・・・そして警備員2人のの証言からも犯行は『夜7時から7時30分の間』となり、7時以前に帰った真犯人はアリバイを手にする事ができたのよ!!」
保
「なんてこった・・・」
四朗
「フン!なかなか頭のキレるヤツじゃねぇか!」
陸也
「とっさにそんなトリックを思いつくなんて、犯人は犯罪に関しては特Sクラスものやな!」
紅子
「あなたは昨日も夕方のカウンターだったの?」
「はい。ボクともう1人の子で、昨日は5時30分ちょっと前に片付けを終えて、2人一緒に帰りました・・・」
紅子
「なるほど、2人一緒ならあなたにもアリバイはあるわね!」
四朗
「そうか!5時30分頃まで図書委員がいたのなら・・・」
保
「犯行時刻は5時30分以降って事になるな!」
陸也
「それじゃ、犯人は・・・」
紅子
「ええ!午後5時30分から7時の間に校舎内にいて、アリバイのない人物・・・」
保
「おーい、姫川!待ってくれよ。これから容疑者捜しだろ?」
紅子
「あなたも手伝ってくれるの?ヘイスティングス君。」
保
「もちろんだよ、マープル!君にとってもオレにとってもこれが、記念すべき『最初の事件』になるんだからね!で、さっそくその容疑者の事なんだけど、1つ気になる事があってさー・・・」
紅子
「何?新島君。」
保
「実は昨日さ、6時30分頃に帰ろうとしたら、青沢と陸也に正面玄関で会ったんだ・・・」
紅子
「何ですって?」
保
「で、オレが声をかけたら2人とも・・・」
陸也『生徒会室に忘れ物しちゃってさ!』
四朗『ちょっと予習をね!次こそ姫川に勝たなきゃ!万年2位返上だよ!』
保
「・・・ってさ!どう思う?姫川・・・」
紅子
「・・・」
コンピューター室
保
「おい!何やってんだ、姫川?」
紅子
「事務室のデーターをハッキングしてるのよ。」
保
「ハッキング・・・!?」
紅子
「ええ!昨日の午後5時30分以降に帰った人は、IDカードキーで学校のデーターに記録されている。事務所でいちいち説明して頼むのも、面倒だしね・・・」
保
「はーっ!オマエってヤツは・・・そんな事までできるのかよ・・・」
カタカタカタ・・・
カシャ!
ブゥゥゥ・・・ン・・・
紅子
「よし、出たわ!」
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│□□□○月×日□IDカード□□下校者リスト□□□□□□□□│
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│□□時刻□□│□生徒名□□│□□□クラス・IDナンバー□□│
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│PM06:30□│□新島□保□│3年□特S□No.09801122□□│
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│PM06:31□│□青沢四朗□│3年□特S□No.09801102□□│
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│PM06:31□│蓮台寺□陸也│3年□特S□No.09801135□□│
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│PM07:20□│□姫川紅子□│3年□特S□No.09801127□□│
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紅子
「午後5時30分以降7時以前に学校を出たのは、これだけ・・・!!どうやら、君が気になっていた通りのようね、ヘイスティングス・・・(これは・・・予想外の展開になってきたわね・・・!!)」 |